第170話 災禍の調べ?

 空に浮かんで俺を見下ろすドラゴン。


 ファンタジータイプのずんぐりむっくりドラゴンじゃない、東洋タイプの日本昔ばなし風ドラゴン。


 結構な高度に居るのに、近くに見えるくらいには大きく、身体には紫電が絶えず纏わりついているように見える。


 ぶっちゃけ雷タイプのアマツマ〇ツチ。


 こんなん、どう倒せと? 無理だろ......


 別れ際のババアの言った『死ぬなよ』って、一つ階層を進んだ先にはこんなヤベーモンスターが居るからこそ出た言葉からだったんだねぇ。



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 雷禍災龍

 レベル:■■■

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 ほらぁー......上位になった鑑定でもこんな程度しか情報を見せてくれない相手である。本当に倒せる相手なのかよ。



 ――ビシッ



「マジかよ」


 まだ扉開けて中を除き込んだだけなのに、中を見て固まっていた俺の頬を掠める細い雷が飛んできた。頬からジュワジュワ音がしている。怖ァ......

 ある程度進まないと動かなかったり攻撃して来ないなんて設定はどこに行ったんですかね? 100階層までのローカルルールだったのかな?


「世紀末君、君は今回戦力外だわ」


 俺がそう言うと、悲しむでも抗議するでもなくすんなりとその言葉を受け入れて、そそくさと収納に入っていった。何となくアレを見て理解してたんだろう。


「......あ」


 避雷針として使うのも良かったかも。今からもう一回出して避雷針やってって言ったら怒るかな?


 ......ん? 止めとけ、と。はい。


 ナイフ君に注意されてしまった。何このナイフ怖い。読心術使えるのでしょうか? てか金砕棒君は避雷針の替わりにならないんですね。


「はぁ......ふぅぅぅぅぅぅぅぅ」


 ここ最近なのかな? 強そうなのと戦う前ずっと深く息を吐くのがルーティン化しているように思える。まぁ本当に落ち着くし、殺る気スイッチが入るから悪くはない。


「生き物なら、殺せるよな」


 すっげぇ強い相手でも生き物なら......戦い続けていれば勝機はある。疲労もすれば、血も流れる。生き物ならば。


「さぁ殺してやるぞ......化け物」


 金砕棒を握り締めて扉の中へ踏み込んだ。





「......ふぁれ?」


 何で俺は倒れている? 身体は......動かない。


 あ、そうだ。


 中に入ってあの高い所に居るアマツ野郎が光ったと思ったら、意識が飛んだんだった。


 雷って、あんなに早いのか......無理ゲーすぎるだろ。難易度の上がり方がオカシイんだよいつも!!


 本物の雷の方が距離がある分まだそっちのが避けられそう。実際どうなるか知らんけど。


「ア゛ッ......」


 そんな事を考えていると、体細胞が一瞬で沸騰する感覚と衝撃が来た。今回は意識を飛ばさなかったけど、これは何度も喰らいたくないと思えるなかなかのキツさだ。


 と言うか、身体を撃ち抜かれた後に雷特有の音が聞こえてきた。本当に音って遅れて聞こえてくるんだってのを身を以て体験する羽目になるとは......


「............」


 こんなんどないせェっちゅうねん!!


 雷を撃った後のアマツ野郎は、俺が死んでないとわかるやいなや速攻で追討ちをかけてきやがる。

 身体は言う事を聞かない。攻撃は光速。威力はお察しの通り。ゴムの身体にならないとダメかなぁ。





「ア゛ァ゛ッ」


「ア゛ガァ」


「ン゛ン゛ッ」


「ウボァ゛」


 凡そ30秒程の間隔で雷撃が飛んでくる。その度に口からは勝手に変な声が出ていく。恥ずかしい......一体何発の雷撃を喰らったことやら。


 まぁなんていうか、そのお陰でちょっとだけ雷に慣れてきたけど。多分雷耐性が生えてきてくれたのかと。


 それでもまだまだ動くのは厳しい。


 死んだフリ作戦をしてアマツ野郎が俺の死体の確認に来た所をガッと殺りたいなぁ......雷撃の馬鹿野郎の所為で勝手に声が出るからそれが出来ないのが辛い。


 いい加減このやられっぱなしからの脱却がしたい。

 したいんだけど......どうすればいい? 身体は動かないし、なんか目も見えないこの状況。どうすればいいの? 助けて! ババア!!


『キアァァァァァァァァァァァ』


 為す術なく雷撃だけを喰らう時間が過ぎる中、中々死なない俺に業を煮やしたアマツ野郎がなんか、今まで出した事の無い甲高い鳴き声を発した。


 やばい攻撃をして来るんだろうなぁ......




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


 絶え間なく注ぐ雷撃を永遠と呼ぶ事を許されるくらい永い時間晒されている。黙ってれば死んだ判定されて止まるだろうから、勝手に声が出ちゃう俺の喉が恨めしい。


 この無駄な時間をステータスチェックでもして乗り切りたいんだけど、目が何も映してくれないからどうしようもない。というかステータスなんてファンタジーなモノはさぁ、網膜を経由して表示しなくてもよくない? 脳内に直接表示して欲しい。切実に。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


 この痺れた脳味噌じゃあ、コレをどうにかする為の打開策は一つしか思い付かない。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


 そう、このまま雷撃を受け続ける事。

 どうにか出来るくらいまでの耐性を得るまで耐え続ければ、一応はアマツ野郎に対抗出来る様になるハズだ。まぁいつも通りの脳筋戦法ですね。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


 ああ、なんだろ? 何か気持ち良くなってきたわ。はははははは。




 ◆◆◆◆◆




 ――雷撃を喰らい続けて幾星霜。


 気が遠くなる様な永く、苦しい時間が過ぎた。



 電気信号による筋肉の痙攣や、反射で声が出るなんていう事故が無ければもっと楽だっただろう。


 因みに目が見えなかった原因は、雷が当たって眼球が沸騰して爆散していたから。なら耳は? っておもうじゃん。なんか目って結構再生に時間が掛かるらしくて、鼓膜とかはほぼノータイムで治っていくのよ。

 だから目が見えないのに声とか雷撃の音はよく聞こえていたって訳。


(ステータスチェック)


 なんで今はこうしてマッサージを受けているようなのんびりした時間を過ごしているかというと、なんと【極雷電耐性】を手に入れたからでした。


 血液貯蓄は500ℓを切った。畜生め。


 その代わり、もうコイツは怖くない。もう何も怖くない!!


「よっこいしょ」


 あれからずっと雷撃を撃ちまくっていたアマツ野郎は疲れた素振りを見せていない。何という巫山戯た存在だろうか。なんかもう俺にはヤツが電気ウナギに見えてきてる。


『キアァァァァァァァン』


 立ち上がった俺を見て、耳障りなムカつく声を出してくるアマツウナギ。


「さぁ第二ラウンッ......ドだ、この野郎」


 極耐性が付いて電気マッサージぐらいにしか思えなくなっても、雷を撃ち込まれれば衝撃がある。やっぱり変な声を出してしまう運命からは逃れられない。


「ムカつく、死ね。いつまでも変わらない吸引力的な攻撃とかしてこないよな?」


 ダイ〇ンみたいなのは無いと信じたい――そんな事を考えながら、大きく振りかぶって、ナイフ君をアマツウナギ目掛けてぶん投げた。




 ビュッと鋭い風切り音を立て、空気を切り裂きながら雷禍災龍目掛けて一直線に進む肉触手ナイフ。


 雷禍災龍は圧倒的優位な場所に居るにも関わらず、自らに向かって襲い来る飛来物を見て顔を顰めた。

 あんな吹けば飛ぶような粒の癖して、焼き尽くすつもりで放った絶対的な雷の力を長時間浴びせ続けたにも関わらず......死ぬことは無かった。剰え、何故か何事も無かったかのように立ち上がり反撃をしてきた。


 圧倒的強者である己の自尊心が傷付けられた。


 その心中を占めるのは、激しい怒り。


 おめでとう。雷禍災龍の中では吹けば飛ぶような粒だったモノタクミは、絶対に殺すべき怨敵に進化した。



『キアァァァァァァァア』



 大きな咆哮の後、ボス部屋の中は一変した。


 ただ雷が無秩序に降り頻るだけのものから、人類にとっての禍とも言える様相へと......




「ねぇ、お前って本当の名前はアマツ〇ガツチなんじゃないの? ねぇ......ゴブァッ」


 身を切るような暴風、肌を貫くような雨霰、それに加えて轟雷がその中で立ち竦む男の身を劈いた。





 ─────────────────────────────


 タクミ・ベアル


 暴力と血の悪魔・下位→中位


 職業:暴狂血→呪爆血術師


 Lv:0


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:450→500

 物防:1

 魔攻:430→480

 魔防:200

 敏捷:400

 幸運:100


 残SP:190→408


 魔法適性:炎・冷・闇呪


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残488.4L

 不死血鳥

 悪魔化

 魔法操作

 血流操作

 漏れ出す混沌

 上位隠蔽

 上位鑑定

 上位収納

 上位修復

 空間認識

 大殺戮

 暴虐

 風神那海

 強状態異常耐性Lv5

 壊拳術Lv8

 鈍器マスタリー

 上級棒術Lv6

 小剣術Lv8

 歩行・回避最適化

 崩打

 回収

 極電雷耐性

 強呪耐性Lv6

 石化耐性Lv4

 病気耐性Lv6

 熱傷耐性・強Lv4

 耐神性Lv5

 耐圧Lv7

 解体・解剖

 嗅覚鈍化

 溶解耐性Lv10

 洗濯Lv5

 工作Lv4

 アウナスの呪縛

 錬血術


 装備:

 壊骨砕神

 怨鎚・心壊

 悪魔骨のヌンチャク

 肉触手ナイフ

 貫通寸鉄

 再生獣シリーズ

 剛腕鬼の金棒

 圧縮鋼の短槍

 迷宮鋼の棘針×2

 魔法袋・小

 ババアの加護ㅤ残高74000


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