第109話 進撃の匠

 心を無にして淡々と処理をした。そう、淡々と部屋から子蛇を一匹残らず駆逐していった。


 生きて動くモノから先に処理し、動こうとしないモノ、動く元気の無いモノと続いた。ナマモノの処理を終えると血を吸って次の作業へ移る。途中で触手が手に絡みついて何かを訴えてきたので子蛇に刺して黙らせた。


 大量の蛇卵の処理だ。全部タネ有りだろうけど、何個か割って食べれそうなのを選ぶ......が、草を煮詰めたような色の白身と真紫の黄身を見て感情が消えた。これは全て消さなきゃならないモノだ。

 卵は中身が出来上がってきているモノとそうでないモノの区別がつかない......というか潰す優先順位とか考える暇もなく、壁一面びっちりと詰まりすぎていて面倒になった。

 なので五分の一程度潰し終えた所で手作業を諦めてヒヨコった。威力よりも範囲重視でオーダーしてみたら普通にオーダー通りに爆発してくれた。と言っても、俺が巻き込まれたら余裕で全損する程度の威力ではあったけど。


 発破して中をスキルで確認し、空になっているのを見届けたので中が冷めるまで仮眠を取った。

 寝なくても平気っちゃ平気な身体になったんだけど、寝るのは心の平穏の為にとるようにしたい。これからも。何も考える事もなく、何を感じるでもなく、雑音をシャットアウト出来る完全なプライベートタイムはあっちに居る頃から好きだった。



 スッキリと目が覚めた。

 伸びをしながらMPを見てみると、全回復していたので結構な時間寝れたようだ。

 服に着替えた後はこざっぱりした部屋を見て回る。落ちている魔石で綺麗なのを選んで袋に入れ、他に拾うべき物が無いのを確認した後、一際目に付く黒焦げの塊に近付いていった。


 あの爆発を爆心地付近で受けてもなお原型を留めているエキドナエンプレスの死骸。もはや高貴さは皆無で産業廃棄物みたいになっているからちょっと溜飲が下がった気がする。


 そんな産業廃棄物を蹴り壊してその中身を確認。


 肉を抜かれてぺしゃんこの黒焦げになっていても、不自然な盛り上がりがあるから中身が気になったので、死体蹴りついでに中身を改めた。


「............おぅ」


 半分ちょっと溶けていて、ついでとばかりに蒸された俺の手足と胴体が、その中に詰まっていやがった。アイツ、残った俺の胴体を食ってやがったのか。俺のじゃない可能性は無いと思う。だって日本人色の生き物は此処に来てから一度も見てないし。


「............」


 溶けた自分のパーツを無言で焼いて砕いた。セルフ火葬してセルフ供養。

 ちょっと頭がおかしくなりそうな気分になってきているけど、自分の供養をする貴重な経験をした。何度か捥げたり切れたりしたけどいつも放置していたからなぁ。


「......あ」


 骨を砕いていたら下の方から寸鉄が出てきた。ロストしたと思っていただけに助かる。


「よし、行くか」


 ちなみにドロップは無かった、残念。




 ◆◇原初ノ迷宮第六十六層◇◆



 特に何も語る事の無い階層。

 可もなく不可もなく、面白みも無く、ただ、淡々と作業のように金砕棒を振るっただけ。


 レベルが3上がった。



 ◆◇原初ノ迷宮第六十七層◇◆



 敵は数が少なく、小さくてすばしっこい飛ぶ真っ黒なネズミだった。全体的に階層全てが暗く、迷路のようなエリアだった。

 レベルは2上がったからそれなりに強いネズミだったらしい。



 ◆◇原初ノ迷宮第六十八層◇◆



 黒光りするスケルトンオンリーのモンスターハウス的な階層。

 骨なので血は回収できず、ただこちらが血を減らされた残念な場所だった。俺にはクッソ弱く感じたボーナスステージだったが、あの骨軍団は防御力が高いっぽいので普通ならかなり苦戦するっぽい。

 レベルは5上がった。あと名前の見えない変な指輪を拾った。魔法袋の奥にしまった。



 ◆◇原初ノ迷宮第六十九層◇◆


 新鮮な生肉が跳梁跋扈する階層だった。

 皆、既に死んでいるけど動き回っている、肉質も鮮やかなピンク色でとても新鮮な生肉と思える。

 ようするにフレッシュゾンビの階層であった。


 なんかアンデッドは色んな意味で旨味が無いし全然ル気が湧き上がってこないので、肉触手ナイフを放牧した。チラッと見たら鱗の生えた触手で生肉をチューチューしていたのでそこから戦闘は見ていない。


 荷物整理しながら食事が終わるのを待っていたら一時間半くらいでモンスターハウスがゴミハウスと化したので作業を中断し、ナイフを梱包してから掃除の為にヒヨコった。

 この作業でもレベルは2上がった。今回は全く手を出していないにも関わらず経験値が入るとわかったので、これから面倒な相手の時はナイフを放牧しようと思いました。



 ◆◇原初ノ迷宮第七十層◇◆



 道中気になったので、なんかちょっと重くなっている闇鍋のようになったナイフを鑑定してみた。


〈テンタクルナイフ ミートイーター〉


 触手ナイフ 肉食い とでも呼べばいいのかな? どうしてこうなったお前。俺の鑑定の脆弱さが恨めしい。

 なんかもうコレ、邪剣とでもカテゴライズしたほうがいいと思うの。殺した相手の肉を食って特殊能力を得る武器とか、所持してるだけでヤクがガンギマったレベルの狂気度でラノベで出てくる教会関係者とかが殺しにくる系のブツだろう。


「まぁ関係ないか。現代の教会とかって観光名所みたいなもんだろうし」


 次はボス戦なので開幕投擲してやろうとそのまま手に持ち歩いていくと大きな扉に突き当たる。階段降りてから結構歩いてやっとこさのボス部屋。


「さてと、準備しよ」


 サクサクっといつものスタイルになり、準備が整うと気負うことなくボス部屋の扉を開けて中へと進む。


「......鳥」


 何故か青空があるボス部屋の中央に馬鹿みたいに巨大な樹が威風堂々と鎮座、その中の一つの枝から侵入者を鋭い目で見下ろす鳥が一羽。



 ──────────────────────────────

 ソルトバイツホーク

 レベル:94

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 塩噛み? 塩が好きなのかな?


 どっちにしろ、倒すだけだからいいや。


 そんな事を考えながら歩いて中央へ進んでいくと、威嚇するように鷹は翼を広げた。


「ピィィィィィィィィィィイ」


 鷹の姿がハッキリ見えるまで近付くと、甲高い鳴き声を上げて宙へ飛び立つ鷹。デカい。

 かなり遠くてもハッキリ見えてたからおかしく思わなかった。確かにそうだよな、木もデカけりゃ鷹もデカいよなぁ......遠近感バグってた。


 さて、遠近感が狂ってる......と。困った、開幕ナイフブッパが不可能になってしまった。


 ......いや、いいか。


「外してもお前はッ! 勝手に戻ってッ! 来るよ......なッ!!!」


 臨戦態勢になった鷹目掛けて、ナイフを全力でぶん投げた。



 ─────────────────────────────


 吉持ㅤ匠


 半悪魔

 職業:血狂い


 Lv:79→91


 HP:100%

 MP:100%


 物攻:250

 物防:1

 魔攻:130

 魔防:1

 敏捷:200

 幸運:10


 残SP:18→42


 魔法適性:炎


 スキル:

 ステータスチェック

 血液貯蓄ㅤ残648.3L

 不死血鳥

 部分魔化

 魔法操作

 血流操作

 簡易鑑定

 空間認識

 殺戮

 状態異常耐性Lv8

 壊拳術Lv4

 鈍器(統)Lv7

 上級棒術Lv3

 小剣術Lv7

 投擲Lv8

 歩法Lv8

 強打

 強呪耐性

 石化耐性Lv4

 病気耐性Lv4

 熱傷耐性Lv4

 解体・解剖

 回避Lv10

 溶解耐性Lv6

 洗濯Lv2

 ■■■■■■


 装備:

 魔鉄の金砕棒

 悪魔骨のヌンチャク

 肉食ナイフ

 貫通寸鉄

 火山鼠革ローブ

 再生獣革のブーツ

 貫突虫のガントレット

 聖銀の手甲

 鋼鉄虫のグリーブ

 魔鉱のブレスレット

 剛腕鬼の金棒

 圧縮鋼の短槍

 迷宮鋼の棘針×2

 魔法袋・小

 ババアの加護ㅤ残高13680


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