第31話 リラお嬢様のご帰還
リミナが到着し、対応したのはランスロット王子だった。
ランスロットは極秘案件である事がわかるとリミナを応接の間に案内する。
「こ、こ、ここで?」
リミナは豪華な作りの応接の間に通された事を驚き、恐縮する。
国王が使う応接の間、当然、各国の要人や国王などを招く部屋、副団長と言っても一介の騎士、恐縮するのは無理もない事である。
「極秘の案件報告なんかは此処で聞く事になってるだ、楽にして大丈夫だよ」
「し、し、しかし!」
「ほら、滅多に使わない部屋なんて経費の無駄遣いだろ?
で? 父上、いや、陛下は議会中なんだけど、第三近衛の報告はここで聞いて、内容によっては知らせろって言われてるんだけど、どう言った内容なのかな?」
「は、はい! まずはこちらを」
リミナはシャンフレーから預かった書状をランスロットに手渡す。
ランスロットは黙読し始め、書状の内容に驚いた表情を浮かべると口を開いた。
「内容は確認させてもらった。
急ぎ陛下にこの事を伝えて来る、それまで此処にいてくれ」
「は、はい!」
ランスロットは飛び出す様に応接の間を後にすると会議室へと小走りで向かった。
程なく、ランスロットはローレンス国王を連れ、応接の間に姿を表す。
ミリナはソファには腰を掛けずに直立不動で待っていた。
「話は聞いた! 子供たちを保護したそうだな、ご苦労であった。
まずは腰を掛けてくれ、書状の内容でいくつか聞きたい事がある」
ローレンス国王は部屋に入るなり、焦りにも近い表情でミリナに言いよる。
そんなローレンスを前にミリナもたじろぐ。
「あっ、こ、このまま答えさせて頂きます!」
「いいから座りなさい、ランス、お前も座れ」
ランスはミリナに座る様、エスコートすると自分もソファに腰をかける。
ミリナは質問に答えつつも、自身が見聞きした事をありのまま報告した。
「では、子供たちを助けたのは……、その、リラと言う少女で間違いないのだな?」
「はい、子供たちは皆口を揃えてそう言っておりました。
私の心情ではありますが、嘘を言っている様には……。
しかし、考えられない事だとも思っております」
「そうか、報告ご苦労であった、戻って休んでくれ」
「はっ!」
話が終わり、ミリナが退出しようとした瞬間、ランスロットがそれを止めローレンスに提案をする。
「父上、ミリナ殿には悪いが急ぎ、鉄馬車をそのまま王城に案内してもらってはどうでしょう。
子供たちの話を直接聞けますし、リラと言う少女には聞きたい事が山ほどありますし」
ランスロットはそう言うと、不敵な笑みをローレンスに向ける。
ローレンスもランスロットの意図を理解したのか不敵な笑みを浮かべた。
「そうであるな、ミリナ、頼めるか?」
「はっ! 直ちにその様に致します!」
ミリナを見送ったグラハムとランスロットは即、トゥカーナ家へと使者を送った。
◆◇◆◇◆
私は鉄馬車にゆられ、一晩中疾走していた疲れから、みんなが引くほどの爆睡を見せた。
鉄馬車は休む事なく走り続け翌日の昼前に王都へと入り、そのまま王城へ。
口元にはよだれ跡、髪の毛は見事にはっちゃけ、まだ寝足りないのか、まぶたが重い……、私は今、ピンチである。
今まで見せた事のない形相の母様にルーク、ロザリーまでもが冷ややかな目線を私に向ける。
そして、目の前にはローレンス国王にランス……、宰相のおじさんに、何故かティファの姿もあった。
「まずは、どう言う
ローレンス国王の言葉は子供に対するそれではなく、圧を感じる。
みんなの視線が私に突き刺り、眠気はもうそこにはいなかった。
——圧! 圧が凄いよみんな! どう説明するべきか、当然あのババァの事は言えない、アレを話すとスーツの話をしなきゃならんし、スーツの話をすれば、悪魔の話もせにゃならん……、うん、この事は黙っとこ。
「言っておくが子供たちからは個別に話を聞いておる、嘘は通用せんぞ」
——子供に向ける圧じゃないだろ!
私はあの屋敷の事以外を素直に喋る事にした。
魔物たちの迎撃んトトたちに指示した事。
トトが誘拐犯の痕跡を発見し、追跡した事。
突如現れた布の男が誘拐犯を斬殺した事。
結界で鉄馬車を守り、子供たちを救出した事。
一通り話すとみんなは考え込む。
「……、リラ、今回の
トトちゃんたちの活躍がなければ、もっと多くの死傷者が出たのは間違いありません。
子供たちの救出に関してもそうです。
あなたが言った事に思う所が無いわけではありませんが、私は信じます。
しかし、許せない事が1つ、どうして誰にも連絡せずに1人で行動したのですか!
魔物たちの戦いの時の様にトトちゃんたちに任せなかったのですか!」
母様の表情は険しく、私は産まれて初めて母様に声を荒げられる。
私の事を心配してくれているのが、痛いほどわかった。
どうして1人で行動したのか……、それの答えは私自身でも答えは難しい。
メアリーたちを助けたかった事は間違いないが、それだけではない。
誘拐犯の一報、アランが大怪我をおった事を知った時、驚きと同時に怒りを感じた。
トトたちが痕跡を発見した時、気がついたら魔物が開けた外壁の穴から追跡をしていた。
それが、前世の性格の問題なのか、スーツを着ていた事にやる感情の
一つ、間違いない事は不謹慎だけど……。
——楽しくなっちゃったって事だけ!
やばい! どうしよう。
楽しくなっちゃってって言う? イヤイヤ! ダメに決まってんだろ!
……、どうしたものか……、あっ!
「トトたちとの意思疎通の距離には限界があるみたいで……」
後々知った事だけど、トトたちとの念話や能力は距離が離れすぎると出来なくなった……。
——まあ、嘘ではないからね。
私はその方向で言い訳をしまくって、何とか緊急事態であった事を納得させた。
質問の嵐を掻い潜り、その場を凌いだ……、かに思われたのだが、次のローレンス国王の言葉が一変させる。
「話は変わるが1つ、リラに頼みがある」
そう始まった話……、内容は言葉の通り、全く今回とは関係の無い話だった。
「来年度からリラは初等部へ入学する事になると思うのだが、ティファと共にバトリン学園に行ってもらえぬか?」
ローレンス国王の話に宰相さんやランス、ルークは驚きを隠せず、母様は事前に聞いていたのか何とも言えぬ表情を見せる。
何故この場にティファがと思っていたが、ティファの満遍の笑みを見て私は理解した。
初等部入学まであと3ヶ月、私は1カ月以内に返答をする事になり、突如として選択を迫られる事になった。
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