(什)
「
「えっ、あっ、うん」
「お〜い、
「
「ああ」
僕達は、朱鈴さんに連れられて出された、料理を取りにいく。
うん、なかなか美味しい料理がそろっていた。というか、珍しい料理かな?
「昔から西方からの
「そうなんですね」
「はい」
いつの間にか、ファランさんがやってきていた。僕は、スパイシーな羊肉の
「ふふふ、えい」
「えっ?」
ファランさんは、笑いながら僕の身体に密着する。良い香りがふわっと
すると、
「む〜」
そんな朱鈴さんの声が聞こえ。どすどすと歩いて来ると。
むにゅ。
こちらは、かなり柔らかい感触がした。そして、とても熱い。
「ふふふ、やはり朱鈴さんは、面白いですね」
「えっ?」
僕と朱鈴さんの声が、ハモる。
「とてもお似合いですよ、耀秀様と」
「えっ、そうですか〜。でへへ」
あっという間に
「ええ、
「えへへへ〜。良い人ですね、ファランさんは」
「はい、良い人ですよ」
この人は、どこまで本気なのだろうか?
「そう言えば、
ファランさんは、僕に密着しつつ、ささやくように話す。
「うんうん、いかがでした?」
え〜と、いい加減、2人ともちょっと離れて欲しい。精神衛生上良くない。
「いかがでしたかって、極めて優秀な方々ですね。そう言えば、ファランさんが、見つけてきたと聞きましたが?」
すると、ファランさんは、ちょっと考えてから。
「耀秀様の周囲に
「うんうん」
ファランさんの言葉に力強く頷く、朱鈴さん。そうなの?
「ですから、すでに条烈様の周囲にいた人材を見つけただけなのですよ。1人を除いてですが……」
「1人を除いて?」
「はい、
「剣闘士?」
「はい、西方のとある国では、剣闘士という。闘技場で命をかけて戦い勝利を目指す、剣闘士という存在があったのです」
「そうなのですか」
「ええ、まあ、そんな国で軍師的な立ち位置にいたのが父なのです。そして、そんな父は、その知識を教える
「私塾……」
僕は、ある人を思い出していた。
「そして、ある日、父は殺され、その知識をまとめ上げた書物も盗まれました。私は、その犯人を追って、カナン平原にやってきたのです」
「う〜、可哀想です」
「えっ、復讐の為にですか?」
「朱鈴さん、ありがとうございます。耀秀様、違いますよ」
ファランさんは、ちょっと悲しそうな顔をしつつ、ふるふると首を横に振る。
「正直、父の
「そうなんですか」
さらりと明かされる、ファランさんの過去だった。朱鈴さんは、泣きそうな顔で聞いていた。
「まあ、父という権力の
「そうでしたか」
「そして、カナン平原に来てすぐ、条烈様に出会い仕官させられて、条国にとどまる事になったのですけどね。そして、私は条国の力も使って、兄弟子の存在を探ったのですが、その
「えっ、僕達?」
「はい、私の兄弟子。今は趙武を名乗っているようですけど……」
「えっ、長舞先生ですか?」
「はい。どこかで、実際の長舞さんと入れ替わったようですね」
「そうなんですか……」
そうか、そういう事だったか。なんとなく
「それで、カナン平原の外れまでやってきて、私塾を開いた……」
「ええ。ですが、その知識を教える気はなかったようですが。まあ、試験に合格する程度の教えはしていたようですね」
「はい。だけど本当の目的は……、
「ええ、実に下らない。立身出世し、名を売る為。正直、興味は無くなりました」
「そうでしたか」
僕と、ファランさんの会話を僕にギュッと密着しながら、僕とファランさんを交互に見つつ、キョトキョトと視線を
「というわけで、私の興味は耀秀様達になったのです。まあ、まだまだですが」
そう言いつつ、ファランさんは僕の耳元に顔を寄せ、ささやくようにつぶやく。
「は、はい」
「む〜」
いやっ、朱鈴さん痛いから。
朱鈴さんは力強く僕を抱き寄せる。僕は、大柄な朱鈴さんにめり込んだみたいになっていた。
「ふふふ、やっぱり面白いですね、朱鈴さんは。そうでした、話が、
「ファランさんの知識を……」
「ええ、耀秀様はどう戦うのでしょうね。楽しみです」
楽しみですって、ファランさんは本当に楽しそうに話していた。
「
「それは、手強い」
「はい」
基本に忠実な用兵家。これが意外と
「それで、
「そうかもしれません」
ファランさんはコクっとうなずき。
「あっ、それで、禍角ですが、剣闘士として幼い頃より、戦ってきて無敗だそうですよ」
「そうなんですか。龍清に伝えておきます」
「はい。よろしくお願い致します。今はまだですが、禍角も倒される事を望んでいる節がありますので」
「そうなんですね」
そう言いつつ、ファランさんは少し考える素振りをする。
「それで、今後どうされるおつもりですか? 我が国に仕官されるのなら、歓迎致しますけど」
「いえっ、ファランさん達がいるので……」
「出来れば、私達と戦いたいと……」
「いえっ、そこまでは……。まだ、
「そうですか、良かったです。私も、耀秀様達の成長は遠くで見つつ、いずれ成長した耀秀様達を相手にしてみたいと思っていますので」
「そうですか。期待にそえるように頑張ります」
「はい。では、そうですね~。条国の中を自由に見て回れるように伝えておきますね。まあ、しばらくは拡大した
「そうですか。ありがとうございます」
「はい。では、楽しんでください。朱鈴さんも、しっかり耀秀様を守ってくださいね」
「もちろんです」
ファランさんは、
「あの朱鈴さん、痛いです」
「あっ、ごめんなさい、耀秀様」
朱鈴さんが、離れて僕は解放されたのだった。見ると、龍清と凱鬼。そして、かなりの方々が、ニヤニヤしながら見ていた。
「さあ、食べようか」
「はい」
宴が終わると、僕達には王宮内に部屋が与えられたのだった。
「さて、これからどうすんだ?」
「そうだね。まずは、条国の中を色々見せてくれるみたいだから、見せてもらおうかな」
「そうか。戦いはしばらく無いんだったな」
「うん、龍清は、戦いを見たかった?」
「いやっ、別に。ただ、今までの戦いが、どんなだったかは知りたい」
「そうだね。じゃあ、話してくれる人を探したり、戦争の記録を探したりしようかね」
「俺は、街中も見てみてえぜ」
「私も、街の美味しい料理食べたいです」
「そうか、それも良いな」
「僕は、条国が拡大した支配地域も見に行ってみたいかな」
「は〜い」
僕の発言に、元気にこたえる朱鈴さん。
こうして、僕達の条国探訪は始まった。まずは、
「うまっ」
「うん、美味しいね」
「なんか、他の国とは感じが違いますね」
「ですね。これも西方の技術なんでしょうか?」
「ああ」
僕達は歩き回って、凱鬼が美味しい匂いがすると言った
そして、皆で夢中で食べているのが。
平打ちの麺なのだが、とても弾力がある
さらに、この店には、羊や牛のスパイシーな串焼き、羊肉のスープ。さらに、
「これも、美味しいですね~」
「おっ、お嬢ちゃんもお目が高いね~」
そう、朱鈴さんは、身体が大柄な事を除けば、とてもかわいいのだ。って、誰も言ってないか。
「お嬢ちゃんだなんて、恥ずかしいですよ〜」
「はあ」
「あっ、え〜と、条国ってどんな国ですか?」
話しかけられた朱鈴さんが、
「はっ? どんな国って……。う〜ん、まあ、最近は強いよね、条烈様が国王になってから、あっという間に領土拡大だ。あれで、まだ二十代っていうからね~」
「へ〜、そうなんですね」
「ああ、それに西方からやってきた、銀髪のねえちゃん。え〜と、名前は……」
ファランさんに銀髪のねえちゃんって……。まあ、良いか。
「ファランさんですね」
「そうそう、ファラン。あいつが来てからだよな~。まあ、税も安くなるし、こちらは、
「へ〜」
「税金を安く?」
「ん? ああ、税金っていうか、出店料っていうかだけど。それを安くしたから、店出すやつ増えたし、人も集まってくるし、すげ〜よな~」
「そうですか」
ファランさんの政策が少しだけど、分かったような気がした。
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