第168話 成長色々


 ほのぼの回です。お待たせしました!


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 あの後、なんやかんや事後処理というか後片付けをしていたらアナウンスがあって、俺は無事種族進化とジョブチェンジを果たした。


 暴力と血の悪魔・下位は暴力と血の悪魔・中位へ。

 SP+200と物攻&魔攻に50ずつ、後これは進化の影響なのか、積み重ねの結果かわからないけど殺戮が大殺戮になった。

 一気にステータスがブっ飛んだなって感想が一番に出てくるけど、上に行けば行くほど強さに磨きがかかる現実がとても楽しくてクセになるから文句は無い。努力さえすれば報われるってのがわかっていればこの先もモチベーションは尽きない。


 さて次に、暴血狂は呪爆血術士へ。

 呪と血と爆発に関する事が扱い易くなったらしい。正にザ・今の俺を体現したジョブになってくれてぶっちゃけすげぇ助かる。殴るとかもついてれば尚良かったけど、それは望みすぎか。


 それとクソ坊主をブッ殺して出たドロップの錫杖は手に持ったら肘くらいまで溶けた後に身体が弾かれてしまった。何度か拾えないかチャレンジしたんだけどもそれは全部が失敗に終わった。その過程で耐神性というスキルが生えてきた。

 とりあえず俺には必要な耐性だと思ったからサクッと上がる範囲のレベル4まで腕を犠牲にしながら頑張って上げた。レベル4じゃたかが知れてるだろうけど無いよりもあった方がいいに決まってる。


 案の定ここまで上げても持って歩けるには至らない糞こと錫杖。更に何故かわからないけどコイツと俺は存在の根本から相容れないらしくて収納にすら入れられるのを拒まれてしまった。これで肉塊を叩くとどうなるか検証したかったのに......鑑定も通らなかった。耐神性はここでレベル5になった。


 ナイフ君と世紀末君に持たせてみる案も出てきたけど俺と違って、触ったりしたら手遅れな事態になりそうだから廃案にした。錬血術も試したけど勿論ダメ。血が弾かれて万策尽きたからその場に投棄。


「本気出した神性のガチ拒否って怖ェ」


 クソ坊主はともかく腐っても神と名の付く品物は、神らしいと言うかとは水と油。スキルすら弾いて拒否ると......それがわかっただけでもマシか。


「何れ神も殺せるようになりたいなぁ......」


 力がある癖に助けを求めるモノがいても助けてくれない神とかデカイ宗教などクソオブクソである。本物も中には居るだろうけど、ほぼエセな神職共に金儲けの道具にされるだけ。もし本当にお前が居るんなら詐欺師集団共に神罰を落とせ。そしたら敬うか検討してやる。


「お待たせ、先に進もうか」


 今やれる事を全て終わらせ、だいぶ待たせた装備ーズに謝ってから俺へのご褒美エリアになるババアの店へと向かった。




 ◆◆◆◆◆




『ヒッヒッヒ』

『ようこそ』


 安心する胡散臭い笑い声と心から歓迎しているのがわかる声に迎えられた。


 何時からだろうか――自分以外の誰かに会うのが楽しみに思えてきたのは。

 何時からだろうか――自分以外の誰かに会って安心できるようになったのは。


「久しぶり」


 普通の人間のように、自然に笑って受け答えしたのは何時ぶりだろうか。


『おや......』

『あらぁ......』


 ほら、慣れない事をしたからババア達が唖然としてしまった。今のは完全に無意識だから許してくれ。


『ヒヒッ、随分と久しぶりじゃないか。まぁ座って茶でもお飲み』

『随分変わったお連れ様は......どうしましょう?』


 いつも通りのババアに戻って茶を勧めてくるババアと世紀末君の扱いに困る悪魔さん。ナイフ君はババアの店に入る前に鞘に収まって大人しくしていた。


「ありがたく頂くけど、なんでお茶請けが濡れ煎餅なんだよ......あ、この鎧は世紀末君です。主食は魔石。よろしく」


 いつの間にか用意されていた座布団、その先には緑茶と濡れ煎餅と大学芋が用意されていて戸惑ったタクミは、そのままの勢いで雑に世紀末君の紹介をしてから座布団に座る。その紹介に合わせて頭を下げた後、俺の後ろに体育座りをした血管蛮族鎧。


『なるほど、面白いモンを拾いおって。ふむ......そうだね、ちょっとアレを持ってきとくれ』


『かしこまりました』


 ババアが何か思いついたらしく悪魔さんに何やら指示を出し、悪魔さんは一礼してから席を外した。この後何が起こるのかな?


「......あ、濡れ煎餅おいしい」


 緑茶を啜ってから濡れ煎餅を一口。独特の湿気ったような食感に怯んでしまうが、味は抜群に美味しいと気付き二口、三口と食べ進めていく。するとあら不思議、湿気った食感に慣れてしまう。

 一枚を食べ終わる頃には虜になっていた。タクミの人生で初めての濡れ煎餅はお口に合った様だった。


『ヒヒヒヒヒ、最近のお気に入りさね』


 ババアも美味そうに煎餅を齧っている。緑茶と煎餅じゃなくて紅茶と洋菓子が似合う外見のクセして、俺よりも日本に侵食され詳しくなっている疑惑のババアがそこにはいた。


『お待たせしました。コチラをどうぞ』


 なんとも言えない気持ちになっていたら悪魔さんが瓢箪っぽい物を抱えて戻ってきた。流れるように座布団に正座すると俺の前に瓢箪を差し出す。


『この中のモノをその鎧と盾に塗ってやれば物理と魔法の両方に耐性が出来る大発明だ......と、気まぐれで昔助けてやったドワーフの鼻タレ小僧が言っていたヤツじゃ。妾達には使い途が無いからお主にやるわい』


「おぉふ......ありがとう」


 やっぱり異世界にはドワーフっているんだ......

 というか完成品に塗るだけで強化出来る品物って凄くない? 金砕棒に塗っても変わるのかな?


〈混沌合金液

 凡そこの世にある全ての希少鉱物を錬金術で溶かして作られた混沌の液体

 金属に塗布すれば物理、魔法共に強力な耐性が付き更に硬質化する

 人体には劇薬で触れれば鉱毒が恐ろしい勢いで回り、摂取すればほぼ即死する〉


 やべーモンだった。


「そ、その作ったドワーフはどうなったのかな?」


『作ってる時に出た煙で大量に死人が出た事で異端審問に掛けられておっ死んだよ。ソレは捕まえられる前、妾にヤツが制作物一式預けてったモノじゃわい――』


 もっと詳しくドワーフのこと聞くと、そのドワーフは鍛治方面の才能が無く、ヤケクソで錬金術に手を出したらまさかの才能有り、鍛治を全くせずに錬金術ヒャッハーしてたら『一族の恥さらし』として両手両足切り落として鉱山に捨てようってなったんだって。

 そこにたまたま『良い感じに負の感情が集まってるなー』と、当時はまだイケイケだったらしいババアが負のエネルギー目的でそこに降臨しぶち殺して回ってエネルギーを回収。

 絶望してたドワーフは対象外、それで生き残ったからまだ錬金術ヒャッハー出来る!! と恩人扱いされてなんやかんや長い付き合いになったと。


「ん? それじゃあなんで異端審問の時は助けなかったの?」


 この液体作って満足したからもう生きるのはいいってなったらしく、死に様を見届けたんだって。

 余りにも清々しく逝ったドワーフの潔さに感心してたら、遺体をさらに辱めてから腐るまで晒し続けるとか異端審問官共が言い出し、ソレが癪に障ったからぶち殺してきたと笑いながら語ってくれた。


『ふむ、懐かしい話をしたのぅ......お、そういえば坊主は鈍器使いじゃったな? ついでじゃ、彼奴のハンマーもやろう。鍛治の出来ない時にあったゴタゴタや、錬金術で遊んどる時にされた嫌がらせで溜まった鬱憤を程良く吸っておるから何やら面白いモノになっとるぞ』


 長々と語ったババアは温くなった緑茶を飲み干してから収納に手を突っ込んでハンマーを取り出して渡してきた。その横では悪魔さんが流れるようにババアの湯呑みにお代わりを注いでいる。二杯目はほうじ茶。俺にもお代わりが出てきた。


「あ、どーも......HAHAHA」


〈怨鎚・心壊こころこわし

 持ち主の中にある怨みが大きければ大きいほど、叩かれたモノの損壊が激しくなる

 対象が怨みの根源の場合は使用者が満足するまで不殺スキルが付与される〉


 思わずオーバーに笑ってしまうくらい、まさに俺の為だけに誂えたかのようなご都合武器を渡される。それとドワーフの歪み具合に何か親近感が湧いた。

 この鎚のフォルムは日本刀制作の時に使われるようなヤツ、これならば普段使いをしても苦労せずに扱えると思う。


「ババア!! マジでありがとう!! ほんっっとにありがとう!! コレは最高の武器だよ!!!!!」


『......落ち着け』


 完全に無意識にババアの両手を掴んでブンブン振る俺。それを呆れた目で見るクッソ冷静なババア。


『大丈夫ですよそのままで。オババ様は照れてるだけでグボァ』


 て、照れて......るようには全然見えない。

 その横で悪魔さんが血を吐いて倒れたけど......何だろう、さっきのは攻撃? 攻撃なんだよな? 恐ろしく早い何か......俺じゃなくても見逃しちゃうね。

 でもその行動自体は照れてると言われてもしょうがないよ。揶揄った代償がエグすぎるのは仕方ない......必要な犠牲だろう。南無阿弥陀仏。


『そろそろ離しな』


「ウッス」


 聞こえてきた冷たい声で強引に現実へ戻される。

 ちょっと......いや、かなりゾクッときた。タマはヒュンとした。

 肉塊はまだしも、やっぱりババアには勝てそうにないわ。挑むつもりないから気楽に言えるんだけど。


『ちょっと用事が出来たから外すわい。坊主は商品でも見て待ってな』


「......ッス」


 なんのようじなんだろうなーと思う俺を置いて、悪魔さんの首根っこを掴んだババアがそう言い残して消えた。うん、俺は大人しく物色でもしてよう。あ、忘れないうちにやっとこ......


「世紀末君、お化粧の時間だよ」


 店内で毒を撒くやるのは少し気が引けたからボス部屋に戻って鎧と盾と金砕棒に劇物を塗った。その結果鎧と盾と金砕棒は劇的に硬度を増した。具体的に言うと物防と魔防+250と物理と魔法耐性も加わるらしい。こんなやベーモンを作るだけ作って満足して逝ったドワーフにヒいた。


 これでヒヨコからの被害も相当軽減されるし、金砕棒の威力も上がるから嬉しいから喜ぶ俺は現金なヤツでした。感謝はするけど評価は変えんぞドワーフ。

 後、その過程で俺の状態異常耐性さんに強が付いてそのレベルがサクッと5まであがった。耐圧も何故かレベル7になってた。

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