第37話 体育祭当日は穏やかじゃない!!!

6月最初の土曜日、朝の4時である。マジで眠い。だが眠気覚ましに6階の運動場に行く。とはいっても、部屋はあまり広く無いので軽めの運動くらいってところだろうか。そしたら数分して、愛央が静かに入ってきて抱きついてきた。


あお「たーっくん♡」

たく「おはよう。よく寝たかい?」

あお「うん!」

たく「お前パジャマで抱きつくとかあじした?」

あお「今日は何の日?」

たく「体育祭だけどそれが?」

あお「チアやるんだからツインテ作って」

たく「ばかやろう。ぴえんを出すな。作ってやるからほら行くぞ」

あお「うん!」


辛口毒舌の俺は朝が1番口調がキツい。それでも、愛央やあいちゃんを見る時だけは甘口で対応するようにしている。そして愛央にツインテを作るとまぁ早いこと、愛央はすぐ着替えてきた。


あお「たっくん、体育祭頑張ろうね!」

たく「負けたくないけどな・・・」

あい「ぎゅ」

たく「ん?なんだ?」

あい「あい!」

たく「起きたか。おはよっ」

あい「あーい!」

あお「あいちゃん!おはよう!ねぇたっくん、もう少しで行く時間だね」

たく「は?早っ。もうか」

あお「あいちゃん、やるよ!」

あい「きゅぴ!あいたん、きがえる!」


あいちゃんは愛央に着替えを手伝ってもらい、ハイハイしていた。時刻はまだ6時10分。もう少しで行く時間になる。朝飯が完成したのでそれを食べることにした。


たく「あいちゃーん、愛央ー」

あい「あーいー!」

あお「なぁに?」

たく「メシ食うぞ」

あお「うん!」

あい「きゅぴー!」


朝ごはんはパンケーキ。甘いもので朝飯にすることとしたのだ。あいちゃんと愛央の好きないちごを中に入れた特製。美味しそうな顔をあいちゃんも愛央もしていたのであった。食べ終わった頃がちょうど家を出る時間。愛央は去年と同じような応援団風のコーデを作ってきたのだ。


あお「たっくん!」

たく「なに?」

あお「可愛く・・・なった?」

たく「えっ・・・愛央超可愛いじゃん」


愛央は白の裏地に青色のチェック柄チュールスカートとベージュの七分丈のブラウスを着ていた。ツインテールをあえて耳横で作ったからか、とても可愛かった。ってか垢抜けてやがる。


あお「今年の愛央は、チアっぽさをイメージしたの!去年はちょっとだけだったからね」

たく「余計に可愛いような気がするけど?」

あお「いつものことでしょ?」

たく「まぁ・・・」


愛央はポンポンを持って、ツインテールを揺らしながら外へ出た。そしてエールを送りながら歩いていた。そしたら・・・


あお「フレーフレーわたし!フレーフレーたっくん!Fooooo〜♡」

たく「転ぶなよ」

あお「うん!」

あい「きゅぴ!きゅぴ!きゅぴぴ!きゅぴらっぱ〜!」


あいちゃんがおまじないをかけて出てきたのはなんとびっくり!お昼御飯だった!


あい「にーにー、がんばえ!」

あお「すごいね!あいちゃん!」

たく「はえ!?飯!?すごっ!」


お昼を出したあいちゃんは大喜び。それだけ今年は2人が気合を入れているということだろう。でも俺はなんか嫌な予感がしていた。


そう、綱引き。あいちゃんがおまじないをかけたからこの前は勝てたけど、今日はさすがにそれが効かない。実力で戦うしかないのだ。そんなことを思っていたら、またあいちゃんがおまじないをかけた。


あい「きゅぴらっぱ〜!」

あお「どうしたの?あいちゃん」

あい「きゅぴ♡」

たく「暑くなるから水出したってことだべこら」

あい「あい!」

あお「お姉ちゃんにくれるの?」

あい「あいたん、ねーねーがもってないのしってる!のんで!」

あお「ありがとう!」


おまじないをかけたあいちゃんは、愛央にお水を渡した。そら喉乾くし外暑いからね。愛央はそれを持って飲むと、俺に話しかけた。


あお「たっくんは本番に強いから!」

あい「にーにー、かちゅ!」

たく「ほんとかなぁ」

あお「ほーんとっ♡」

たく「実力ないのに?」

あお「大丈夫!フレ!フレ!たっくん!」

あい「ふえ!ふえ!にーに!」

たく「ありがと。じゃあ、行くか」


学校についたので教室に入り、俺らは気合いを入れてから外に出てきた。あいちゃんと愛央は、俺の席で待っていた。


あお「たっくん!」

あい「にーにー!」

たく「ごめんね、待たせ」

あお「愛央ね、一生懸命たっくんの応援練習頑張ったの!」

たく「そっかそっか。これ、プログラム。俺が出るやつはマーカーしてあるよ」

あお「ありがとう!じゃあ・・・行くよ!」

たく「いいぞ。来い」

あお「フレ!フレ!たっくん!とっちゃえとっちゃえ優勝!Fooooo〜♡」

あい「にーにー、だっこー」

たく「だっこ?分かった」

あい「たかいたかいして!」

たく「よく喋るようになったね」

あい「うん!にーにー、もっかい!」

たく「もっかいやってあげたいけどもうすぐ始まるからね。あとででいい?」

あい「うん!」

たく「愛央、あいちゃんは任せるよ?」

あお「うん。愛央、チアも頑張るね!」

たく「うん・・・」


不安になった俺を励ましたいであろう愛央はあいちゃんと一緒に見守っていた。今年の体育祭の結果は去年同様負けてばかりでかなりイライラ。愛央は不安になっているようだ。最後の競技は綱引き。しかも最後の最後だ。愛央、泣きかけ。あいちゃん、ぐずり始める。俺、大爆発寸前。そんな時に先生が話しかけてきた。


大橋「匠と愛央、来てくれるか?」

たく「へ?あ、はい」

あお「なんですか?」

大橋「負けてもいいんだよ」

たく「はぁ」

あお「負けてもいいのは分かってるんですけど、たっくんって怒ってしまうんです」

大橋「匠が発達持っているということは学校全体の会議で聞いている。愛央は匠を助けたいんでしょ。だから、負けてもいい。怒るんなら、俺がまともにできてないあいつらを怒鳴りつけていい権限を与えるから。だから今回だけは負けたとしても耐えてくれ。分かった?」

たく「・・・かしこまりました」


俺が発達障害を持っていることがもう全ての先生に知れ渡っているのか。うわぁ、あてこともねぇなぁと思っていたら愛央が後ろから話してきた。


あお「たっくん」

たく「あに?」

あお「わたしとあいちゃん、最後の最後までたっくんを応援するから、3人で頑張ろっ!ね?」

あい「きゅぴ♡」

たく「うん・・・分かった」


愛央は本気の眼差し、ただ柔らかい口調で俺に話した。あいちゃんもにーにーがいたほうがいいってことだったので俺はとりあえず納得した。


そして俺らの出番。30秒で勝てるかどうかは分からない。でも、愛央達の期待は裏切りたくない。スタートの合図でいっせいに引き始めた。


たく「負けるか」

あお「たっくん!いっちゃえー!」

あい「にーにー!がんばえー!!!」

たく「ちっ・・・!このクソガキがぁ!」

あお「わぁ!すごい!」


チアリーダーの愛央が全力で応援したのと俺がガチギレした結果は怪力を出したおかげでまさかの勝利。細身の俺から考えられないくらいパワーが出て、一発で引き飛ばしたのだ。しかもあいちゃんのパワーは借りていない。つまり完全に俺一人の力なのだ。夜中の4時に運動部屋に行ったのはその体力をつけるためだった。これで少しは差が縮まっただろう。戻ってくると、愛央が大喜びで話しかけてきた。


あお「たっくん!すごい!なんであんな怪力が出たの?」

たく「朝、俺が家の運動部屋にいたのは覚えてるか?」

あお「うん!愛央、ぎゅーってしたときでしょ?」

たく「あの時つけてたんだよ。サポーターを」

あお「そのおかげ?」

たく「怪我防止のためにつけてた」


だが結局体育祭の結果は去年と同じ最下位。でも、あいちゃんと愛央が大切なことを言ってくれた。


あお「たっくんが負けてもだいじょうぶ!私とあいちゃんがずーっと、いっしょだよ!」

あい「きゅぴ!」

たく「ふふっ、そっか。愛央、後で買い物行くか?」

あお「えっ・・・うん!」


だが家に帰ってくると、愛央とあいちゃんが布団に行って寝てしまった。そらそうよね。疲れちゃったし、ぐっすり寝かせておこう。あいちゃんはお腹が空くと俺の上に乗っかったりしてねだるからそのときにご飯を上げればいいと思い、俺は作業を始めたのだ。大切なことを教えてくれた愛央は俺にとって大切な妹であると思っている。


数時間後、布団で横になっているとあいちゃんがハイハイをして俺のところに来た。


あい「にーにー」

たく「ん?お、あいちゃん。起きたの?お腹すいた?」

あい「しゅいた!ちゅくって!」

たく「いいよ。その前に」

あい「あぶ?」

たく「たかーいたかーい」

あい「あい!きゅぱぱぱ!」

たく「じゃあ食べようか」


あいちゃんにたかいたかーいをすると大喜び。体育祭の応援をしてくれたお礼ってこと。そしたらあいちゃんは大喜びしてくれたから良かった。あいちゃんにミルクを飲ませて、俺が昔遊んでいたプラレールを出した。


あい「にーにー、こえ、なに?」

たく「これはプラレールって言って、俺が昔よく遊んだおもちゃだよ」

あい「にーにーあしょんだの?」

たく「遊んだよ。いーっぱい」

あい「あいたん、あしょんでいい?」

たく「うん」


あいちゃんを遊ばせていると、俺は寝てしまった。あいちゃんもそのうちに、寝てしまったようだ。

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