第3話 かなり最高なんじゃ…?
「何でも、ねぇ…。」
念の為玉ねぎなどは避けておこう。そう考えていると、気が済んだのかイオンがカーテンの裏から出てきた。
「あ、僕アレ食べたい、四角い黄色!」
四角い黄色とは、きっと卵焼きのことだろう。私がよくお弁当に入れるので気になっていたのかな。
「いいよ。じゃあ卵焼き作ろう!あとササミの鶏ハムもつけよっか。」
「ササミ…!」
猫のときから大好きだったものの単語が出てイオンは目を輝かせた。
「鶏ハム、僕も食べられるんだ…嬉しい…!」
心の底からの喜びが、見ているだけで伝わってくる。さっきまで知らない人だと怯えていたのが嘘のように、彼のことが可愛く見えてくる。
(…ていうか、中身イオンで外見がイヴ様ってかなり最高なんじゃ…?)
皿に料理を盛り付けながら凄いことに気づいてしまった。
(イヴ様が、イオンのように甘えてきたら…私ぶっ倒れるかも。)
そんな事を考えているうちに、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「!?」
「ふふ、一度こうしてみたかったんだぁ。」
彼はそう言って私を抱きしめたまま自分の頭をグリグリと擦り付けた。
「ちょ、ちょっと待ったぁ!!」
慌ててイオンを突き放す。
「あ、あのね、猫のときみたいな甘え方はちょっと…。心臓が持たないというか、そういうのは恋人同士がすることで…!」
顔が熱い。自分が想像していた100倍ヤバい。こんなの続いたら冗談抜きでキュン死してしまう。
「じゃあ恋人になったらしていい?」
怯むことなく屈託のない笑顔をこちらに向ける。そんなのズルい。
「…人間はそんな簡単に恋人になったりしないのっ。」
赤く染まったままの顔を両手で隠しながら絞り出すように答えるが、イオンは気にせず続ける。
「僕は梨子ちゃんのこと大好きだよ?梨子ちゃんだって、毎日僕のこと大好きって言ってくれてたじゃない。」
「そ、それは…。」
「好き同士なら、問題ないよね?」
私が突き放した距離をぐっと詰めて綺麗な顔を近づけてくる。
「…僕じゃ、駄目?」
少しでも動くと唇が触れてしまいそうな距離で彼は切なそうに見つめる。私はシンクに背後を塞がれ、これ以上距離を離すことが出来ない。
(ど、どうしよう…イオンがこんなに肉食系男子だとは思わなかった…。)
まだ去勢前だっからか、それとも今が春だからか、彼の色香は凄まじかった。
「…ずっとこうしたかった。」
「え?」
イオンは目線を少し伏せてからまた私の目を見つめる。
「僕はずっと梨子ちゃんに恋してた。ずっと人間になりたかった。人間の男として、梨子ちゃんを支えたかった。」
オッドアイの瞳が揺れたかと思うと、正面から抱きしめられた。
「大好きだよ、梨子ちゃん。」
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