第184話 悪魔さんとの日々
悪魔さんに師事してから三日が経過した。
悪魔さんのレッスンは苛烈を極めている。主に精神的な方面に――
『そんな生温い攻撃であのクソ肉虫を殺せるとお思いですか? ざこですね。ざぁこ』
なんて人によってはご褒美のような、そうでもない人にはイラッとする煽り文句を笑いながら言い放ちつつ、見逃さないあの人でも見逃しちゃうような速さで振り抜かれた拳が俺の身体を木っ端微塵にしたり......
『私の裸はどうですか? 綺麗でしょうか、ムラムラしたり......胸が無い、貴方はそう思うのですか、そうですか――』
勝手に脱いだと思ったら、呆気にとられている俺に向けて静かにブチ切れながら光線みたいなのを打ってきて頭を破壊したり......死ぬほど恥ずかしかったらしいけどそれっぽい悪魔を拉致ってくればいいのにと思ったりもした。いや、綺麗だなとは思うよ、感想はそれだけだけど。
『此の度はレッスンや戦闘行為時以外、身の回りのお世話は全て私が致しますので......何もなさらないで下さいね』
戦闘や授業以外では生き物としての尊厳を全て失ったような気がしたり......とまぁ、色々あった。
『今行っている事は貴方の資質を確かめているのです。それに今はお休み中です。お休み中は何も考えてはいけません』
流石に何をしているのか気になった俺は、膝枕+耳掻きをされている最中に聞いてみた。そしたらこんな事を言われてしまった。
憤怒、色欲、怠惰、嫉妬、傲慢、強欲、暴食。
この七つの素質を炙り出したいらしいけどさ、どっかのハンターみたいに水と木の葉を使って簡単に見定められたりしないかなぁ? と、遠い目になる俺。結構キツいんだよ、精神的に......
『今は何も考えなくていいんで現状を甘受してくれていればいいのですよ』
生まれてこの方、フィクションの中だけの出来事と思っていた事ばかり起こる日々が辛い。皆さんも既におわかりの通り、ボコボコにされたり身体を木っ端微塵にされていたりする方が余程気が楽な俺である。
おのれ悪魔さんめ......俺の血液ストックでも治せない精神面を攻めてくるとはやりよる......
なんて思いながらも全てにおいて上位な悪魔さんの謎パワーで拘束されて逆らえなくされた俺は、この後めちゃくちゃお世話をされた。
◆◆◆◆◆
レッスン開始から一週間が経った。
『貴方の素質は、憤怒が最優。暴食が優、強欲が良、傲慢が可ですね。怠惰、嫉妬、色欲は残念ながら素質が皆無でした......本当に元ニンゲンなのか疑わしいですが――さて、本日からはその四つに絞って鍛えていきますのでよろしくお願いします』
人間の三大欲求の一つ、性欲が......俺にはたんぽぽの綿毛程度にも残ってなかったらしい。多分家庭のアレコレを見て家族というのに一欠片も幻想を抱けなくなっていて、子孫を残すという機能が悪魔化と共に消失した......というのが悪魔さんの見解。まぁ俺もそんなモノは要らぬの精神だし、クソの血筋はここで途絶えればいいと思ってるから何も問題はなかった。残ってるのは地上に出て俺が塵も残さず消す。
あとそこそこダラダラしたいとか寝たいとか思う気持ちはあるけど怠惰もカスみたいなモンだった。嫉妬も無いんだって......妬むとか以前にすぐ諦めるから。
それなら強欲も無いんじゃないかと言ったらそうでもないらしい。欲しい物ができれば力で奪えばいいという考え方になってるからだって。傲慢の資質はその過程で生えたそうだ。よくわからん。
『ふふふふふふふ』
この日から最初の三日が生温く思える程煽ってくるようになった悪魔さんとの戦闘、悪魔さんの持ってくる血ドレッシング料理をわんこそばスタイルで食わされる日々、それと倒せば宝くじ的な感じで何かしらをドロップするモンスター(なお物欲センサーに猛烈に反応する)から指定されたモノを666個集めるミッションが出たり......とハードな日々が始まった。
レッスン第二章が過酷すぎるますです。
物欲センサーって心の底から強欲さんを飼い慣らす事が出来ればどうにかなるんですか? いや、マジで誰か助けて......
◆◆◆◆◆
一ヶ月経った。多分一ヶ月。
まだ目標の半分も集まってない。
見栄を張りましたごめんなさい......実際は五分の一程度しか集まってません。いや、この場合五分の一も集まったというべきか?
めっちゃニコニコな悪魔さんが今日も物欲センサーの権化を連れてきます。もう、その憎き相手の姿を見るだけで飼い慣らしに成功した憤怒が仕事をする程度には調教された。
暴食はもうそろそろ、傲慢と強欲はてんでダメ。
それが俺の現在地。
つらたん......
◆◆◆◆◆
「殺、違、殺、違、違、違、違、違、違、違、違、違、違、殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺............あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
日数、覚えてない。
出ない。
今日も、出ない。
悪魔さんがもうガチな悪魔にしか見えない。正体はガチすぎる悪魔だから間違いじゃない。
ニコニコしやがって............
「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ゛」
いつの間にか上位悪魔に進化してた。
そンナノんよりも、今ハ、早く、狙いノ物、吐キ出せ、クソ野郎。
◆◆◆◆◆
アークグリードロッタリー
俺が今、何万匹もぶち殺しているモンスターの名前である。
気持ち悪いくらい素早く舞い、Gのように避けるクソ面倒なモンスター。
特等~99等まで設定されていて、倒せば必ず何かをドロップするという悪魔さんの元居た世界で有名なハイパー運試しモンスター。らしい。
レベルはそこそこ高く、最上位クラスのダンジョンにしか出現しないらしい。現在はババアがコイツが無限湧きする狩り場を自分の縄張りとしている為に誰もやって来ないコイツらの楽園らしい。そこからほぼ無限に引っ張ってこれるらしいからこそ俺の苦行が継続している。血は出さないし、正直滅んで欲しい......
特等はまだ出た事がない。
一等、二等、三等も出てないけど......ハハッ。
当選確率は天文学的な数値らしいね。運? 上げてもなんも変わらなかったよ。レベルアップで得たSPを全ツッパしようとしたら悪魔さんにガチで止められた。解せぬ......
因みに俺が狙ってるのは15等という如何にも現実的に届きそうな等数。ブツの名は滅魔粉という、モノに宿る魔力を強制的に散らすというヤツ。生き物に飲ませてもそこそこ効く......けど、かなりの量を飲ませないと効果がないらしい。
とまぁ、こんなババア達レベルの悪魔にも必要なのかわかんない微妙なブツなんだけど、これがね......出ない。出なさすぎるのよ。
まだ気持ち的に余裕があった最初の一ヶ月で五分の一出たから余裕だろうと思っていた。
けど、それが地獄の入り口だった。
今何日目なんだろうね......
538。
今の数字、コレ。
あと128......
集まるのが先か、俺の精神が崩壊するのが先か......
どうにかして悪魔さんをぶち殺せないか考え始めている俺が居る。HAHAHA。
◆◆◆◆◆
後残り二個まで迫った。
だけどそこから全く出ない。
遠隔してんじゃないの? マジで......
『とても素晴らしいです。おめでとうございます』
そんな物欲センサーとの仁義なき戦いを他所に、俺は悪魔さんにダメージらしいダメージを与える事が出来るようになっていた。右腕から血を流す悪魔さんが驚きの表情と共に賞賛を送ってくる。賞賛は最早どうでもいいけど、中々成長してる感が無い中でのこれは素直に嬉しかった。
そして――
「!!!!!!!!」
出た!!!
正直使い途があるのかどうか怪しい、見た目も効果も微妙なモノが666個......漸く、集まった。
『おめでとうございます!!!』
「っっっしゃ!!!」
仰向けに寝転びながら、力の限り叫ぶ。
苦痛な日々から解放された喜びで、タクミの全身、全細胞が喜ん――
『それではゴミは始末しますね。お疲れ様でした』
無慈悲な一言がタクミを襲った。
「..................あ゛ぁん?」
その一言で俺の目の前が真っ赤に染まり、次に気が付いた時......俺は生首になって転がっていた。
─────────────────────────────
タクミ・ベアル
暴力と血の悪魔・中位→上位
職業:呪爆血術師
Lv:39→16
HP:100%
MP:100%
物攻:600→790(ステ振り+進化150)
物防:1
魔攻:600→750(進化150)
魔防:350
敏捷:500→550
幸運:100
残SP:512(レベルアップ分+進化200)
魔法適性:炎・冷・闇呪
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残62,844.3L
不死血鳥
悪魔化
魔法操作
血流操作
漏れ出す混沌
上位隠蔽
上位鑑定
上位収納
上位修復
空間認識
大殺戮
暴虐
四罪
風神那海
強状態異常耐性Lv6
壊拳術Lv10
鈍器マスタリー
上級棒術Lv6
小剣術Lv8
歩行・回避最適化
崩打
回収
極電雷耐性
強呪耐性Lv6
石化耐性Lv4
病気耐性Lv7
極熱傷耐性
耐神性Lv5
耐圧Lv9
耐衝撃Lv7
解体・解剖
嗅覚鈍化
強溶解耐性Lv4
洗濯Lv5
工作Lv5
アウナスの呪縛
錬血術
装備:
壊骨砕神
怨鎚・心壊
悪魔骨のヌンチャク
肉触手ナイフ
貫通寸鉄
再生装備シリーズ
圧縮鋼の短槍
迷宮鋼の棘針×2
ババアの加護ㅤ残高74000
──────────────────────────────
五章終了!
タクミ君に不憫な出来事が多い章でした。次章もお付き合いください。どうぞよろしくお願いします。
章終わりという事で、☆とかをぶん投げてもいいなと思った方はどうかよろしくお願いします。私めのモチベが上がる効果があります。
また、読んで下さっている皆様のお陰で続けてこれています。いつもありがとうございます!!
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