第52話 『主人公めちゃくちゃ振り回す系ヒロイン』
「…………えっ? なっ、ええっ……?」
急に視界に入ってきた、凄まじい程の情報量に圧倒され、俺は困惑してしまう……え、何!? 何なのこの子は!? どっかの異世界ラノベから召喚でもされたの!? 今から俺達のファンタジー冒険が始まっちゃうの!?
……そしたらそんな俺の反応を見たメイド少女は、ケモ耳をゆらゆら揺らしながら、お腹を抱えて笑うのだった。
「にゃははっ! どうして困惑してるのさー? キミがウチを呼んだんでしょ?」
「あ、うん、そうだけどさ……」
「というかここ、チョー豪邸だね! なんだかラブホみたい!」
「……」
……この一言で、この子の性格が大体掴めたよ。
おそらくこの子は、俺が最も苦手とする……ギャルゲーにいたのなら、渋々最後に攻略する……自由気ままなで、無邪気さとも違う、謎の明るさを持った……
「ねねっ、ご主人たまー? 早くウチをお家に入れてよー!」
『主人公めちゃくちゃ振り回す系ヒロイン』だこれ!!
「……うん、分かった。どうぞ上がってくれ」
「にゃっははー! おじゃましまーす!」
「……」
俺はクランハウスに上げる最初の人物がこの子になったことを少しだけ悲しみつつ、このメルヘンチックに彩られた、重たい扉を開くのだった。
──
「うわっ、汚っ! 埃まみれじゃん!」
「そこはまだ掃除してないから、こっちに来て」
「にゃ、りょーかい。これじゃ探検する気もなくなっちゃうからねー」
どうやらメイドちゃんはいろんな所に行きたそうだったけど、この床の状況を見てか、素直に俺の後ろをついて来るのだった。
そして俺はほとんど掃除の終わった共同スペースに、メイドちゃんを連れて来たのだが……
「にゃっはー! すっごいデカいソファーだ!」
俺が有無を言うまでもなく、メイドちゃんは置いてあるブラウンのソファーに飛び乗るのだった……
……あのー。この位置からだとパンツが見えそうなんですけど……というか純白のヤツが見えてるんですけど。そんなにパンツの安売りして大丈夫なんすか君は。お兄さん、心配になっちゃうよ。
「……あれ? 思ったよりもフカフカじゃないよこれ! もしかして……安物!?」
「あの……メイドちゃん? まずは自己紹介をお願いしてもいいかな?」
「あっ、オッケーオッケー!」
そしてメイドちゃんはソファーに横たわった状態から座って、笑顔で猫っぽいポーズを取りながら。
「ウチはメイドハウスから来た、
そうやって自己紹介した。悔しいけど、普通に可愛いな。
「うん、よろしく。俺は神谷修一。それで色々と君に聞きたいことがあるんだけど」
「え、なになにー? 冒頭インタビュー?」
「……」
絶対にこれ「何の?」って聞いちゃダメなヤツだ。
「今、俺が一番気になってるのはその、君の頭に付いてるやつなんだけど」
「これ? ホワイトブリムだよ?」
「の、上のやつ」
「え? ケモ耳だけど?」
「……それ付け耳だよね?」
「そうだけど?」
「……」
いや何だその『見りゃ分かるでしょ』とでも言いたげな反応は。そんなことはちゃんと分かってるんだよ。
「えっと……どうしてそれを付けてるの?」
そう聞くとメイドちゃん……花音ちゃんは大きなため息を吐いて。
「はぁーっ。もっ全然、乙女心を分かってないなぁ神ちゃんはー」
「かっ、神ちゃん?」
何で急にご主人呼びから、あだ名に変わったんだよ。距離感がバグったか?
「神ちゃんはさ、女の子に『どうしてリボン付けてるの?』って普通聞く? ゼッタイ聞かないよね?」
「いやまぁ、それは……聞かないけどさ」
「うん、それと同じだよ。ウチはケモ耳が可愛いって思っているから、こうやって付けてるだけ。それ以上の理由はないのー。分かった、神ちゃん?」
「あっ、はい。すんません、分かりました……」
頭を下げながら俺は思う……どうして俺が、遅刻したメイドちゃんに怒られているんだろう……と。うん。そうだよ! それ聞かなきゃダメだろ!!
「……それで。どうして君は、こんなに遅れたのさ?」
「あーそれは、迷っちゃってね」
「えっ、本当に? でもここまでほとんど一本道だし……」
「いや、行くかどうかで」
「……」
何このすっごい聞き覚えのあるフレーズは。もしかしてこれ……
「……サンドのコントやってる?」
「いやちょっと何言ってるか分かんない……」
「絶対分かってんだろ」
確信持って言ってんだろこれ。首傾げるタイミングも完璧だったし……心なしか花音ちゃんの顔がトミーに見えてきたよ。髪の色は完全に伊達ちゃんなのに……って大丈夫かこれ? ちゃんと伝わってるのか?
「にゃははははっ! 案外神ちゃんって面白いんだね!」
そして花音ちゃんは、ネタが通じたのが嬉しかったのか、手を叩いて大きく笑った……アカン。『おもしれー女』に『おもしれー男』認定されてしまったんですけど。
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