(什玖)
小魚と豆腐を組み合わせるスープは、
まあ、魚自体は、海底の砂地に
そして、
さらに、
なんて料理を食べていると、こんな話が聞こえてきた。
「
「ああ。だが、相手は
「まあな。だったら、今度の
「だと、良いんだがな」
「昨日の友は、今日の敵ってか?」
「そう言えばそうだが……」
どうやら、南龍の人々は廷国が攻めてくる事は、すでに知っているようだった。
「廷国と戦うっていうと、水軍戦か〜」
「だったら、ほらっ。え〜と」
「ああ、
「そう、それ!」
奏兄弟? 僕は、左右に首を傾げる。
「海賊だったが、改心してな〜」
「ああ、兄の
「ああ、そう、え〜と……」
「弟の
「そうそう」
ふ〜ん、樹越は、元海賊が水軍を率いているのか。
「そして、あれだ。え〜と、なんとかって人が。
「
「えっ!
「うわっ、びっくりした~」
「あっ、申し訳ありません」
「お、おう」
僕は、思わず叫びながら立ち上がってしまったのだった。話していたお客さんを驚かせてしまったようだった。
そう、盧銘仙師父は、
そして、もう一人の憧れの人が盧銘仙師父だった。まあ、本を読んだだけだけど。ただし、盧銘仙師父は、
結果主義・能力主義、法と
「会いたいな~。会えるかな~?」
「で、どんな奴なんだ?」
この
「で、会いに行くのか? え〜と……」
「盧銘仙師父だ」
「そう、それぞれ」
「もちろん、会いに行きますよね〜。樹越の王都の……」
「うん、会いたいね。まあ、会えるか分からないけど」
「では、行きましょう〜。樹越の王都に……」
「うん」
「で、樹越の王都って、どこですか?」
「えっ? ああ、ごめんごめん、
「広矮、広矮……。あっ、カナン平原の四大菜系でしたよね」
「朱鈴さん、さすがだね」
「えっへん」
「食べ物の事だけ覚えているのか、朱鈴は」
まあ、
カナン平原の四大菜系の一つ、
広矮は、元々、入り江のような漁港のような地形ながら南部唯一の港として、船で外界に乗り出し、西方、南方と交流したそうだ。商人の街、と言っても大商人ではなく
「じゃあ、行ってみようか、広矮に」
「は〜い」
「おう」
「ああ」
僕は、一応、兄上に書状を書いて、その返事を南龍で待つ。そのあいだに、南龍の街を歩いたのだが、一部、西方風の建物が建っていた。中からは、
聞くと、
他にも、色々と見て回り時間を潰して待っていると。兄上から。
「好きにして大丈夫だぞ」
との事。僕達は、南龍を出て、広矮へと向かう事にしたのだった。
「え〜と、船で……」
「船では嫌だぞ」
「美味しいもの食べられないですからね~」
「ああ」
どうやら、三人とも船での旅は嫌なようだった。
歩き旅か〜。海沿いは山こそ無いが、切り立った
まあ、内陸の道だろうな。
「結構、人が多いな」
「ああ」
「本当ですね~」
「南龍から、南部一帯に品物運ぶんだろうね」
「ああ」
「さすが、
そう、南へ向かう街道は
「はあはあ、結構、起伏が激しいな」
「そうだよね。まあ、南部はそういう土地だし、さらに暑いしね」
「確かにな」
徐々に暑くなっていた、そして、湿気を感じる。
凱鬼は、汗をかきつつ起伏に富んだ道を歩いていた。龍清や、朱鈴さんは涼しい顔で歩いていたが、僕も結構辛い。
だけど、さらに南下して、森を抜けると、大きな平地に出た。海からだろうか? 涼しい風が吹き、今までの蒸し暑さが嘘のようだった。
どうやら、広矮のある平野へと出たようだった。
「ふう〜、ようやく道も平らになったな~」
「ああ」
「いよいよ、広矮の街でしょうか?」
「多分、もうすぐだね」
「楽しみですね~」
僕は、ドキドキとしていた。いよいよ、盧銘仙師父に会える、かもしれない。どんな人なのだろうか?
自然と歩くスピードも速くなる。
「耀秀様、速歩きですね。負けませんよ~」
「ああ」
「えっ?」
あっという間に、朱鈴さんと、龍清に追い抜かれた。
「お〜い、待ってくれ〜」
凱鬼があっという間においていかれ、慌てて走ってくる。
というわけで、僕達は広矮に到着したのだった。
広矮は、大きな街だったが、防御という面では心許ない街だった。そんな広矮は、樹越の王都。
昔、朱鈴さんが
樹夫人の息子の
樹夫人はこの県令を
そして、数年してその資産が尽きた時、若者達はツケを払おうとしたが、樹夫人は、県令への復讐の念を告白する。
若者らは仇討ちに加担し、ついには数千もの人員を集め県令に対して反乱を起こす。そして、県令を殺害する事に成功したのだった。
樹夫人は県令を殺害した後に死去するが、一旦集まった者達は、南部の荒れた土地であるのに、それを考えず、
反乱軍は樹夫人の孫、
反乱は長く続き、敗北した大趙帝国軍は、南部の支配を諦め、ついには撤退したのだった。ここに、樹越が成立する。
まあ、
現在は、第三代国王が即位していたはずだった。
街は、活気に
「さっき、ここ通らなかったか?」
「ああ、多分、通ったな」
「だよな」
「多分、こっちですよ〜」
「おい、朱鈴。勝手に行くな」
「龍清、どこ?」
「耀秀、こっちだ」
「あっ、いた」
というふうに、絶対的に道を間違え無さそうな龍清ですら、同じ道を通り。朱鈴さんが、意外な才能を発揮して、僕達は、王宮へとたどり着いたのだった。
「へ〜、王宮もあれだな」
「まあ、元々は県庁だったみたいだしね」
「
「朱鈴、声が大きいぞ」
「おう。なんだ、なんだ、てめえらは?」
「しょぼい王宮だってか?」
「まあ、本当にしょぼいですけどね」
「おいっ、
「おっと、口が滑った」
僕達が、王宮の門の前で喋っていると、三人の強そうな……。野盗だろうか? 街中に?
囲まれたのだった。
三人とも背が高くがっちりとしていた。まあ、凱鬼、龍清よりは低いけどね。
一人は、長い
もう一人は、同じく髭をはやしていたが、もじゃもじゃとした髭と頭髪で、いわゆる人相悪い感じだった。
最後の一人は、やる気の無さそうな雰囲気に反して鋭い目をした、いわゆる
「で、何の用?」
美丈夫が、僕達に質問する。
「おう! 野盗ふぜいが偉そうに」
「そうです、そうです。やりますか〜?」
え〜と、凱鬼、朱鈴さん、とりあえず止めてね。
「おお、やるか〜」
「おうおうおう」
凱鬼、朱鈴さんと、剥げた人と、髭もじゃもじゃの人が向かい合い、武器を構える。
凱鬼が
すると、龍清が凱鬼と朱鈴さんを制して、頭を下げつつ。
「大変失礼した。旅で、この地にやってきて、王宮を珍しいので見ていたのだ」
「おっ、おう」
「珍しいって、どこの田舎もんだ?」
「珍しい分けないだろ? しょぼい王宮がよ」
「おいっ、園宜。お前ってやつは」
「だから、
「へっ、だから二人は、盧銘仙師父に野盗に間違えられるんだよ」
「えっ、盧銘仙師父に会ったことあるんですか?」
「へっ? うちの
「丞相……。樹越の丞相か、盧銘仙師父は」
「知っているのか?」
「いえっ、本で読んで憧れていただけで」
すると、美丈夫の園宜さんというらしい。が。
「ふ〜ん、本でね。会いたいって事ね。じゃあ、話してみるよ」
「えっ!」
会えるのかな?
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