第80話 祝賀会……そして告白?

 ───


「それじゃあ、俺達の勝利に……乾杯!!」


「「「かんぱーい!!」」」


 そして大会から少し時は流れて、ここクランハウス。俺達は優勝のお祝いにちょっとしたパーティーを開いていた。まぁパーティーと言っても、ポテチとかオレンジジュースをテーブルの上に並べているだけなんですけどね。


 なんだか小学生の頃にやった、こども会を思い出す光景だなぁ……でも成長した今の時期にやると、また違った面白さが出てくるものだね。


 そんなことを思いつつ、俺は果汁百パーのオレンジジュースを口に運ぶ……うん、うめぇ。うめぇけど、オレンジジュースってこんな時ぐらいしか飲まないよね。なんでだろう、他の選択肢が強すぎるからだろうか……?


「いやーっ! ホントにゆいにゃん大活躍だったね!! ゆいにゃんがいなかったら、ウチら絶対に勝ってなかったよ!!」


「ああ、全くだ。もしも藤野が来ていなかったらと思っただけでゾッとする」


「今回のMVPは結奈で間違いないねー?」


 そしてパーティーが始まるなり、みんなは藤野ちゃんを誉め称えていた。きっとみんなも映像で、藤野ちゃんの勇姿を見届けてくれたのだろうな。


「えっ、いやっ、そんな! 私はただみんなの力を借りただけだよ! 私は指示に従っただけだもん!」


 でも反対に藤野ちゃんは首と手をブンブンと横に振って、謙遜をしていた。こんなに大きな大会で優勝できたんだから、もっと自信持ってもいいのにな……とか思ってたら、真白ちゃんが横から入ってきて。


「全員の指示を聞いて、的確に行動するなんて簡単なことじゃないですよ! これはみなさんを最後まで信じていた、藤野さんだから出来たことなんですよ! ……そうですよね、王子様?」


 物凄く良いパスを出してくれたんだ。


「うん、真白ちゃんの言う通りだよ! 藤野ちゃんは、あの生徒会を打ち負かしたんだ! だからもっともっと自信持っていいんだよ!!」


 そしたら藤野ちゃんは自信が付いたのか、自分の手のひらをギュッと握って。


「そっか……私、凄いんだね!」


「そうそう! もっと調子に乗って良いんだよ!」


「分かった! 私、神谷君よりもゲーム上手いんだねっ!!」


「おっ、そっ、それはどうかなぁ……!?」


 そんな会話を聞いた蓮は薄笑いしつつ、腕を組んで。


「認めろ神谷。お前は藤野より先に死んでるんだからな」


「そんなぁー!」


 そして一同は笑いに包まれた……あー。やっぱりここは居心地いいっすねぇ。


「あはは、いやー。でも修一も噴水を使うなんて発想をよく思いついたよね。確かに私もライブの演出で使うこともあるとは言ってたけどさー」


 朱里ちゃんは笑いながら言った。ひょっとしたらその笑顔の中には、感心の意味も含まれているのかもしれないな。


「うん、我ながらナイスなアイディアだったよ。ルールでは『水によってポイが破れたら失格』って書いてたからさ。だから別に水鉄砲を使わなくても良かったんだよ」


「ああ、そうだったのですか! やっぱり……やっぱり王子様は凄いです!」


「あはは、もっと褒めてくれてもいいんだよ?」


「藤野の謙虚さをこいつに分けてやりたいな」


 そしてまた一同は笑いに包まれた……と思ったのだが。それに該当しない人物を一人、俺は見つけてしまったのだ。


「……ん、どうかしたの透子ちゃん? さっきから全然喋ってないし、お菓子も二袋分しか食べてないじゃん」


「結構食ってんじゃねぇか」


 蓮のツッコミはさておき……透子ちゃんは何だか難しい顔をしていた。更に俺がその理由を聞いてみると、透子ちゃんは口を開いてくれて。


「あ、いや、ちょっと気になってることがあってな……」


「なになに? 俺のこと? 俺が気になったの? 俺のことが好きになっちゃった───」


 途中でみぞおちをぶん殴られ、俺はうずくまる。そして何事もなかったかのように、透子ちゃんは話を続けるのだった。


「……いや。実はボクもみんなと同じように大会の映像を見つつ、シュウイチ達の音声を聞いていたんだよ。でもボクは指示とかは出せないから、ずっと黙ってたんだけどさ……試合中、結奈が変なことを言ってた気がするんだ」


「えっ、私が?」


「うん。あんまり覚えてないんだけどさ。確か……『責任取って』とか『好きって言って』とか───」


 ……一瞬だけ世界が止まる。だけど……藤野ちゃんの絶叫によって、また世界は緩やかに動き始めるのだった。


「…………あ、あっ、あああああーーーっ!!!! ダメぇっ!!!! 透子ちゃん、それは言っちゃダメだってばぁ!!!!」


 そして俺はひょっこり起き上がる。


「あははー。聞かれちゃってたみたいだね? ……でもまぁいっか!」


「良くないっ!!!! 全然良くないよ、神谷君!!!」


 そのタイミングで、朱里ちゃんがニヤニヤしながら俺達に近づいて来て。


「へぇー。私、聞きたいなー? その時、二人が何してたのかをさー?」


「や、あ、あかりちゃ、そ、それは……それだけは……!!」


「もー、どうせ朱里ちゃん気付いているんでしょ? なのにわざわざ俺達に言わせようとするなんて、性格わるわるだなぁ…………まぁチューしたんですけど」


「えっ、ちょっとぉ!!!! 何言ってんの神谷君!!!????」


「いきなりしちゃったのはごめんね。でも藤野ちゃんが好きって返してくれたのは、とーっても嬉しかったよ!」


「…………あ、あわっ、あわわわわわっ……!!!!」


「あ、照れすぎてオーバーヒートしちゃった」


 ……そして迎えた沈黙の時間。藤野ちゃんは耳の先まで赤くして、身体を震わせている。ああ、流石にちょっとやりすぎちゃったかなぁ……? これは後で謝らなきゃいけないな。


「……あ、えっと藤野さん……私達、席を外した方が良いでしょうか……?」


 そして真白ちゃんが気を利かせて、俺達を二人にしてくれようとした。でも藤野ちゃんの答えは、誰も予想していなかったもので。


「…………いいよ。何だか吹っ切れちゃった。だからみんなにも聞いてほしいんだ」


「なっ、何をでしょう……?」


 そこで藤野ちゃんは、今まで避け続けていた視線を一気にこっちに向けてきて。


「私、神谷君が好き!!! なんだか悔しいけれど、好きなのっ!!!! 神谷君にキスされた時も、とっても嬉しいって思っちゃったの!!!!」


「え、ウソォ!? ホントに!?」


「うんホント!! だから……だから!! 神谷君!! 私と……付き合ってくれませんか!!!!」

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