(什参)
まずは、城外で暮らす人々を街中に入れ、空き家となっていた家を与え邑洛の街の民とした。これで、表通りだけでなく、裏通りにも活気が戻る。
元々流れてきた民であり、邑洛の民と認められず、やむなく街の外で暮らしていたため邑洛の民として認められ喜んだ。
さらに、元々の邑洛の民とも交流があった為に、あっさりと元々の邑洛の民にも認められ、自然と溶け込んでいったのだった。
そして、街の外や、裏通りで暴れ回っていた腕っぷしに自信のある者達は兵士として登用する。一石二鳥だった。
さらに、無人となった街の外にあった家を潰し、城壁に開いた穴も埋め、城壁を綺麗にする。
これで、如真王国の王都に相応しい
城壁の高さは、7
で、国王如参がいる
こんな感じで如真王国としての
まずは、臥良と5人の大豪族であるが、臥良はもちろん国のトップの
続いての5人の大豪族だが、それぞれが、政治面、そして軍事面の
まずは、武将として優れている3名。
臥良は、翁垓を
それぞれの役職名としては、翁垓が左将軍、鞨項が右将軍と呼ばれる事となった。
そして、小豪族の人々もそれぞれの配下の将として役職を得る。
一方、残りの大豪族の
丹栄が軍務を司る
さらに、小豪族の人々も文官としても役職を得る。
そして、
「は〜、名前だけは大将軍趙武ですか」
「先生、大変ですね~」
「いやっ、耀秀君だって、その大将軍府所属の
「まあ、そうですね。管理するべき
長舞と、耀秀の話を聞いていた、龍清と凱鬼も愚痴る。
「俺達だって、率いる兵もいないのに大将軍配下の
「だな」
そう、兵もいない、配下の幕僚もいない、仕事も無い、名前だけの大将軍府だった。
当初は、その主城楼の一角に作られた大将軍府に居て、暇だけを持て余していた耀秀達であったが、しばらくすると出仕せず、お互いに武芸の
皆は、邑洛の整備、政治体制の整備、そして、軍事面での整備などに忙しく、それどころではなかったというのもあったが。
そして、そんな日々が3ヶ月ほど続いた後に、事件は起きる。
「
「ん? なんの話だ?」
巍傑は、如参に
「はっ? ですから、陛下がおっしゃっていた
「だから、なんの話だ?」
「えっ? あっ、失礼致しました。とりあえず、そのような感じです」
「余は知らん。後は任せた」
「はっ」
そして、その夜のことだった。
「ん? どうしたの龍清?」
耀秀は、龍清が起きて着替え始めた物音で目を覚ます。
「わからないけど、不穏な感じがする」
「えっ」
そんな事を言っていると、部屋に凱鬼と朱鈴も飛び込んでくる。
「おいっ、起きろ!」
「耀秀様。起きてくださいませ。キャッ」
僕は着替え中だった。
すると、龍清が、
「殺気を持った何者かが街中、移動している」
「ああ、結構な数だぞ」
「気配は殺しているつもりのようですが、本当に殺気はダダ
僕にはわからないが、龍清、凱鬼、朱鈴さんは、殺気を感じ取り、何事かが起こっているのを察したようだった。
「俺達は、とりあえず何が起こっているのかを見に行く。朱鈴は、耀秀を守って……」
龍清がそこまで言った時だった。僕の頭の中に、恐ろしい考えが湧き立つ。
「いやっ、僕も行くよ。嫌な予感がする。朱鈴さん、申し訳ないけど、龍清と凱鬼の足手まといにならないように僕を守って」
「はい、かしこまりました。この朱鈴、耀秀様の為なら、たとえ火の中水の中布団の中までお供もいたしますわ」
「えっ?」
まあ、こんな感じで話しているうちに、龍清と凱鬼は屋敷を飛び出し、まるで
朱鈴さんは、乗馬もうまいのだ。だけど、この乗り方はちょっと……。せめて、朱鈴さんの後ろが良かったな~。
僕は、
そして、馬は二人に追いつく。
「なんだが、
「ええ、人の気配がしませんわ」
「だけど、近いよ」
僕達がそんな事を言っていると、凱鬼が焦ったように言う。
「やべえ、この先はあいつらの……」
「えっ」
どうやら、この先は凱鬼配下の野盗さん達の屋敷のようだった。
そして、戦いの音が聞こえてくる。いやっ、
「なんだてめえ〜、グワッ!」
「おいっ、大丈夫か? ギャ」
そして、ようやく
「敵の数はおよそ500」
龍清がそう叫ぶ。えっ、500。多い、多すぎる。いくら強いといっても、龍清と凱鬼の二人だけじゃ。あっ野盗さん達も、200人はいるか。となると。
「龍清。囲みの弱いところある?」
「いやっ、無いな」
「だったら、一番近くの門から突入して、皆と合流して、その後、皆をまとめて脱出準備出来たら合図して、朱鈴さんに馬で斬り込んでもらって、前後から挟撃して突破して脱出しよう」
「うん」
凱鬼は、すでに斬り込んでいた。龍清も短く応じると、凱鬼に続く。
ブーン、ブーン、ドシャ!
シュ、シュ、ギン! ザシュッ!
凱鬼の大刀と龍清の矛が闇を斬り裂く。
二人が斬り込むと、敵に混乱が生じる。そして、あっという間に門内に入っていった。二人が門内に入っても、激しく戦う音が聞こえてくる。邸内にもかなりの数が侵入しているようだった。
僕はじっと目を
あっ、そう言えば、合図を決めるの忘れていた。そう思った時だった。
「朱鈴!」
龍清の大声が聞こえた。
「はい、お兄様!」
「えっ!」
朱鈴さんは、馬を駆ると、敵の中に斬り込んで行った。そうだ、降ろしてもらえば良かった。朱鈴さん戦いにくいだろうし。
だが、朱鈴さんは、鮮やかに手綱をさばきつつ、片手に矛を持って敵を蹴散らしていく。しかも、僕が馬から落ちないように器用に固定しつつだった。
すると、凱鬼を先頭に野盗さん達が飛び出してくる。龍清はまだ屋敷内で戦っているようだった。
「こっちです。着いてきてください」
朱鈴さんはそう言いつつ、馬首を返し再び敵を蹴散らしつつ突破をはかる。
すると、凱鬼は立ち止まり、その場で大刀を振るい、野盗さん達の突破を援護する。僕が、朱鈴さんの脇の下越しに振り返ると、
「耀秀様。道わかりますか?」
朱鈴さんは、後ろを振り返りつつ馬のペースをコントロールしていた。
道か〜、どうするか? 賑やかな場所に……、いやっ、遠すぎる。ということは、一旦、邑洛の街を出よう。運良く、門も近い。
「右に進もう」
「はい、かしこまりました」
殿をつとめている龍清と凱鬼の戦う音が遠くなっていた。どうやら、このまま逃げられそうだった。
そして、少し走ると。
「あの、このまま行ってよろしいのでしょうか?」
「えっ?」
朱鈴さんが、困惑した顔で聞いてくる。どういう意味だろ?
僕が、ちょっと考えている間にその答えは分かった。門の前に
「よう、待ってたぞ」
終わった……。
それは、鞨項さんだった。
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