第165話 収穫

 戦場に通された俺は、ゆっくり周囲を見渡した。


 こんなダンジョンの奥地で開催される闘技会にどんなヤツらが出場しているのか気になるじゃん?  ここに来るまで一度も遭ってないから不思議でたまらない。


 何故......人間らしいモノが1000体も居るのか。


 ......いやほんとにこんな場所に何故人が? それも全部外人の。


 その理由は鑑定で明らかになった。



──────────────────────────────

 マンサッファーグールロード

 レベル:177

 殺した人間の皮を被るグール

 火を近付けると激怒する

──────────────────────────────


──────────────────────────────

 ドミネートスラグ

 レベル:169

 死体に入り込んで神経に成り代わるナメクジ

 ナメクジ体の時は雑魚

──────────────────────────────


──────────────────────────────

 メタモルクレイドール

 レベル:171

 死体を包み込んで全てを奪う泥人形

 乾燥に非常に弱い

──────────────────────────────


──────────────────────────────

 カニバルワーム

 レベル:136

 死体の脳に寄生するワームのようなナニカ

 未寄生時は雑魚

──────────────────────────────


──────────────────────────────

 ボディマリオネット

 レベル:144

 死体に入り込むゴーストの一種

 太陽光に弱い

──────────────────────────────



 おわかりいただけただろうか......

 コイツらは大体が、多分だけどこのダンジョンで死んだヤツらに寄生又は乗っ取りしたモンスター共。


 その他にちらほら魔人的なのや中位くらいの悪魔っぽいのも居たりする。それで決闘場を壺に見立てて蠱毒みたいのをやっているんだろうね。

 死体は使い回しらしく、継ぎ接ぎだらけで見た目がホラーだ。持っててよかった嗅覚鈍化......このスキルがあるからやや臭いなで済んでるけど、もしも持ってなかったら嘔吐いてバトルロイヤルどころじゃなかったと思う。


「でもまぁ嘔吐いてても大丈夫だろうけど......それよりもコレら全員を前にしても約束された200の経験値にしか見えないのって壊れてるよね俺」


 かなりヤられているなぁと苦笑いしながら開始を待つ俺は、こっそり魔法を準備している。

 ナイフ君は呆れた雰囲気を出していて、世紀末君は観客席の一番後ろへと移動していた。


「馬鹿正直に付き合う必要はない。残ったのと殴り合えばいい」


 殺気立つ周囲に流されず、開始を待つ。


 俺が居る位置は闘技場の中央からやや左寄りな位置。采配から既にヤレと言われているようなモン......だと、俺は感じた。だからヤる。


 俺への文句は運営に言え。クレームは受け付けないよ。


『バトルロイヤル1000、開始まで5......』


 アナウンスの唐突さには慣れているからびっくりしなかったけど、もう少し気分を盛り上げる煽りなんかはあってもよくない? 各自、開始と共に動き出すのは見て取れた。場が殺る気に満ちていて心地良い。


 カウントダウンが終わるのを待ち――カウントが0になった瞬間にヒヨコを出した。


 俺はヒヨコを出した直後に闘技場の右側へ猛ダッシュ......しようとしていたのを止め、大ジャンプで一気に端の方まで跳んだ。後は......お察し。


 轟音と衝撃波、熱のお馴染み三重苦が離れた俺にも襲いかかる。耐性付きで何度も喰らってる俺でもかなり身体にクるソレらだけど、殲滅力はピカイチ。かなりの信頼度の爆発。

 爆発に気を取られる人の皮を被ったモンスター共を盾にしてその影でやり過ごすと、数拍遅れてこんがり焦げた肉片の雨が降ってくる。


 人型相手だとかなりの地獄絵図になるなー&汚い花火だなーと言う在り来りな感想を抱きながら一気に駆け出し、運良く耐えたモンスターやギリギリ逃れたモンスターを潰して回る。


「......楽しいなぁ」


 レベルはかなり高い相手だし、決して油断してはならない相手でもあるけれど、金砕棒に常備されている人特効が人の皮を被ったモンスター相手にも乗るのか、苦もなく潰して回れる。ノンストレスすぎてココ最近失われていた感情が戻ってきている。そんな気がした。


『グヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ』


 どっからそんな音を出してるのかツッコミを入れたくなる声を出して襲い来るなんかのゾンビの爪を躱して側頭部目掛けて金砕棒を振り抜く。すると綺麗に弾け飛んで真っ黒な血を撒き散らして死んだ。


「アハハッ」


 大虐殺を行った俺を脅威認定したらしく、生き残りアンデッド共が俺に群がってくる。......脅威認定じゃなくて生身の生き物を乗っ取りたいだけかもしれないけど......


 魔法や肉体言語、奇襲、コンビネーション。ヤツらはあらゆる手を使って攻撃を当てようとするが、俺にとって今更その程度の攻撃は苦にならず、避けてはカウンターを当て続ける。


「残念......もう終わりか」


 久しぶりに乱戦の楽しさを思い出して気分がノッてきたが残りは悪魔っぽいのが二体だけに。効率を求めすぎてヒヨコの威力を上げすぎた事を反省する。


『『『『UBOAAAAAAAAAAAA』』』』


「うるせぇ!!!」


 ちょっと気を抜いた俺を隙と見た生き残り悪魔の一匹は十数体の分身を出して攻め込んできた。生き残りもう一体は......なんか死体の前でなんかをしているけど距離が遠いし分身悪魔が邪魔で、厄介そうだからと思ってもソレを邪魔しにいけない。


「全部殴り殺せばいつかは本体に当たるだろっ!!」


 残り二体が十数匹に増えた事を喜ぶとしよう、と意識を切り替えて分身悪魔の方へ踏み込んで殴った。

 分身なんて幻影だろうからいつかは当たるなと思っていたが......グシャリ――と肉を殴った確かな手応えを感じた。


「......アハァ♪ ......あっ、やべ」


 気持ちのいい手応えで恍惚としたタクミだったが、本体を殴り殺してしまったと大いに焦った。眼下には袈裟懸けに遠慮なく殴りつけた所為で肩から腹ぐらいまで金砕棒に潰された分身悪魔の死体。


「......ついカッとなってやってしまった」


 後一体か......と悲しみに暮れていると、死体が消えていく。だが、分身悪魔の生み出した分身は残っていた。という事は......


「マジかよ!! 実体のある分身とか最高じゃないか!!」


 本体にさえ当たらなければ殴りまくれるじゃないか。クールタイムがあるかわからないけど、上手くやれば延々と殴れる幸せに顔が緩む。こうなると本体は危険を冒さない位置で戦うヤツと見ていい。


「フヒッ」


 気持ち悪い笑いが漏れるのは許してほしい。そこ、悪魔の癖にヒくな!!


 とりあえず本体以外かかってこいや!!!







 残念なお知らせがある。


 あの分身悪魔、中途半端な位置に本体を置いていた。


 一匹殴り殺した後、喜び勇んで殴り殺していたら四匹目で本体が死んだらしい。肩透かしすぎて悲しい。


 よし、次!! と思って次に目を向けたら分身共が消滅していった時の気持ちがわかる?


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ......」


 残った一匹に期待だよ。本当につっかえねぇ。俺の運が天邪鬼すぎる所為かもしれないけど、これに関しては分身悪魔が馬鹿だと思う......あと十回位殺してやりたい......


「何してるかわかんねぇけど隙だらけだなぁ」


 テンションが急激に冷めた影響か全部がどうでもよくなった俺は、なんか儀式っぽいのをしている悪魔の背後に音を立てず近付いて、そのまま金砕棒を振り下ろして殺した。


『バトルロイヤル 1000、優勝おめでとうございます』

『優勝者には報酬が与えられます』

『三つの内、一つをお選びください』

『1、王者への挑戦権の獲得』

『2、景品カタログから一品』

『3、バトルロイヤル 1000を難易度上げてもう一度』


 おぉなかなかいいじゃん、まぁ選ぶのは実質一択なんだけど......


「カタログでどんなのが選べるのかって知ってから決められるのか?」


『カタログは選択後に手元に現れます』


 なるほど。


「3で」


 先に見られないなら今は選ぶ必要がない。


 さ、バトルロイヤル 1000を後四セット。終わりが見える戦いってモチベ上がるね、頑張ろう。


 収穫祭をやる人の気持ちがわかった気がする。収穫まで本当に後少し......ド派手に殺るぜ。






 レベルが大体20上がった1000匹との再戦し、無事に殲滅。

 その次は更に大体レベルが20ずつ上がっていたモンスターと戦っていき、MPが回復していた最終セットはヒヨコでド派手な花火を上げて、俺はスキルの種から始まった地獄を終わらせた。


『レベルが3上がりました』


 ちゃんと超えた分で俺のレベルアップアナウンスが聞こえてきて、長く苦しい肥料の時間が終わった。これで本当に終わるか半信半疑だったのは仕方ないだろうけど、本当に心の底から安堵する。


『バトルロイヤル 1000、優勝おめで』

「2で」


 アナウンスは遮った。もういい、俺は疲れたんだ。

 カタログを受け取った後は控え室に戻って畳の上でゴロゴロしながらカタログを見てダラけにダラけた。スキルは......ちゃんと生えてた。この苦労に見合うスキルなのかは名前を見ただけじゃ判別できないけど期待外れな気がしてならない。確認は休んだ後でやる。今はもう......何もしたくない。


 とにかく、もうこういうのはお断りだ。


 絶対に......絶対にだ!!




 ─────────────────────────────


 タクミ・ベアル


 暴力と血の悪魔・下位


 職業:暴狂血


 Lv:48→51


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:450

 物防:1

 魔攻:430

 魔防:200

 敏捷:400

 幸運:100


 残SP:52→61


 魔法適性:炎・冷・闇呪


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残1617.2L

 不死血鳥

 悪魔化

 魔法操作

 血流操作

 漏れ出す混沌

 上位隠蔽

 中位鑑定

 中位収納

 中位修復

 空間認識

 殺戮

 暴虐

 風神那海

 状態異常耐性Lv10

 壊拳術Lv8

 鈍器マスタリー

 上級棒術Lv6

 小剣術Lv7

 歩行・回避最適化

 崩打

 強呪耐性Lv6

 石化耐性Lv4

 病気耐性Lv6

 熱傷耐性・強Lv3

 耐圧Lv6

 解体・解剖

 嗅覚鈍化

 溶解耐性Lv10

 洗濯Lv5

 工作Lv3

 アウナスの呪縛

 錬血術


 装備:

 壊骨砕神

 悪魔骨のヌンチャク

 肉触手ナイフ

 貫通寸鉄

 火山鼠革ローブ

 再生獣希少種革のスラックス

 再生獣革のブーツ

 聖銀の手甲

 剛腕鬼の金棒

 圧縮鋼の短槍

 迷宮鋼の棘針×2

 魔法袋・小

 ババアの加護ㅤ残高74000


──────────────────────────────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る