第162話 種の成育/駆除部隊

 少しだけでも見栄えを良くしようと思い立った行動から自分の姿を認識するとは思わなかったけど、結果として戦力増強と現状把握が出来たのは良かった。

 因みに目を上位隠蔽してみたら眼球が見えなくなったから変装には役立たないと理解した。隠すとか見えなくする事に特化してやがった。


 それはさておき、さぁ殺りまくろうかと息巻いて敵のいる部屋を前に装備などの最終チェックをしていて気付いた。ナイフ君の素材がちょっと変化している事を。


「一刻も早くモンスターをぶち殺して回りたい所だけどちょっといい? なんで刀身が岩鱗っぽい材質に変わってんの?」


 流石に見過ごせなかったから直球で聞いてみた。


『食べた龍の因子が反映された』


 なるほど......


 詳細を聞いてみると――


 ・格上の肉を喰らうと相性が良ければ因子を取り込んで強化されるらしい

 ・相性次第&それなりの量が必要だからあんまり発動する機会は無いと思う

 ・美味く感じる程相性が良いらしい

 ・触手も強化されたが撓りに影響は無い


「なるほどぉ......今後あのクソ重硬龍みたいなのが出てきても楽が出来そうだねぇ」


 クソ硬いモンスターが出てきても今後は有効打を程よく与えられるようになったと思えばいいか。あとデカいヤツは積極的に食わせていこう。


「......うーん、美味ければ美味い程相性が良いってんなら俺にもなんか適応されそうかもな、吸血鬼の心臓から。毎日忘れずに飲まなきゃ」


 俺の強化にも役に立ちそうな情報ありがとう。


「待たせてごめんね、じゃあ殺ろうか」


 殺る気満々なナイフ君と世紀末君に謝ってから部屋の中に踏み込んだ。




 中に居たのは15匹の蝶型モンスターと木のモンスターが一匹。

 木はお馴染みのトレント系、蝶型は蛾か蝶かの判断は目視で判別は無理だった。綺麗だから蝶だとは思うけど......


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 ローズホワイトモス

 レベル117

 非常に美しい蛾

 テトロドトキシンと似た毒、人程度なら余裕で溶かしながら侵食していく毒、幻覚症状を持つ毒性を持ち、用途によって使い分ける

 トレントと共生している

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 蛾かぁ......よく見たら翅に薄ら毛が生えてたわ......

 テトロドトキシンって聞いた事あるけど、どんな症状が出るかわからない。溶かして侵食ってのもヤバそう。


「とりあえず安全を考えるならトレントが俺で装備ーズに蛾を任せればいいんだけど......」


 経験値効率は俺が倒す方が多く貰える気がするからやっぱり俺がやるべきだろう。耐性強化にも繋がると思うし。ダメならダメでガンギマればいい。


「好きに動けと言いたいけど、木は任せた!!」


 今は数を狩りたいから木の相手は丸投げして、俺は蛾の群れに向かって走った。世紀末君は大盾にナイフ君をぶつけてやる気アピールをしている。


「ピーフォ」

「ピフォー」

「ピフィー」


 俺の接近に気付いた蛾達は一斉に警戒モードに入った。まだ気付いていない蛾達も居たが、鳴き声で要警戒と伝えたらしく見事全員警戒態勢に。

 蛾って鳴くんだ......と驚いた。それも絶妙にこっちの気が抜ける鳴き声だが憎たらしい......


「シャアッッ!!」


 驚かされた腹いせに前衛の一匹に金砕棒の突きを現状出せる最速でぶち込んだ。

 あまり俊敏性は無く、あっさりと突きが決まり蛾Aは爆散して死んだ。


【スキルの種 1/???】


「お!?」


 どうせ0のままだろとチェックしてみたらまさかの1という数値に愕然としてしまった。これまでの経験値は全滅じゃなきゃ入らない鬼畜仕様だったけど、倒せば確り経験値が入るのか......素晴らしい。


 俺のレベルは上がる気配はやっぱ無いけど!! 本来はこれが健全なレベルシステムだよな!!

 朗報だけど何か悔しいなクソが。後の懸念は戦闘が終わらないとわからないから早く終わらせよう。


「......あの粉は絶対違法なヤツだよなぁ。吸引したらゼッタイダメなのはわかるけど、肌に当たってもキマったら笑えない」


 さぁ続きを......と意気込んでみたものの、ステータスを見る為に目をちょっと離した僅かな隙に蛾の周囲は真っ白になっていた。まだまだヤクのストックはあるらしく、残った蛾は翅をファッサファッサバッサバッサ忙しなく動かしていた。


「痛ッ......マジか............」


 翅の動きで舞った鱗粉が俺の腕に触れた。

 間髪入れずに襲い来る激痛、続いて肌が爛れてジュクジュクになっていた。あの粉、ヤバい。


「............男は黙って、粉塵爆発」


 突っ込むのはヤバい。想定の何倍もヤバい。正直笑えない。

 毒を受けた箇所は治らないで進行が進む。だから慌てずに患部を削ぎ落としてアレから急いで距離を取る。


 置き土産として炎の玉を放り投げて。






 正直、引火するか少しでも鱗粉が薄れれば儲けものと思ってやった。


 それがどうだろうか......


 燃えカスになった元蛾と現在進行形で燃えながら踊り狂っているトレント。それとあの程度の火ではビクともしない装備ーズ。


 ヒヨコには到底及ばない爆発だったけど、虫タイプは火に弱すぎたらしいね。木もまぁ水分がそこそこあるからギリギリ耐えられているけど時間の問題。


【スキルの種 48/???】


 あれ? 思っていたよりも数値が増えている。蛾は1じゃなかったのかな?


 ......まぁいいや、トレントが死ぬまで待とう。それでだいたい解る。あ、そうだ鑑定しとこう。


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 グランドイヴィルトレント

 レベル:121

 他種族に枝や葉を巣として提供しながら外敵から他種族を守る

 だが実際は住み着いた他種族から毎日ジワジワとエネルギードレインをする狡猾なモンスター

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 OH......なんとなくわかっちゃった。

 多分モンスターを一匹倒す毎にスキルの種に経験値が1貯まっていくんだろう。蛾15匹とトレントに住み着いていた33匹の何か。この後でトレントが死ねば数は49になる......はず。


 というかハチ共の居た階層や憎たらしいヒルが居た階層に行ければ多分すぐ経験値が貯まる気がする。一定以上の強さが無ければダメなんて事が無ければ。


「ごめんねー巻き込んで。でもあの毒がやばかったからつい......」


 炎の中から戻ってきたナイフ君と世紀末君は少しだけ不機嫌そうだ。次はちゃんと任せるからと宥めてからゆっくりと絶命を待つ。

 その間に狩り残しが無いかを空間認識で探ったがトレントだけしか感じられなかった。そして――


『GIIIIIIIIIIIII』


 最後の一体の生命が尽きた。



 ......尽きたね。


 ............尽きた。うん。





「経験値入んねぇのかよ!!!!」


 待てども待てどもアナウンスは入らなかった。普段と経験値の入り方が違ったから少しは期待したのに。


【スキルの種 49/???】


 こっちは想定通り。という事は......


 ・モンスターを一体倒せばその瞬間にスキルの種へ1の経験値が入る

 ・俺には経験値が入らない

 ・モンスターの大小強弱関係なしに1の経験値と予想できる


「......最ッ悪だ」


 思わず地面に膝をついて項垂れてしまうタクミ。

 想定していた中での最悪では無かったけど、考え得る範囲内で一番最悪に近い結果が齎された。最後の確認事項がまだだったけれど、レベルアップ厨なタクミにこの事実は受け入れ辛かった。


「あのクソ重龍で結構なレベルアップをしてなかったらガチで立ち直れなかったなぁ......」


 何にせよ、こうなってしまったら受け入れるしかない。ナイフ君に聞いたけど最終的にこうすると選んだのは自分だ。致し方ない。


「この先にある部屋が虫や小型モンスターがワラワラ湧くフロアだと祈るしかないな」


 テンションはブチ下がった。それでも進化するまで我慢して殺っていくしかない。心に全力で金砕棒を振るうくらいの気概で立ち上がり、先に進んで歩き出した。




 ◆◆◆◆◆




 辺りが闇に包まれた深夜一時、夜闇に紛れて動き出す複数の影があった。


「しっかし相手は所詮虫だろ? 些か過剰戦力過ぎじゃないのかねコレは」


「喧しい。お前は黙って与えられた任務を遂行する事だけを考えろ」


 人間の領域を......それも街規模の大きさのソレを易々と壊滅させるという惨劇から一ヶ月半。それらの殲滅を依頼されて集まった者達だった。


 害虫、害獣駆除経験のある探索者が十五人。

 虫系統のダンジョン探索をメインにしている探索者が十人。

 山岳や森林のあるダンジョンをメインに探索している探索者が二十五人。

 戦闘力に特化した十人。

 それらに加えて全体のリーダーが一人、指示役が三人、斥候が九人。壊滅した地域の者や目的地が地元の者達が五十九人。火系統魔法使いが四人。

 合計百三十六人がスズメバチハンターの格好で集合していた。


「いいか、日の出までにケリをつける。ダンジョンモンスターのドロップで作った特注品だ。恐れずに進んで各々割り振られた仕事を完遂せよ」


「「「「「おぅ!!!」」」」」


「「「............」」」


 闇の中で連中を見詰める目に気付かぬまま、彼等は闇に包まれた山へ吸い込まれて行った――





 ─────────────────────────────


 タクミ・ベアル


 暴力と血の悪魔・下位


 職業:暴狂血


 Lv:32→48


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:400→450

 物防:1

 魔攻:400→430

 魔防:200

 敏捷:400

 幸運:100

 残SP:4→52


 魔法適性:炎・冷・闇呪


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残1186.4L

 不死血鳥

 悪魔化

 魔法操作

 血流操作

 漏れ出す混沌

 上位隠蔽

 中位鑑定

 中位収納

 中位修復

 空間認識

 殺戮

 暴虐

 風神那海

 状態異常耐性Lv10

 壊拳術Lv6

 鈍器(統)Lv10

 上級棒術Lv5

 小剣術Lv7

 歩法Lv10

 崩打

 強呪耐性Lv5

 石化耐性Lv4

 病気耐性Lv4

 熱傷耐性・強Lv1

 耐圧Lv6

 解体・解剖

 回避Lv10

 溶解耐性Lv10

 洗濯Lv3

 工作Lv2

 アウナスの呪縛


 装備:

 壊骨砕神

 悪魔骨のヌンチャク

 肉触手ナイフ

 貫通寸鉄

 火山鼠革ローブ

 再生獣希少種革のスラックス

 再生獣革のブーツ

 貫突虫のガントレット

 聖銀の手甲

 鋼鉄虫のグリーブ

 魔鉱のブレスレット

 剛腕鬼の金棒

 圧縮鋼の短槍

 迷宮鋼の棘針×2

 魔法袋・小

 ババアの加護ㅤ残高74000


 スキルの種 49/???


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