第4話 夢見がちな現実主義者
イケメンに抱きつかれ愛の告白なんて、夢ですら体験したこと無いことが今現実に起こっている。
(嘘でしょ!?イヴ様が愛の告白!?…否違う、この人はイオンで、元猫で、今は人間で…)
固まったままの私にしびれを切らしてか、イオンが屈んで私の顔を覗き込む。
「…梨子ちゃん?」
「わーっ!!!」
ドンッ
混乱しているところに綺麗な顔が目の前に現れたものだから、反射的に突き飛ばしてしまった。
「あ…ごめんっ、イオン大丈夫!?」
「……。」
彼は無言のまま立ち上がり、またカーテンの裏に姿を隠してしまった。
(だって、イオンが人間になっただけでも理解が追いつかないのに突然あんな事言われても…。)
暫くの沈黙の後、私はカーテンの向こうの彼に声をかけた。
「イオン、ごめんね。私、まだあなたが猫だった頃の姿を捨てられなくて…。ていうか、イオンが人間になったって事がまだ受け入れられてないっていうか、信じられてないっていうか…夢でも見てるんじゃないかって思ってるの…。」
「……。」
返事が返ってこないが、構わず続けることにした。
「イオンのことは大好きだよ?でもそれは猫としてっていうか…。まさかイオンが私を恋愛対象として好いてくれてるなんて考えたこともなかったから、びっくりしてるっていうか…。」
「……。」
「その、私のことを人間の男の人として支えてくれようとする気持ちは素直に嬉しい。ありがとう…。でも、いきなり恋人にって言うのは難しい。それは相手がイオンじゃなくてもね?例えイヴ様本人が画面から出てきたとしても同じ対応してたと思う。」
ここまで話して暫く返事を待ってみることにした。私の気持ちだけ話しても、話し合いにはならないし、イオンがここまで聞いてこれからどうしたいか知りたかった。
重い沈黙の後、カーテンの向こうから声がした。
「…本当に相手がイブ様でも同じ対応してた?」
「もちろん。だって信じられないじゃない?2次元が3次元にだなんて科学的にありえないし…!てかイオンの事も生物学上信じられないけど…っ!」
「僕は女神に願いを叶えてもらったって言ったじゃん。」
「それが信じられないんだって…。」
「梨子ちゃんって、夢見がちな乙女なのに実際それが起こると頑なに現実主義者だよね。」
カーテンから姿を出し、そのままこちらへ真っ直ぐ近づいてくる。そしてーーー
むにっ
「!?」
イオンは私の両頬をつまんだ。
「い、
「ね?現実でしょ?」
にっこり笑ったイオンはつまんだ頬を今度は優しく包み込み、そのまま私に口付けた。
「!?!?」
ゆっくり唇を離した彼は、意地悪くニヤリと笑った。
「恋愛対象として見てないなら、見させるまで。僕って諦め悪いんだ。覚悟してね?」
彼はもはや可愛らしいだけの飼い猫ではなく、1人の男性として私の前に立っていた。
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