第141話 暴力と血
暗闇の中、目を覚ました。
「............ッ!!」
意識が飛ぶ前に何をしていたかを思い出し、安堵の息を吐く。どうやら頭を吹き飛ばされて仮死状態になっていたとかではないらしく一安心した所でもう一度、今度はゆっくり記憶を思い起こす。
「............あー、うん。そっかー」
なんかかなり曖昧だけどトランス状態ってヤツになっていた気がする。フワフワしてハイになっていて、今冷静になって思うと恥ずかしいって感情が真っ先に来る黒歴史。多分だけど、ヤクをキメた人って大体があんな感じになるのかなぁと思う。
「疲れてたのかなぁ......うわぁ恥ずかしい......」
今ここに布団が敷いてあれば枕を抱えて叫んでいたと思う。それくらい恥ずかしかった。ちょっと精神的なダメージが大きすぎて辛い。
「............ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ」
結局普通に叫んだ。これは許容範囲を超えた羞恥心から心を守る為の自衛行為だ。うん、仕方ない。
はい、落ち着きました。羞恥に悶える時間をどうにか乗り切り、ステータスを開く。何があって気を失ったかはちゃんと覚えていた。
「っふぅ......よし、ステータスチェック」
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《名前を設定してください》
暴力と血の悪魔・下位
職業:暴狂血
Lv:0
HP:100%
MP:100%
物攻:350→400
物防:1
魔攻:200→300
魔防:100
敏捷:350
幸運:50
残SP:308
魔法適性:炎・冷・闇呪
──────────────────────────────
「Oh......うわぁ」
俺氏、名前が消える。そんで今までになかった感じに進化していた。思い出したくもないきっと黒歴史が役に立ったんだな。
それはさておき、俺の仮説は正しかったとこれで証明された。多分というかなんというか......コレはあのクソ共の呪縛というか楔というか......まぁそんな何かから解放されたんだよな。良かった良かった。
んー、そういえば名前、どうしよ? 全然思いつかない。あ! 丁度もう少しでババアの店だし、ババアと悪魔さんに決めてもらおう。きっとそれがいい。
面倒な事を考えなくてよくなったから他の項目に目を向ける。
それ以外の変化と言えばSPが多分200増えた。それとは別に物攻が50、魔攻が100アップ。
一回の進化でステータスが150とSPが250も貰えるなんてやばいなぁ。そりゃああのクソ鎧とか肉塊が強かったのも納得できるわ。
上位になればなるほど一度の進化とかでの能力値の上がり幅が大きくなって、上位と下位との差は絶望的なまでに広がっていくんだろうな。
下からみればすっげぇ理不尽だけど、上は頑張れば頑張る程に報われる。俺が前まで居た場所での理不尽なんかにも余裕で抗えるすっげぇ魅力的な世界だ。
「アハハッ」
このダンジョンがあとどれ位あるかわからないけど、終わるまでに後二回くらい、具体的に言えば上位の悪魔までは進化してからあのクソ鎧にリベンジしたい。それを目標に俺は頑張るよ。
それが終わって外に出たら、元肉親を殴り殺す。目標全てを完遂すれば......憂いは晴れて俺が俺としての
「アハハハハハハッ」
これまで何度も何度も死んでやろうかと思っていた苦しい人生だったけど、こうなるなら......こうなる為の修行パートだと考えれば良い人生だったと......までは思えないけど必要な期間だったと割り切れる。
「っしゃぁ!! 殺して回るぞォ!!」
気合いを入れ直して奥へと向かう準備を整える。
もう暗闇も問題ない。何かそれらしいモンスターでも居たんだろ。それをナイフがぶち殺したから解除された......と。いい仕事するじゃねぇかナイフ。
一個上もそんな感じでヒヨコにぶち殺されたんだろうか? ダンジョンがどんどん厄介になるけど、まぁそれでいい。
「アハハッ」
その先にはモンスターは一匹も居なかった。残念。
◆◇原初ノ迷宮第八十七層◇◆
階段を降りながらステータスを割り振った。
敏捷に50、魔防に100、運に50振って物防以外は全部キリのいい数字にした。本当は魔攻に振ろうと思ってたけど、予期してない進化でのパワーアップがあったから魔防に追加した。これが後にどう響くのかわかんないけど多分いい選択じゃないかな。多分。
降りながら新しく増えていた魔法も試してみた。
冷属性魔法は冷風と冷気が出た。俺はクーラー&保冷剤の悪魔という事か。
闇呪属性魔法は腕から染み出てくる呪い汁が自在に操れるようになった。蒸発させて黒いスモークにも出来る。舞台装置としては優秀なのかな? 全くもってよくわからない属性が付いた。けどまぁこの呪汁はデバフ付きだし使い所はクーラー魔法よりはありそう。
そんなこんなをしていると階段が終わり、名称不明になった元匠は八十七階層へと降り立った。
「はい、到着。コレは想定外だけどまー他は想像通りかな」
目の前には三つの入り口。
空間認識は入り口以降は効果無しで先は全く読めない。こんなギミック多すぎてこの冬エリアはかなり面倒くさい。
でもまぁ丁度いい。三方向ならばやりようはある。
「よし、ナイフとヒヨコ行け。ヒヨコは真ん中に行くからナイフは右か左、好きな所に入って進みな。ナイフは敵が出たらぶち殺して進んで、ヒヨコはスルーして進んでね。で、俺は余った所に行くから」
ナイフは迷うことなく左側の入り口に入っていった。そして生み出したヒヨコはどうやら指示しなくても思っていた事は伝わっていたらしく、出したらすぐピーピー鳴きながら真ん中の入り口に入っていった。ヒヨコを出す時にハズレだったら行き止まりで爆発、それか途中でボスっぽいのが居たらそこまで戻って爆発。当たりならゴールの近くで右側の壁に密着して爆発、出来れば左側の方の壁にもダメージを与えられるようにとやや複雑な事をやってもらう。ちゃんと出来るか不安だけど......まぁなんとかなるでしょ。
それで、俺は残った右側に進むことに決まった。この中はどんな風になっているかね。
はい! こちら現場の悪魔です(半ギレ)!!!
中は完全に迷路となっておりまして、しかも一度通った通路は塞がれてしまう強制的に一方通行になるクソ仕様でございます。幸いまだ行き止まりにぶつかってないからまぁ......
おかしい、未だに一回も行き止まりにぶち当たらない。俺のヒキなら二択なんて実質ハズレだけしか引けないハズなのに......
それともただただずっとゴールのない迷路をグルグルさせるだけって事はないよね? まさか......ね?
「なんか狩人の漫画で似たようなのあったなぁ......かなり時間を使う道って。ゴールのない迷路よりもそっちだったらいいなぁ」
どうなるかわからない道をひたすら歩くだけの悲しい時間が続く。時間なんてどれ位使ったかもわからない。これ、結構精神的にクる。せめてモンスターだけでも出て欲しい。殴りたい。殴り殺したい。
某狩人漫画のように迷路の壁を壊して進めばいいじゃん。と思って全力で壁に殴りかかったけど跳ね返されてしまい途方に暮れていたら突然、これまで俺を阻んできた壁が溶けて無くなりレベルアップアナウンスが鳴った。2上がったらしい。
ヒヨコかナイフが無事に元凶を殺って......いや、迷路を攻略くれたんだね。本当にありがたい。
出口が見えたからそこへ進み、奥へと歩いていくとヒヨコがしょんぼりと待っていた。きっと俺と同じように行き止まりに行き着く事なく彷徨わせられ続けちゃったんだろう。
「俺はナイフ君の到着を待つから、ヒヨコは一足先に階段を降りて強そうなのが居たら爆発しておいで」
「ぴぃぃぃぃぃ!!」
あからさますぎるしょんぼり具合いにドン引きした俺はヒヨコを先に進まように促すと、我が意を得たりとばかりに嬉しそうに駆けていった。
「アレ......本当に魔法なのかなぁ......」
MPを使って生み出しているから歴とした魔法なんだろうけど、召喚獣と言い張っても皆信じそうなくらいに魔法感がない。お前は一体何なんだよ......
「謎が増えた......まぁいいや、俺はナイフを待とう」
俺は思考放棄してその場に座り込み、本日のMVP君の到着を待った。
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《名前を設定してください》
暴力と血の悪魔・下位
職業:暴狂血
Lv:97→0→2
HP:100%
MP:100%
物攻:350→400
物防:1
魔攻:200→300
魔防:100→200
敏捷:350→400
幸運:50→100
残SP:314→114
魔法適性:炎・冷・闇呪
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残484.9L
不死血鳥
部位魔化
魔法操作
血流操作
漏れ出す混沌
上位隠蔽
中位鑑定
中位収納
中位修復
空間認識
殺戮
暴虐(乱暴な行為や惨い仕打ちでステータス補正)
風神那海
状態異常耐性Lv10
壊拳術Lv5
鈍器(統)Lv8
上級棒術Lv4
小剣術Lv7
歩法Lv10
崩打
強呪耐性Lv5
石化耐性Lv4
病気耐性Lv4
熱傷耐性Lv8
耐圧Lv3
解体・解剖
回避Lv10
溶解耐性Lv6
洗濯Lv3
アウナスの呪縛
装備:
壊骨砕神
悪魔骨のヌンチャク
肉触手ナイフ
貫通寸鉄
火山鼠革ローブ
再生獣希少種革のスラックス
再生獣革のブーツ
貫突虫のガントレット
聖銀の手甲
鋼鉄虫のグリーブ
魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
圧縮鋼の短槍
迷宮鋼の棘針×2
魔法袋・小
ババアの加護ㅤ残高17000
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