第192話 お祈りボマー

 それは ウ〇コと言うには あまりにも硬すぎた


 大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた


 それは 正に 鉄塊だった――



 この世の全ての不幸を押し付けられたような可哀想なタクミだったが、そのウ〇コはとても硬かった。ニンゲンなら肛門が余裕で裂ける硬さである。


「いやさ、あの勢いのまま突っ込んでいってグチャってなるのは想定内だったけどさ......まさか俺がグチャってしちゃう方だとは思わなかったよ」


 避けた方向にウ〇コが落ちてきたのはクソ不幸だったが、ウ〇コ塗れにならなかったのは幸いだった。岩のような硬さのブツに突撃して潰れたのは......どんまいとしか言えない。


「なにはともあれ、汚物塗れにならなかったのはよかった......ほんっとーによかった......」


 さて、とりあえずウ〇コにぶつかった身体は炎で殺菌消毒して、と。この後どうしようか。

 こっちがケツだってわかったから逆に向かえば正面に行くのはわかる......けどそこからこのデカいのをどうやって倒せばいいんだろうか。さっぱりイメージが湧いてこない。


 とりあえず......口の中に入って内側からなんとかする対大型モンスター攻略法且つヒヨコをやるしかないかなぁとは思っている。おのれ格上め、気持ちよく撲殺されてくれよ。


「絶対、殺る」


 散々遊ばれた挙げ句、排泄物で一度逝くという凄まじいまでの持て成しを受けたタクミのハラワタは、煮えくり返りすぎて継ぎ足し継ぎ足し秘伝の煮汁で長長時間トロットロになるまで煮込まれて染みっ染みになったモツ煮になっている。

 モツタクミは歩いていく。まだ正体のわからない巨大モンスターの凄惨な殺傷を心に誓って......


 手に握る金砕棒は無意識に漏れ出す呪いを一身に受けて真っ黒に染まり、地面を金砕棒をから伝い落ちる呪いが濡らす。それ所か、悪魔化させた全身に呪いが滲み、フォルムは違うが某探偵アニメの犯人の風貌。


 そして、彼が歩いた軌跡は正に殺人犯が逃げた痕跡......その言葉がピッタリだった。




 ◆◆◆◆◆




 クソ短い足二本からまだ残りの二本が見えてこない。

 ここまで途中に足が見えていないことから、このドデカいモンスターは四足歩行と見て間違いはないだろう。どうやって身体が支えられているのか、謎は深まる一方だった。


「......後ろ足の一本を破壊してくりゃよかったなぁ」


 こう思うのは間違いじゃないと思う。

 でもそんな事したら更に厄介な事になりそうとも感じる。本当に難易度調整おかしい。死ね。


「あ、前足」


 五~十分程度歩かないと到達しない後ろ足~前足とかおかしい。やっと見えた前足は後ろ足同様ド短足には変わりないけど、生えている爪がクソ鋭く、めちゃくちゃ器用に動かせていた。

 なんでわかったかというと、爪を自由自在に伸縮させて床や壁を削って、削り出したモノに爪を刺して口に運ぶって器用な事をしていたから。ゾウの鼻やカメレオンの舌みたいな感じ。


「ウ〇コで俺が殺られたのも主食がダンジョンの床や壁だからかぁ......」


 過去一情けない死に方をした謎はなんとも言い難い理由から成ったモノだった。恥ずかしいやら情けないやら......


 イライラするけど今その恥は脇に置いておいて、岩石ウ〇コマンのツラを拝みに行きますかね。きっとヒリ出したてホヤホヤの臭い立つウ〇コみたいなツラしてんだろうよ。


「はい、ごたいめーん......うわぁ」


 犀っぽい鼻? 角? が顔面の中央に厳つく聳え立ち、猛牛っぽい角が合計六本生えていて、なのに熊っぽい可愛らしい耳をお持ちになり、極めつきにのっぺらぼうな顔面を装備しているなんとも形容し難いモンスターが居た。のっぺらぼうと言っても口だけはバカデカいのが付いている。


「......とりあえず鑑定っと――通った!?」


 想定外にキモいモンスターでどういうリアクションをすればいいのかわからなくなった俺は、ダメ元でのっぺらぼうに鑑定を仕掛けてみた。そしたらなんと! 鑑定が通ってしまった。さっぱりわからない。


「顔っぽい部分を視認すればいいのかなぁ......いまいち前提条件がわからん。けどまぁ通ったしいいや。考えるなんて行為は得意なヒトがやればいいんだよ」


 頭がバグりそうになって慌てて思考を筋肉に切り替えて事無きを得た。


 そんな事よりも......



──────────────────────────────

 最初の獣

 レベル:■■■■

──────────────────────────────



 意味がわからない。何、コレ? 絶対このレベル帯で遭ってはいけないモンスターだよね、コイツ。


 ラスボス? ラスボスであって欲しいなぁ。これより上のボスがこの先居るなんて考えたくないんだけど。でもなぁ......悲しい事にラスボス的な演出無かったんだよ。某狩りゲーの最初のクエストで歩くゴーヤが乱入してきた程度の無理さすぎて......なんかもう逆にテンション上がってきた。


「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれッてなんかメガネの人が言ってたからな!! 意味はよくわからんけどアレだろどうせ、捨て身特攻すれば粗方何とかなるよって意味だろうから俺はそれを試すのみ!! いいだろう、殺って殺ろうじゃねぇかこのクソモンスターッッ!!」


 ずっと理不尽に晒されて来た。だから理不尽をなんちゃって不死身でカバーしつつどうにかして殺る。それがタクミの根幹であり真理。

 どうせ俺には退路も帰る場所も無いんだから、どっちかが最期を迎えるまで殺りあおうじゃないか。


 まぁとりあえず......食うのを止めて、異物の存在を確り認識してもらいたいわ。


「お客さァァァん!! 当店はもうラストオーダー終わってるんですよぉぉぉぉ!!」


 その場のテンションから出てきた言葉をそのまま垂れ流しながら、デカブツが伸ばした爪に刺さっている食べ物を金砕棒で弾き飛ばし、そのまま返す刀で爪の一本を圧し折るつもりで殴り掛かった。


「ヒャッハァァァァァァッ!!!! チィィッ!!」


 最上級の殺意を纏わせた殴打は、爪を殴ったとは思えない身体の芯に響く重低音を鳴り散らかせて不発に終わる。


 だが犯人はそんな事ではヘコたれない。

 ブッ殺すと心の中で思ったのなら、その時既に覚悟はキマッているのだから。


 攻撃が効かないのであれば、効くまで殴ればいい。

 それでも効かないのであれば、その都度工夫を凝らして技を研ぎ澄まさせていけばいい。


「格上と戦うならばァァァッ!! 想定外の事態が起こるなんて想定内なんだよォォォッッ!!!」


 その場のノリとテンションで頭の悪い発言を吐きながら、更に狂気を孕ませて殴り掛かる。それでいい。それしかないのだから。当初思い付いていた計画などそっちのけ、行き当たりばったりの攻略こそ至高。

 そして何故今タクミが最初の獣の爪にご執心なのかというと、ダンジョンの床をスパスパ切れるから有効な武器になるという予感だけで動いている。とりあえずいつもの思考能力? そんなモノより暴力のスピリットである。




「手応えェ......アリィィィィイ!!!」


 合計五十発以上ぶち込んだ結果、金砕棒から伝わる手応えに変化が訪れてテンションが爆上がったタクミのラッシュがより勢いを増して最初の獣の爪を襲う。


『GRRRRRRRRRRRR』


 ――と、そこで最初の獣が哭いた。


 己の身体に異変を感じて発せられた、ただの哭き声。

 ただそれだけで、タクミは攻撃を中断して避難せざるを得なくさせられてしまう。


「......ハハッ、何も聴こえねぇ」


 三半規管? 御逝去したよクソッタレ。

 鼓膜? 無いなった。

 身体? 言う事聞かねぇ、動けよ畜生。というか何故今更になってこの化け物はルーティンに無いアクションを起こしたのか、爪が圧し折れるまでノーリアクションを貫けよ。


 異変を感じて即飛び退いたお陰でギリギリ安全圏といえる場所には居るが、コントロール権を失った身体のコントロールを取り戻そうと焦りながら心の中で悪態を吐きまくる。


「......目は無ぇけど、こっち見てやがんな」


 身体に群がる蝿を鬱陶しがる象みたいだった先程までとは違い、確実に殺さないとうざい寝苦しい夜に寝室に紛れ込んだ蚊と認識されていると本能で理解する。


「あっ......」


 動け動け動け動け動け動け動け動け動けッッ!!


 目の前で、高層ビルをボウリングのピンに見立ててボウリングが出来るサイズの球体が創られていくのが見える。しかし身体が動かない。


「ヤバイヤバイヤバイ......」


 身体を影が覆い隠す。

 あまりにもあまりな攻撃を前にして全然関係ない所に文句をつけるクレーマーの如きメンタルで八つ当たりを叫んでしまう。


「高級耳栓をラインナップに並べておけよババア!」


 叫んでもどうしようもなく......


 今ではもう大きくなっている最中なのか、大玉が落下しているのか、スケールがデカすぎて全然わからない。いよいよもってヤバイ。



 あれは無理だ、避けないと――


 だけど、どうすればいい?


「デカ......! 動......! 逃......! ......無理!! 如何にか!? 出来......!?」


 離脱したいけど出来ない。


「潰」


 口を動かしても何も変わらない。


 もう、落ちてきてる――


「 死 」


 アレに潰された後、どうやって復活する?


 無理だろう、どうしようもない。






「ゴレ〇ヌさん......」


 あんな緊急離脱装置なんて......あっ!!


「ヒヨコッッ!!」


 回復していてよかった! MP!


『ピィィィィィィ』


 目の前に盾を設置して、その後どうなるかは......お祈り申し上げます。




 カッ――




 光り輝くヒヨコが爆発した。



──────────────────────────────


 体調が悪いッッ!! ずっと不調ッッ!!

 完治したら生クリームを吸った後、こし餡直食いするんだ......へへ......


 そんな感じで更新出来てない中、abm111様からギフト頂けていました。ありがとうございます!

 お読み頂いている皆様、いつもありがとうございます。水曜日更新出来なかったらごめんなさい。


 出来るだけ頑張ります。


 ヒヨコボム離脱の名称にホワイトゴ〇イヌさん的なのを入れたかったのですが、何も出てきてくれませんでした。最後の方の「ヒヨコッッ!!」の部分に良い感じの技名を思い付いた方はコメントお願いします。その部分が変わるかもしれません。

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