第38話 俺って、どうすればいいの?

体育祭で負けてから2日後の月曜日。愛央は珍しくツインテールを作るわけでもないのに早く起きて、俺はまだ寝ていた。あいちゃんは朝から元気に遊んでいる。が、あいちゃんが俺の体に乗っかってきた。まだ寝たいところだが、あいちゃんはこういうときだいたい遊んでほしいのだ。はぁ、起きねぇと。


あい「きゅーぴー」

たく「ん・・・」

あい「にーにー!あしょんでー!」

たく「おはよう、分かった。遊ぼうか」

あい「きゅぴ〜♡ありがとう!」


あいちゃんにはこう言われたが、俺は友達に疲れてるんじゃない?と言われたことがある。たしかにここ2ヶ月は多忙を極め、一時期死にかけるほどまでに至った。また、バイトで色々注意をされ、精神的にも限界だった。それを見かねた愛央とあいちゃん、今日も何を仕組まれるのか・・・。


あお「たっくん♡おはよう♪」

たく「おはよう・・・」

あお「最近、たっくん元気ないね」

たく「体育祭負けてから力抜けたもん」

あお「ぎゅーっ!大好き♡」

たく「はぁ」


俺はそう言ったが、体育祭に負けたイライラで自分をなぐってしまった。あいちゃんは大泣き。・・・その後俺が落ち着いたとき、そっと愛央が近づいてきた。


あお「たくみっ、あれだけ頑張ったんだよね」

たく「でも、俺のせいで負けた・・・」

あお「わたしね、あなたがいたからチアができたの。たくみがいなかったら、当然今の私も居ないの。すべて、たくみのおかげだよ」

たく「でも・・・」

あお「事実は事実で受け止めなきゃいけないよね。でも、あいちゃん見て。怖がってるよ」

たく「あっ・・・」

あお「ばかって思わないで。たくみはたくみらしかったの。わたしだって時には泣くよ?たっくんが抱きしめてくれるから泣きやむの」

あい「にーにー、だいじょうぶ」

たく「もう一回やらなきゃ・・・」

あお「だめっ!」

たく「俺が悪いんだよ!?俺のせいでみんなが負けたんだよ!?」


バカバカしくなった俺が本音を言うと、あいちゃんが泣き叫んだ。


あい「きゅぴらっぱあああああああああ!!!!」


あいちゃんが泣き叫んで出したものは包帯と、テープ?なんでこれが?


あい「にーにー、あたまたたかないで!」

たく「・・・」

あお「わたし、いつものたくみが好きだよ♡」


あいちゃんは本気で殴った俺の頭を治したいのか。なんか情けなく感じた俺を愛央はいつも以上の可愛さを見せながら伝えた。


あお「私の理想のたっくんはね、いつも愛央とあいちゃんのことを助けてくれるお兄ちゃんって思ってるの!でも我慢してるときはいつものたっくんって感じないんだ」

たく「はぁ」

あお「いつものたっくんは昔は怒ってたりしてたけど今はいい子。怒りたくなっても我慢してるってことは、それだけ嫌なことがあっても我慢できるようになったってこと。だから私、たっくんが我慢しすぎないようにチアやってるんだ」

たく「てことは地学的に言うと、俺の我慢しすぎは地震のひずみが溜まってくってのと同じで、それを解放するから地震が起きてる、んで俺の場合は愛央が励ますから解放されんのと同じか?」

あお「うん!大好きだよ♡たっくん♪」

たく「はぁ・・・・」

あお「ぎゅーっ♡負けないでね♪」


怒るのを知っている愛央は分かっているからこそ何が出来るか日々悩むとのこと。でも身近な障害者って俺だけらしいから何が出来るか愛央はすぐ思いつくらしいのだ。その一つが愛央の朝必ずやるチアリーディング。だからか。いきなり朝応援されてまぁなんかなんとも言えない気持ちになるが、そういうことだったのか。


バイトなどで色々我慢していた俺に愛央はさっきのように話しかけると手を繋ぎ、俺を外に連れ出した。


たく「なんでいきなり外に?」

あお「ごめんね。たっくん、息抜きしてないって思ったから!」

たく「そらまぁおら息抜きしてねえけど」

あお「抱え込みすぎって、医学的にも良くないんだって。だからいきなりだけど、愛央とデートして!」

たく「それで吐き出してと」

あお「愛央のわがままなのに・・・」

たく「あっちむいてーほいっと、おーいい笑顔」

あお「ありがとう!」


あいちゃんがぐっすり寝てるからふたりでお出かけ。ふたりで出かけても結局は近くのファミレスで飯ってことになるんだがね。


あお「たっくーん♪あーん♡」

たく「ばか。クソガキじゃねぇって」

あお「たまにはいいでしょ?」

たく「まぁ・・・」

あお「顔色悪いよ?無理してるのかな」

たく「色々我慢してたんだよ」


俺はそう伝えて飯を食べ終わるとさっさと会計して家に帰った。まだ愛央やあいちゃんがいるからいいが・・・。


家に帰ってきて布団に籠もると、あいちゃんがまた乗っかってきた。


あい「にーに」

あお「あいちゃん、にーにちょっと疲れてるから休ませてあげて」

あい「おなかしゅいた」

あお「愛央も・・・」

たく「はぁ・・・3000円あげるから食べておいで」

あお「ありがとう・・・たっくん、なにか食べて?」

たく「俺はいらねぇ」


嫉妬したような感じで言ってしまったが、病んでるときは食べる気にもならない。愛央は分かってくれるはずだ。

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