第27話 アイツ再び
記憶が少し戻った時、私の知らない真実の様なモノがわかった時、指輪に新たな力が目覚める……。
『魔王城(構築率40%)』
——私は悪魔で魔王……、なのか?
「私は……、魔王……?」
「ハッハハハ! 魔王? 貴様が魔王だと? 悪魔堕ちの分際で、貴様たちが言う魔王なんぞ人族が生んだ夢想に過ぎぬ! カルディナを魔王と呼ぶなら、そちも魔王やも知れん。
カルディナもただの悪魔堕ちに過ぎぬからな。
しかし、カルディナは魔王などでは無い、真の魔王様とは負の眷属の頂点に立つお方、後にも先にもお1人、あの方をおいて他におらんわ!」
負のオーラを増大させ凄むベルゼード、トトはリラを守る様に結界を張った。
その凄まじいアレルギーは辺りの瓦礫を吹き飛ばし、虫の息であった傭兵たちも、それと同じく吹き飛ぶ。
——どゆこと?! じゃあ、この魔王城は?!
「ベルゼード様、お力をお控え下さい、これでは屋敷が壊れてしまいます……、してあの小娘は?」
屋敷の中から女性と壮年の男が姿を表す。
1人は屋敷の主人マリー・アゴット・ギルマルキン、もう1人はモリス……、2人ともに瞳を赤く不気味に光らせている。
「我のオーラで悪魔化をさせてしまったか、まあ丁度いい、アレが我の結界を破った者だ、それとあの猫は確実に捕えろ、フフフッ、間違いなく奴ヘの切り札となる」
相手は本当に結界を破ったのかと思える小さな少女、そして、ベルゼードの力を持ってすれば捕らえる事など容易く思える、ただの黒猫に見える猫。
2人は困惑し、その疑問を投げかけるとベルゼードは笑みを浮かべ、リラについて話した。
その内容に2人は驚きを隠せない。
「そして、アレは精霊獣だ」
「せ、精霊獣!? しかし、精霊種は!」
「そう、奴らが人族を使い根絶やしにした、奴らにとって精霊の力は脅威だからな。
しかし、今まで精霊の目撃例がなかった訳ではない、急激に数を減らしたのは事実だろうが、1つの種を根絶やしにする事はそう容易ではない。
しかもアレは、人と契約の出来る上位種、何としても我の手駒に加えたい」
ベルゼードたちがよからぬ事を考えている最中、リラも考えに耽っていた。
——私は悪魔で、トトは精霊獣……、私は魔王ではないけど魔王城が出来上がりそう……?
ああぁぁぁ!! 意味わかんねぇーよ!!
「私は絶対に悪魔なの?! 黒い髪で赤い瞳なんて探せば、どっかにいるでしょ?!」
リラの言葉に3人は目を丸くする、悪魔堕ちした者としてはやはり違和感があったのだ。
そんなリラにマリーが笑顔で近づく。
「漆黒の髪、赤い瞳を持つ者は悪魔堕ちした悪魔以外あり得ない事よ。
ベルゼード様の様な純血の悪魔は眼球が漆黒に染まるの。
そして私は純血の悪魔の子、こちらのモリスは悪魔の眷属、ベルゼード様は別格にしても、私たちも貴女の上位種にあたるのよ?
口の利き方には気をつけた方がいいわ」
「うっせー、ババァ」
「バ、ババァ?!」
「お前は誘拐犯として国に引き渡すのは決定事項なんだよ、すっこんでろ!」
「なっ、マリー様に何て口の利き方を!」
「モリス!」
モリスがリラの無礼な物言いに激昂し、リラに向かうがベルゼードが止め、その表情を緩める。
「負の感情、特に怒りの感情を爆発させた時、負の王の寵愛を受ける者が現れる、負の力に目覚め、殺戮や破壊だけを好む負の
其方がどうして自我を持っておるのかは知らんが、話は出来る、そうであろう? 我と取引をせんか?」
「取引?」
「そうだ、其方は自我こそ持ってはおるが悪魔にかわりはない、人族に見つかれば討伐対象になる事は明白、もう心当たりがあるのではないか? 我が其方の居場所を作ってやろう。
その代わりその黒猫を……」
「ああああ!!!」
「ど、どうした!」
——そだ! 私のこの姿は指輪の力だった! と言う事は指輪に悪魔の、魔王の力が備わっている……って事だよね?
だとしたら指輪の真の持ち主こそが魔王! この指輪を私に渡したのは……、
あのお方……って、そうだ、間違いない!
《約束の子供は、リラちゃんに似た可愛い女の子がいいなぁ〜》と……、
メアリーとミランの件も……、変態魔王め! 魔王はお前だったのか! ウェズリット・バーン!!
私の名推理が超加速する……、謎は全て解けた!
「フフフッ、今度こそ尻尾を掴んだ、
「「「……」」」
……。
リラの突拍子もない言葉に困惑する3人、困惑をいち早く抜け出したのはベルゼードだった。
「アレは何を言っている、やはり完全な自我を持つ悪魔堕ちなどおらんのだ! 貴様は危険だ、我がオーラの前に傀儡となるが良い!!」
爆発的に溢れるベルゼードのオーラ、それはリラを襲う。
「べ、ベルゼード様! 今のお身体で無理は!」
「ふん、こんな小娘程度、訳もない。
見るにエルフ種の悪魔堕ち、レアではないか、今世のコレクションに加えてやろう」
ベルゼードの黒いオーラは、リラの周りで凝縮されリラの姿が見えなくなる程、暗く、黒く染まる。
「ハッハッハー! 我が傀儡となれ! 小娘!!」
歓喜を上げながら圧倒的力を見せるベルゼード、マリーもモリスも、下がり耐えるのが精一杯だった。
しかし、暗闇の中より声が響く。
「やっだっ何これ、暗っらぁい!」
徐々に薄まって行くベルゼードの黒いオーラ。
驚きのあまり固まるベルゼード、徐々に薄まって行く自身のオーラを凝視していると、うっすらと少女の姿を確認する。
「なっ、なんだと!!」
少女は黒いオーラを口のあたりから吸収していた、そして少女の姿が見えて来る。
漆黒のボブヘアにそこから飛び出た尖った耳、全身黒をベースした、真っ赤な差し色が入った特徴的な装束、それらを覆う漆黒のコート……、そして、その背中には妖精が持つ様な半透明の4枚の羽根をはやし、額には黒い一本のツノが生えている。
そこにはトトの姿はなかった。
「き、貴様!! 何をしたぁぁ!!」
「あっ! まだあった!」
変貌を遂げたリラは周囲の黒いオーラを飲み込むとベルゼードに目を向けと、次の瞬間、ベルゼードの「ぐあぁぁぁ!!」と言う悲鳴がこだまする。
いつのまにかリラはベルゼードの頭に手を置き黒い何かを吸収していた。
徐々に痩せ細るベルゼード、ついにはそれは朽ち果て、砂の様に崩れる。
震えるマリーとモリスを尻目に少女は不気味に笑う。
「げぷっ、リラちゃん超パワーあぁぁっぷ!」
大きく両手を上げ満遍の笑顔見せるリラ。
そんなリラの姿は黒いオーラから出てきた時より少しツノが伸びていた。
——えっ? 私何言っての?! 何やってんの?!
そんな光景を目の当たりにしたマリーとモリスは本能的に逃走へと走る。
恐怖からか、現実を直視出来ないのか、2人は共に思考を停止させ、ひたすらにその場から離れようとした。
しかし、それは叶う事はなかった。
「ダメだよ、キミたちは
リラはそう言うと瞬く間に2人の頭に触れ何かを吸い取る。その行為はベルゼードの時とは違い瞬時に完了し、2人は糸の切れた人形の様にその場に座り込み、何かに怯えた様子を見せる。
「すくな!」
倒れた2人は立ち上がる事も出来ずに、リラを見て只々怯え、自我が崩壊した様に言葉すらも聞き取れなかった。
——な、何なのこれ……。
《やっほぉ〜リラちゃん、おっひさ〜元気してた? 私はちょー暇してたよ》
——やっぱり、テメーか!
《杖ちよー凄いでしょ?! 私の言った通りだったでしょ?! どう? こっちの世界エンジョイしてる?
……、あれ? 今日は大人しいね、嬉しくて言葉も出ないか、そうか、そうかぁ〜》
——嬉しかねぇーよ!!
《私もあれからさ、コツコツ力を溜めてリラちゃんに会うのを楽しみにしてたんだよ。
次に力のある教会に来てくれた時には会えるくらいには溜まったんだけど、『フュージョン』って力を手に入れたでしょう?
それでケットシーと辛うじて通じる事が出来たんだよねぇ〜、ほら、ケットシーって私の眷属じゃん? しかも精霊獣だから私とは繋がりやすいじゃん?》
——知らねぇーよ!!
《んでさ……、ん? あれ? あっ! ごめんごめん! リラちゃんの身体、今、私が使ってるんだった、ほい!》
「て、てめー! 何勝手に私の身体、乗っ取ってんだよ!!」
リラの声に怯えていたマリーとモリスは失神する。
《ほら、急に大声出すから〜、念話出来るでしょ、もう、うっかり屋さんなんだからぁ〜》
『はあ?! な、なんだとゴラァ!!』
《まあ、今回は許してよ、あのままだったら大変な事になっていたかも知れないんだから、リラちゃんが、こんなに早く負の眷属と対峙する事は、流石の私も想定外だったんだから! 今回は感謝して欲しいよ〜》
——あのベルゼードって奴は純血の悪魔って言っていたし……、私はかなりヤバかったのか……。
『ごめん……、ありがとう……』
《うんうん、まあ、約束だったからね気にしないで!》
——約束……?
《でもさ、アレは酷いよ! 私は魔王じゃないからね、魔王城だって私のじゃないし、ましてや女の子を拉致したのなんて冤罪の何物でもないよ! そうそう、女の子と言えばもう、ケットシーいなくても、助けてくれる人が近くまで来てるから任せて大丈夫だよ! その方が上手く事が進むでしょう》
『ほ、本当?! 良かった……、そう言えばあの魔王城って何なの? 貴女で無ければこの指輪は……?』
《ああ、それ? それはねっ、リラちゃんの前世の力を私が少しカスタマイズして指輪にした物なの》
——はあ?
《だからね、気にしなくて良いよ! その内思い出すよ〜》
『はあ?!!』
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