第41話 匠の苦痛な事とふたりの妹。

あい「たったー!」

たく「おー、どしたどした。朝からおっきい声出して」

あお「あのね、愛央がこの前球技大会の応援団やってたときに、あいちゃんがたったーの手伝いしたい!って言ってね、愛央も手伝いたいなって。だからあいちゃんがおっきい声出したのかも」

たく「だからか。あいちゃん、それであにを手伝う気だべさ?」

あお「まずは愛央とチアじゃない?」

たく「あにおらを応援すんの?」

あお「うん!」

たく「愛央、チアユニ着ておいで」

あお「はーいっ!」


愛央とあいちゃんは俺のことを手伝いたいらしい。そっか、愛央がショートヘアにしてからまだ応援したことなかったから?そんな謎の方程式を立てていると、愛央が戻ってきた。


あお「たーぁっくん♡」

たく「戻ってきた。で、あにすんの」

あお「おうえんっ、していい?」

たく「うん・・・」

あお「・・・ぎゅっ♡ちゅっ♡」

たく「はっ?なにしてんの?」

あお「ぎゅーってして、キスしたの」

たく「やめろ、顔赤くなって集中できん!」

あい「ぐちゅー」

たく「ヤベ朝の6時。飯作らなければ」

あお「フレーっフレーったーっくん、フレーっフレーったーっくん♡」


可愛く声援を送って踊る愛央に、俺はひたすら本気で朝飯を作っていた。その時、愛央は・・・


あお「ねぇたっくん」

たく「なに?」

あお「たっくんってさ、辛いことあるのにどうして大丈夫なの?」

たく「え?」

あお「辛くて泣きたいときでも、涙目になりながら頑張るじゃん。愛央、不思議で・・・ね?」


俺はそう言われたとき、手を止めて愛央を呼んで部屋で話をした。


たく「あいちゃーん、いたずらしちゃおいねぇよ?」

あい「はーい!」

あお「どこ行くの?」

たく「部屋来い。話の続きしたる」

あお「なぁに?」

たく「実はね、俺が苦しくて辛くて泣きたくなるときでも頑張れるのは、いつもうしろに愛央がいるからだよ」

あお「うち?」

たく「うん」

あお「うちなにかした?」

たく「専属のチアリーダーでしょ?」

あお「うちはたっくんが好きだから応援してるのに」

たく「それだよ、それ」

あお「えっ?」

たく「苦しいときでも、愛央がいっつも近くで応援するから乗り越えられるの」

あお「じゃあ・・・愛央が応援するから頑張れるの?」

たく「うん。愛央がいるから」


ちょうどこの会話を終えたときあいちゃんが泣き出したのでご飯をあげて急いで学校へ行った。1限が体育。今日はなんと綱引き。愛央はチアリーダーとして応援。俺らは試合開始と同時に一斉に引くものの、結局2回とも負けてしまい、俺は情けなくて泣いていた。そしたら、愛央が後ろからぎゅーって抱きついてきたのだ。


たく「どう・・・して・・・」

あお「たっくん。ぎゅーっ。がんばったね」

たく「愛央・・・チアユニ汚れるよ」

あお「だいじょうぶっ。それよりも、帰ろっ?おうちに」

たく「でも授業が・・・」

あお「愛央たち、先生からなにか嫌なことがあったら家に帰っていいって言われてるでしょ?」

たく「帰っていいの?」

あお「帰ろっ。愛央、たっくさん甘えてあげるから!そしたら忘れちゃうはずっ。ね?」

たく「うん・・・」

大橋「匠たち、帰るか?」

たく「はい」

大橋「先に言っとけばよかったな。ごめんよ。帰って愛央とデートしておいで」

たく「バカ言わないでください先生。でもまぁ、はい。してきます」


先生と会話してもしょんぼりした顔をしている俺を、愛央とあいちゃんはずっと後ろから見て話していた。


あお「やっぱり、ショックだったんだね」

あい「たったー、じゅーちゅのみたいー」

あお「たっくん、持ってるの?」

たく「一応ね。ほら」

あお「飲ませる?」

たく「・・・・」

あお「あーんっ♡」

たく「えっ?」

あお「たべてっ♡」

たく「ごめん、今食う気にならない」


その後15分歩いて家についたが、あいちゃんを寝かしつけたあとはずっと黙ってた。さすがに愛央は黙ってられず、ポンポンを持って俺の横に来た。


あお「たっくん」

たく「なに」

あお「やっぱり、悔しかった?」

たく「うん」

あお「辛い?」

たく「愛央が一番分かってるでしょ」

あお「うん。辛いんだよね。じゃあさ・・・」

たく「ん?」

あお「かがやいてっ!たーっくん!」


愛央はそう言うと、持っていたポンポンを俺の顔近くで輝かせた。笑顔がやけに素敵なんだが。


たく「あにしてん。愛央の大事なものをクソ汚い俺の顔の横で振るなんて」

あお「ポンポンも大事だけど、たっくんの方が1万倍大事!チアユニが汚れたって、たっくんに対する愛情でどうにかするもん!」

たく「あっかわらず兄に対して容赦しねーよなーったく。まぁでも、そこが愛央だよね」

あお「ふふっ。ねぇたっくん、ご飯食べに行こ?」

たく「えそしたらあいちゃん起こさなおいねぇじゃん」

あい「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

たく「じゃあ・・・行こうか」

あお「うん!」

あい「たったー」

あお「たっくん」

たく「なに?」

あお「これからも」

あい「いっしょきゅぴ!」


愛央はいつまでも、励ますだろうと思い、俺はご飯を食べに行った。

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