第172話 親御さん、登場

「不思議な衣服だよなぁこのシリーズは、本当になんなんだろ再生獣って......」


 掘り起こしたばかりの時は血肉でドロドロ、所々破れたりして悲惨な状態だったモノが劇的なビフォーアフターを遂げていて、今ではちょっと使用感のある古着くらいまでには戻っていた。


「......念の為修復掛けておこう」


 それからまた時間が過ぎて新品同様になった再生獣シリーズ、それをそのまま着るのはなんかちょっと嫌だったから修復を掛けておいた。

 ファンタジーあるあるのクリーンとか覚えたいなぁと思っている......嗚呼、ダンジョン生活が文化的になってしまった弊害が出ているわコレ。クソみたいな地上だったけど、清潔感とかだけは恋しい。


「さて、古今東西ドラゴン素材は捨てるところが無いとファンタジーでは有名だし、血肉以外で残った無事なモノは回収しなきゃ」


 上位になったお陰で物凄く拡がった収納領域にアマツ野郎を雑に詰めて込んでいく。最後に残ったのは、ドロップだと思う一つの珠。


「ドラゴンから出てきたボールかぁ......」


 黄金色と蒼と翠と黒の四色がグラデーションになってグルグル動いているすんげぇ綺麗な珠。断じて日本だけでなく世界各地でも通用するようなオレンジ色の珠の中に星が入っていたりするモノではない。


「どれどれ......」


 アレだけの馬鹿みたいな存在から出たドロップだから使えるモンだと信じたい。


〈暴風雷雨の崩珠

 一国を一夜で崩壊せしめた厄災を封じた珠

 砕けば封印が解かれ、再び世に厄災が降りかかる〉


「......おっふ」


 これはババアの店に次行った時に売り払おうと心に誓った。こんな厄いブツ、俺みたいな小物の手には余りすぎる。


「割に合わねぇ......」


 クソみたいなメに遭わされたけど、同じ龍タイプのモンスターから出たスキルの種は結果的には良いモノだった。けど今回はどうだろうか。ただの厄災アイテムだ。しかも使用後は多分だけどこの世にずっと残り続けるタイプの。


「とりあえず血の美味さとスキルやナイフ君の成長でトントンになった......と。これで無理矢理だけど納得しとく」


 まだアマツ血は残っているが貯蔵血液は1100ℓ程度まで回復して、ナイフ君はアマツ肉をたらふく喰った影響で触手をスタンガンみたいに扱えるようになっていた。触ったら結構な衝撃があったから普段使い余裕だと思う。


「全部吸いたいところだけど......こんな美味しいのは一度に全部飲んじゃダメだ。ダメだ、ダメだ......」


 欲望と理性の争いは辛うじて理性が勝ち、目算で大体100ℓ程の血ジュースは血で作った瓶に入れて収納に保存する事になった。


「次行くか」


 血がキマってるからかすっごい元気。というわけでそのまま次に行く。休みなんて違法なエナドリがキマった今の俺には必要ないのですよ。



 という訳でサクッと次の階層へと進んで歩いた。







『ヒヒヒッ』

『オ待チシテオリマシタ』


 アイエエエエ! ババア!?  ババアナンデ!?


 と、ちょっとバグるくらいビックリした。うん、ババアと悪魔さんが待っていた。何故?


『ヒッヒ、ボス部屋の後は妾じゃろ?』


 あー、確かに。


「じゃあ早速......これ買い取って。無料でいいから」


 厄ネタを即売却しようとした俺。

 こんなん持ってても困る事しかねーよ。地上が厄災で荒れるのは流石n......あ、別に特に全く問題無い、ような? 荒れ狂ったアマツ嵐が日本や世界各地をどうしようが......寧ろアリなんじゃ......


「あっ、やっぱ『ヒヒヒッ、ンな物騒なモン買い取れんわ』......っす」


 無しで......と続けようとしたけど遮られた。てかこの店何でも買ってくれるわけじゃなかったのか......


『妾や此奴でもそれは加工出来ぬ。それに扱いに失敗したら面倒な事になるからのう......というかよくそんなモン手に入れたのう』


 よく聞いてみれば、異世界で何かがあってコレをぶっ放したアマツ野郎はそのお陰で雷禍災龍の名前を襲名して、それから天使共にダンジョンに封印されたらしい。天使は全部死ねばいいと思ってる。

 そんでこの災厄の沙汰は悪魔の方が対処が得意だろうとの事で御鉢が回って来て、その対応がクソほど面倒だったらしい。


 共闘とかするんだ? って聞いたら、天使と悪魔の関係性は......元々は同一個体で絶対中立の世界のバランサーとして超上位なナニモノかに造られた存在だったらしい。

 んで長い時を過ごしてる内になんやかんやあって善性と悪性+自我が発露、でそれからまたなんやかんやあって別かたれて今に至る、と。だから世界がヤベー時には駆り出される事もあるらしい。だからこの珠は地球でなら使っていいけど他の世界では絶対使うなって結構ガチめに言われた。


 え? そのヤベー時って俺も駆り出されなきゃダメなの? となったけど、所謂オリジナル――祖となる存在だけが駆り出されるらしい。つまり、ババアはソレに当たる存在。


 んなアホな......と思いつつ、色々知って納得。

 で、ガッツリと一般人では知り得ない情報が出たついでに今の俺に立ち位置についても暴露された。


 ババアは言わずもがな、最強の一角。

 悪魔さんは直系の眷属でかなり偉い存在。でもババアからしたらまだまだ弱いらしい。

 俺は派生種。ただのクソザコナメクジ。それでもババア一派の末席に確り名が乗ってるっていう衝撃の事実。他の悪魔や天使連中に俺がちょっかい出された時はババアが出張って守ってやるから安心しろと頭を撫でられた。男前すぎるよ、ババア......


 まぁとりあえず、纏めるとこういう事だろ。


「わかった。コレは俺が責任を持って地球で解き放つよ!!」


『ヒヒヒッ』


 ババアは凄惨な笑顔でサムズアップをした。正解したようで一安心。


『ドーゾ』


 話が一段落した後はいつも通りの時間。

 あの後ババアにドギつくシメられたのか、全く感情が見えない悪魔さんがお茶を出してくれた。ガワは元通りだけど、ナカミが無い......なんか怖い。早めに元に戻って欲しい、切実に。


『ソレはほっといてよい』


 ババアはまだ悪魔さんを赦していないらしい。俺もババアは怒らせないようにしないと......そう心に誓った。




 それから暫くはお茶飲んでマッタリした。悪魔さんがヤバい以外は概ね平和な時間だった。


 アマツ野郎の素材は持ってきてたらローブにしてやるぞと言われたから丸ごと渡した。俺はどうせ使わないし、世紀末君の強化には使えないらしいし、余りはそっちで有効活用して欲しいって言っておいた。

 目的のブツは次に会う時には出来るらしい。流石ババアだ、仕事が早い。


『ほれ坊主』


 取り引きが終わった後、軽い感じでヒョイっと何かを投げたババアだったけど、ババアの軽くは凡人には決して軽くなかった。


「なんであんな感じで投げたのが俺の手を突き破ってくんだよ......」


『ヒヒヒッ、すまんのぅ』


 俺の血肉に濡れたモノを拾って確かめる。

 落ちていたモノ、それは射撃訓練なんかで使う感じの耳当てだった。


「まぁなんだ、ありがとう」


『ヒヒヒッ、きっと役に立つよ』


 そう言った次の瞬間にはババアは消えていた。買い物ターンは今回どうやら無かったらしい。


「唐突に消えるなよ......」


 買い物が出来なかった以外はとても濃い時間だった。

 謎解きはボス戦のあとで......的な、買い物と別の意味でのご褒美タイムだったと思っておく。


「今回でハッキリしたな、やっぱり善性方面のヤツらは俺の敵だって。ババアには敵でも味方でもない感じだけど俺は遭ったら倒す」


 必要無いモンは渡さないだろうから何となく装備しといた方がいいかなと、もらった耳当てを装着して次の階層に向かった。



 ◆◇原初ノ迷宮第百二層◇◆



「............ありがとうババア」


 降りた先は四方を火山に囲まれていて、マグマと足場の割合が7:3のクソエリア。因みに囲んでいる火山はずっと噴火? かなんかをしていて、その振動でずっと肌が震えている......ぶっちゃけ耳当てが無かったら秒で鼓膜ないなったになってた。


「んで、敵が......アレね......」


 火山だからアカム〇ルムみたいなのが来るんだろうなって思ってた。


 でも違った。



──────────────────────────────

 不死火鳥

 レベル:■■■

──────────────────────────────



 ――俺の親戚だった。


 息子さん? 娘さん? どっちか知らないけど、貴方のご子息は俺の血肉となって今も元気に再生してくれてます。どうもありがとうございました。


 物っ凄い殺意の篭った瞳で俺を睨んでくるんだけど、お前はファイアーですかね? そんな睨んでもこれ以上俺の物理防御力は下がらんぞボケェ!!


「多分なんかはよ来いって叫んでるっぽいけど聞こえねぇわ。さーせん。とりあえず俺は火耐性のローブを着て......後は敏捷に100......よし、準備オーケー」


 今回も世紀末君はお留守番、ナイフ君はいつも通り。俺もいつも通り。さぁ行こうか......


 ビンビンとクる殺意を一身に受けながら、不死火鳥の待つ場所に向かって進んだ。



─────────────────────────────


 タクミ・ベアル


 暴力と血の悪魔・中位


 職業:呪爆血術師


 Lv:0→21


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:500→600

 物防:1

 魔攻:480→600

 魔防:200→350

 敏捷:400→500

 幸運:100


 残SP:38→122→22


 魔法適性:炎・冷・闇呪


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残1128.3L

 不死血鳥

 悪魔化

 魔法操作

 血流操作

 漏れ出す混沌

 上位隠蔽

 上位鑑定

 上位収納

 上位修復

 空間認識

 大殺戮

 暴虐

 風神那海

 強状態異常耐性Lv5

 壊拳術Lv8

 鈍器マスタリー

 上級棒術Lv6

 小剣術Lv8

 歩行・回避最適化

 崩打

 回収

 極電雷耐性

 強呪耐性Lv6

 石化耐性Lv4

 病気耐性Lv6

 熱傷耐性・強Lv4

 耐神性Lv5

 耐圧Lv7

 解体・解剖

 嗅覚鈍化

 溶解耐性Lv10

 洗濯Lv5

 工作Lv4

 アウナスの呪縛

 錬血術


 装備:

 壊骨砕神

 怨鎚・心壊

 悪魔骨のヌンチャク

 肉触手ナイフ

 貫通寸鉄

 再生獣シリーズ

 圧縮鋼の短槍

 迷宮鋼の棘針×2

 魔法袋・小

 ババアの加護ㅤ残高74000


──────────────────────────────


真珱様からギフト頂きました。

ありがとうございます。本当にありがとうございます!


今年も後10日と少し、やっと冬になった感じがしたと思ったらもう年の瀬とか......

異常気象でヤバそうな地域にお住いの皆様、本当にお気をつけてお過ごしください。

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