第28話 指輪の力と約束

 私は戦慄の事実を聞かされた。

 指輪の力は私の前世の力……、と言う事は……。

 考えるだけでも頭がパンクしそうだ。


 これが事実だったとしたら、少しカスタマイズ……、これが唯一救いの言葉。

 どこをどうカスタマイズしたのかは聞くまい、これ以上は許容オーバーだ……、と思っていたが。


 頭の中で話すは別の角度から爆弾を投下して来る事になる……。


 《やあ、それにしても驚いたよ、たいして記憶が戻ってないのに指輪には目覚めた力がいっぱい有るんだもん!

 そりゃ、混乱するよね、しかも、思ってたよりもこっちの世界ヤバそうだし! 不思議だったんだよね、前にリラちゃんに会った時、女神がどうのこうの言ってたのが》


 『は、はぁ、そうなんですか』


 《そりゃ、そうだよ! 女神なんて居るはずが無いし、それに負の力が思ってたよりも世界各地に身を潜めてるんだもん》


 『へ?』


 《この世界の神はみんな逃げちゃったからね、あっ! 1匹は居たなぁ、負の王とかって呼ばれて、ちょーしこえてる奴が!

 アイツらのおかげで世界はガタガタだよ、マジで!》


 『ちょっ、ちょっと待って!』


 《本当、何なんだよ! アイツら! 自分たちが負けそうになったからって普通ばっくれる?

 仮にも神々だよ?》


 『え? この人、何言ってんの?』


 《マジ、次会ったらワンパンものだよ! アイツらのせいで私なんか消えかかったんだからね!

 はぁ、でもさ今の私にそんな力もないし、リラちゃんよろしくね》


 『はあ?! 何? 何がよろしくなの!?』


 《ほら、私って凄くダラダラするのが好きじゃない? だから、よろしく》


 『イヤイヤイヤ! 答えになってねぇーよ! そもそも状況すら理解してねぇーよ!!』


 《やだなぁ、約束したじゃない。

 さっきだってリラちゃんが約束を覚えて無さそうだったからさぁ、本当はもうちょっと後に会おうと思ってたのに仕方なく急遽、ケットシーと繋がったんだよ?》


 [あ、あのぉ、ちょっと意味が……』


 《特別だよ? だって、あのまま放っておいたらリラちゃん、アイツらぶっ飛ばしてたでしょ!

 転生する時、約束したじゃない『負の力を理の輪廻に戻して』って》


 『い、いや、それ初耳……』


 《負の力はなまのまま吸収しないと理の輪廻に戻らないでしょ? なのにリラちゃん、そのままろうとしてたでしょ! だからわざわざ私が来たんだから〜》


 『ん? あれは私がピンチだったからでは……?』


 《ん? リラちゃんがピンチ? あのスーツを着た状態で? えええぇぇ、マジでぇぇ!! ヤ、ヤ、ヤバいじゃん!!》


 『あっ、いや、そう言う訳ではなくて……』


 《も、もう封印が解けたって事?! ちっ、神々の野郎! 突貫で封印なんてしやがって! 早く戻って力を溜めないと!

 リラちゃん! 約束は忘れないで!『負の力を持つ奴は踊り食い!』だからね! 息の根を止める前に踊り食いだよ!》


 『こ、こえーよ!! そんな事より本当に意味がわからないの! 記憶が全然無いの!』


 《え?! 手紙渡したでしょ! 呼んでないの?!》


 ……。


 ——て、手紙だとぉ! え? アレには……。


 『はあぁ?! そんなもん書いてねぇーよ! そもそも何の情報もなかったじゃねぇーか!!』


 《はあ?! 何言ってんの?! ウソ言ったてバレるんだからね! 送った物は私の記憶に刻まれちゃうんだから!!


 ……。


 ……。


 あれ? あれあれ? ……、送っとく!》


 『あれあれ? じゃ、ねぇー! そもそも、質問の回答……』


 《よし! 簡単に説明しちゃおう》


 『お、おい!』


 《負の力を吸収するには注意する事が2つあるよ! 1つは『フュージョン』ケットシーと融合する事によって使える様になる『神気』、もう1つが》


 『え? 神気?』


 《これまた『フュージョン』した事によって目覚める能力、『邪気封印』……》


 ——これ、注意じゃないよね? それに2つじゃなくてフュージョン1つの様な……。


 《最後に『フュージョン』によって現れる額のツノ》


 ——3つ目来やがっし、そうだよ! このツノ何?! 意味あんの?!


 『これは……』


 リラは額をさすり、突起物を確認する。


 《そんなの見ればわかるでしょ?……》


 ——飾りか? 飾りなのか?


 《世界樹の根っこだよ》


 『わかるかぁー!! そもそも何でそんなもんが生えるんだよ!!』


 《世界樹、それは生命の源、この世の全ての力が帰る場所》


 ——はいっ! いきなり説明入りました!


 《それは魂も例外ではない……、世界の意志が長い年月かけて育て、生命の輪廻をそう作った。


 しかし! 世界の神々は世界に及ぼす厄災などお構いなしに


 「創生ってめっちゃ凄くない? 新しい生命作っちゃうって、めっちゃ神っぽくね?」


 「めっちゃ神っぽい! めっちゃ楽しそうじゃん!」


 ——はいっ! 寸劇入りました!


 「ワシらの力は削られちゃうけど、増やしちゃう? 神、増やしちゃう?」


 「「いいねぇ〜」」


 「「「私ら、ちょ〜ゴット」」」


 ってな具合で創生の神を、今の負の王を降臨させちまいやがったのさ!!》


 ——あんた何者だよ、何処から目線なんだよ……。


 《だがしかし!! 問題が発生した、創生の神によって生み出された生命は理の輪廻の外に誕生した、しかも、理の輪廻の中の力によって。

 そして、輪廻の外に誕生した者たちを負の眷属ってみんな呼んでる。

 でもさ、覚えておいて! 負の眷属って一括ひとくくりにするのは危険……。

 あっ! ヤッベ時間ねぇーや》


 『ちょっ、まて! ゴラァァ! 途中やろがい!! 今、なんか大事な事言おうとしてるよね?!』


 《大丈夫! あらかたそんな感じだから》


 『あらかたな訳あるか! オメーの大丈夫は、そもそも大丈夫じゃねぇーんだよ!』


 《あっ、そうだ! 指輪の中に『十五茶』ってお茶入れとくね》


 『と、唐突に何?! な、なんて名前の茶を……』


 《本当は6歳になったらマナ属性調べる為に教会に来た時に渡そうと思ってたんだけど、ほら、わかるでしょ?

 リラちゃんせいで今回、力使っちゃたから次、いつになるかわかんないんだよ》


 『え?! 私?!』


 《きっと役に立つはずだよ! 才なんかよりも、もっと良い物なんだからぁ〜、しかもナント!12包入り! 水に溶かして飲んでね!

 それと注意! これはリラちゃん以外には劇薬だからね! 命の危機が迫っている時なら奇跡的に効果が発揮するかも知れないけど、注意して使ってね!》


 『デジャヴか……?』

 

 《じゃっ、待ったねぇ〜》


 『……』


 ——頭の中がスッキリする……、やっと行ったか……、はあ、疲れた……十五茶ってなんだよ……。


 私はため息を吐き、周りを見渡す……。

 所々壊れた塀や屋敷、吹き飛ばされ塀近くに点々と倒れている傭兵たちの安否は不明。

 足元の屋敷の主人と執事らしき人物はうわ言の様に「悪魔様」と連呼している……。


 ——帰るか。


 私は帰路につこうとしたがメアリーとミランの事が気になり様子を見る。

 

 「タペタムGO! あれ?」


 ——繋がらない?! 確か鉄馬車はアルファ隊に任せたはず……、何かあったんじゃ……。


 私はフュージョンを解除する。

 何故か解除の仕方は昔から知っていたかの様に、呼吸をする様に出来た。

 ご都合と言われようが出来た。


 《トト、アルファ隊の所まで案内してくれ!》

 

 私はトトの案内で鉄馬車を目指した。


 

◆◇



 「な、なに?! リラお嬢様がいない?!」

 

 ルークは絶望にも近い表情を浮かべ、孤児院長であるフレアに声を荒げる。

 ルークはハッとし驚きの表情を浮かべるフレアに言う。


 「も、申し訳ありません、ちょっと今、色々な事が起きすぎて……」


 「良いのですよ、ルークさん話は届いております。

 しかし、おかしいですね、ローの話ではルークさん、貴方がリラを連れて行ったと聞きましたが……」

 

 ルークは当時を思い出しハッとする。


 「ま、まさか、どうにかするってトトに捜索を任せただけでなく自分も?! しかし門は封鎖されてたはず……、あっ! あの穴から! フレア様、リラお嬢様を見かけたら屋敷に戻る様お伝え下さい!」


 ルークはそれだけ伝えると、孤児院を飛び出し屋敷に戻る。




 屋敷には遅番を終え、一時帰宅していたミラとロザリー、そして、回復したアランがいた。


 「ルーク、戻りました! はぁ、はぁ」


 ルークの声に急いで駆け寄る3人、ルークは事の次第を説明する。


 「お帰りなさい、で? リラは……」


 「はい、孤児院にもギルドにもいませんでした。

 トトさんにメアリーたちを探す様、指示をしていたのは見たのですが、おそらく誘拐された子供たちの様に誘拐されたか、自ら探しに行ったか……、でしょう」


 「ロザリー、城に戻りましょう、何か進展があったかも知れません、ルークとアランは屋敷でリラの帰りを待って頂戴、大丈夫、あの子は賢い子だもの」


 心配そうな表情を浮かべるも気丈に振る舞うミラ、皆はそれに頷いた。

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