第166話 ご褒美カタログと錬血術

 カタログの表紙をペラっと捲った。


『アイテム 3P~』

『武器 6P~』

『防具 7P~』

『魔法 8P~』

『スキル 9P~』

『出前 10P~』

『その他 11P~』


 無地の表紙を捲ると何も書かれていない真っ白いページがあり、その横に目次があった。一目見た時にPはポイント制なのかと思ったけど、普通にページだった。人だけじゃないモノも疑ってかかるようになったなぁ俺......と、地味に凹む。


「アイテムは......いらないな」


 回復系、蘇生系、ドーピング系、状態異常回復系などなど、使い切り系しかなかったし俺の生態からだと全く使い所がなかった。もし外に出たに時必要な場面が例えあったとしても、ソレを俺が誰かに使う事は絶対にない。勿論俺の仲間らしきモノには必要無いから持っておくメリットが全くない。


「武器は......武器もいらないな」


 刃物のラインナップがとても充実していた。申し訳程度のその他も、愛棒の金砕棒には勝てない。


「防具も......うん、いらない」


 再生獣シリーズがあれば続きは見なくてもよかったけど、残念ながらなかった。今の所ババアの店の方が魅力的な商品があるんだけど......ちょっとご褒美さんでしょあなた、本気出してくれませんかね?


「まぁここからが本番だよなぁ」


 魔法、スキルが本命だから......


「マジかよ」


 魔法は......細かい系統がたくさんあるらしくて、色々書かれていたけど......


「重力や時間、空間といったチートの代名詞的なのは無いかぁ......」


 炎色反応みたいに赤火、青火、緑火......と細かく分けてないでもっと有用なのを並べろよとか思ったり。温水には心揺れたけど。まぁ期待するだけ無駄か......


「気を取り直して......」


 大本命のスキルリスト。だけど......


「ウォォォォォ!!」


 声が出た。出ちゃった。


『上位鑑定』

『上位収納』

『上位修復』


 喉からヘカトンケイルが出てくるくらい欲しかったこの三つがあったのだ。でも選べるのは一つだけ。

 この時点で残りのスキルや出前、その他をチラ見して他のに心を揺さぶられるなんて愚は犯さない。


「修復だよなぁ......」


 愛用品や消耗品がブッ壊れたりして失くなるのは辛い。最初期ならともかく、今になって服とかを失うのには耐えられない。

 それに今は便利な道具も増えたし、これが一番だよなぁ......


「修復ポチー」


 面倒な三段階の確認作業を経て、無事に上位修復のスキルブックを手に入れた。お馴染みの不気味な取得演出も終わらせ、ステータスチェックでも上位修復があるのか確認。


「っっしゃ!!」


 思わずガッツポーズ。速攻で普段よく使う物全てとナイフ君&世紀末君に修復を掛けた。

 ボロボロのタオルを破ってから修復してみたり、どれくらい効果があるのか調べてみたけど......


「上位やべーな」


 流石に真っ二つや皮一枚繋がってるようなギリギリはダメだったけど、腹に腕突っ込まれたくらいの穴空きは普通に修復された。

 世紀末君の歪みや動きのぎこちなさも解消され、ナイフ君も何やら調子が良くなったらしく喜んでいる。


 ――因みに俺の身体に傷を付けてから修復掛けても効果はなかった。血の再生の方がスキル的に強いらしい。ナマモノには効果無いのかもしれないけど。


「......周回するかぁ」


 五周でコレだからとりあえず後十周、二セットだな。錬血術を確かめてからまた行こう。目標もあるし、レベルアップも出来るとわかればモチベーションは爆上がりしているから先程までと違って全く苦に思わない。


「錬血術......とりあえず血を出してみればいいのかな?」


錬血術れんちじゅつ:血を用いて物質を錬成したりする禁術

 錬成した物質は血に戻せない〉


「......上位鑑定にしときゃよかったかなぁ」


 あの三種類はどれもが必須すぎて優劣が付けられないからその時々で優先するのが変わる。さっきまでは修復がマストだった。


「まぁいいや、レッツトライ」


 息をするようにナイフ君で手首を掻っ切って血を出すと、特に何も思い付いていなかった事に気付いて狼狽える。


「やべぇ......何も考えてなかったわ、どうしよ」


 放置しておけば治るけど流れ出た血と治すのに使った血は戻らない。タクミが慌ててどうにかしようとした結果――


「ナイフ君を血で強化!」


 という、手元にたまたまあった物にやっとけの精神。正に行き当たりばったり且つふわっとした事を口にしたのだった。


 ――だが、流石に大量の経験値でスクスク育った高級品は......タクミの予想以上に優秀だった。


「ふぁっ!?!?」


 急に流れ出た血が意志を持ち、蛇のように蜷局を巻きだす。少しの間そのままで考えている風だったが、急に無茶なオーダーに応える術を思い付いたらしく、血の蛇はナイフに襲いかかった。

 リストカットした手首の傷は塞がっておらず、血は蛇に供給され続けていた。


「うわぁ......」


 ソレにビクッとしたナイフ君だったが俺の出したオーダーを思い出したのか、落ち着いて血の蛇を受け入れていた。

 血の蛇はナイフ君を絞め殺すぞとばかりに全身をナイフ君に巻き付けて、そのままギチギチと音を立てながらその身を絞っていく。何故液体が巻き付いただけでそんな音がするのかは謎だった。




 ......そのまま十分程度、何も起きずに時間だけが過ぎていく。血は50ℓを越えたくらいで止まり、傷もちゃんと塞がっていた。


 タクミは変わり映えのしない光景に飽きたらしく、冷属性と闇呪属性の魔法を出して遊んでいた。世紀末君はその間、盾を持ってシールドバッシュの練習をしていた。そんな時――


 パシャッという音が唐突に響き、血の蛇が弾けた。


「うぉっ」


 遊びの果てに何故か実体を伴った冷たい呪いの塊が出来て、ソレを捏ねてパチンコ玉程度の大きさに、だが歪な形に作っていった。かなり集中していたので急に鳴った音に驚く、無様な姿を晒してしまった。


「......あ、あらー、あー、カッコよくなったじゃん」


 何となくドヤッてるように見えるナイフ君に感想を述べてみた。刀身と触手には血の色をした線が、フェ〇トの魔術回路みたいに浮き上がっている。

 装飾が増えたというよりも血管が浮き出たように見えてなんか生々しくてグロい。でもなんかナイフ君は気に入ってるようだから褒めておいた。


「......ん? あー、わかった。やるよ」


 上手く表情を作れずにいる俺の背中を突いて何かをアピールしてくる世紀末君がそこにいた。蛮族鎧にも血管を浮かべて欲しいんだね、わかったわかった。


「......血の量はやっぱ増えるよなぁ」


 300ℓ弱の血が抜かれて血の大蛇になり、鎧をギチギチに締め付けていった。またナイフ君と同じように時間が掛かるからさっきのパチンコ玉作りを再開した。



 大量の歪なパチンコ玉を作り終えた。

 世紀末君の血管作りはその間にとうに終わっていて、ナイフ君と血管自慢大会をしている。アイツらの琴線がよくわからない。俺が言えるのはただでさえ厳つい鎧に厳つさが増しただけにしか見えない。


「後はコレを......っと」


 薄く伸ばした呪いでパチンコ玉を包み、形を砲弾のように整えていく。結構な時間が経っていても消えていない事から、きっと時間制限は無いんだろう。魔法ってよくわからない。


 作った呪いの砲弾は五つ。

 一つはバトルロイヤルで使う予定。効果次第では時間を作って量産する。準備は整った、さぁ行こう。


「ごめんね、もう少しこの階層に残るから......暇なら収納しとくけど、どうする?」


 動く鎧も参戦できるけど攻撃力が無い。俺が入っても無意味だし、脆くなりそうで怖いからどうしたいか聞いてみた。収納で大人しくしてると返事を貰ったから収納に、俺はナイフ君を装備してバトルロイヤルに向かった。





 一周目、ヒヨコ。


 二周目、砲弾。


 三周目、ナイフ君無双。


 四周目、錬血術の優秀っぷりを堪能。


 五周目、MP回復したからヒヨコ。




 というワケでワンセットが終了した。レベルは24上がった。


「いやー......簡単だったなぁ。錬血術やべぇ」


 対多数が楽になりすぎた。ナイフ君が居るともっと有用でヤバい。

 流石に体内の血はどうにもならなかったけど、ある程度の大きさの傷を付けて、ある程度の量の流血をさせれば【血流操作】と【錬血術】のコンボで傷の周辺に剣みたいなモンを作れてしまった。

 どっちかだけを持っててもダメだったと思う。両方があってこそのコレ。やべぇ。

 俺が流した血も武器になる。俺の血ならば視認できる程度の距離なら操れた。


 あと金砕棒がドーピングする武器に進化した。


 な......なにを言っているのかわからねーと思うが、俺もどうなったのかわからないんだ......


〈血飲壊骨砕神

 悪魔総裁の因子によって変質した金砕棒

 神性及び人への強い特攻、を持つ

 装備者が固定されており、装備者が死ぬと自壊する

 殺した神性及び人の血で自動修復と微強化、装備者の血を与えれば強化、短時間の変化が可能〉


 とりあえず強くなった。けど固定は要らんよ......



 それからもう一周してレベルが19上がり、鑑定と収納は無事に上位になった。

 温水魔法も取りたなってくてもう一周......しようとしたら殿堂入りと言われ、王者挑戦か1VS1のトーナメントから選んでくださいと言われて諦めた。アナウンスさんはどれか一つで優勝すれば階段の通行許可が降りると話してくれたから次に進もうと思う。




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 タクミ・ベアル


 暴力と血の悪魔・下位


 職業:暴狂血


 Lv:51→94


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:450

 物防:1

 魔攻:430

 魔防:200

 敏捷:400

 幸運:100


 残SP:61→190


 魔法適性:炎・冷・闇呪


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残1409.3L

 不死血鳥

 悪魔化

 魔法操作

 血流操作

 漏れ出す混沌

 上位隠蔽

 上位鑑定

 上位収納

 上位修復

 空間認識

 殺戮

 暴虐

 風神那海

 状態異常耐性Lv10

 壊拳術Lv8

 鈍器マスタリー

 上級棒術Lv6

 小剣術Lv8

 歩行・回避最適化

 崩打

 強呪耐性Lv6

 石化耐性Lv4

 病気耐性Lv6

 熱傷耐性・強Lv4

 耐圧Lv6

 解体・解剖

 嗅覚鈍化

 溶解耐性Lv10

 洗濯Lv5

 工作Lv4

 アウナスの呪縛

 錬血術


 装備:

 壊骨砕神

 悪魔骨のヌンチャク

 肉触手ナイフ

 貫通寸鉄

 火山鼠革ローブ

 再生獣希少種革のスラックス

 再生獣革のブーツ

 聖銀の手甲

 剛腕鬼の金棒

 圧縮鋼の短槍

 迷宮鋼の棘針×2

 魔法袋・小

 ババアの加護ㅤ残高74000


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