(参)
「ボロボロだね」
「うん、ボロボロだ」
僕の
邑洛。如親王国の王都、
しかし、
その木の扉の前には、かなり密集して家々が色々な材料で建てられ、小さな街が形成されていた。貧民街といった所だろうか? だが、活気はある。昼時なのもあるが、家々からは煙が立ち昇、子供達が、家の周りを走り回るのも見えた。
これらの街は、邑洛を取り囲むように複数あった。北府では見た事はない。おそらくだが、何らかの理由で城壁内に住むことが出来ない者達や、どこからか流れて来た者達が作ったのだろう。
そして、住む者達が野盗になったのか。野盗が、そこを守る為にいるのかはわからないが、それらの街は、野盗の
そして、それらは放置されているのか平和そうだった。邑洛の兵では、取り締まれないのか。それともそもそも取り締まる気も無いのか。それは、分からなかったが。
耀秀達は、東門から街へと入った。城門は開きっぱなしだし、城門の上には、
大通りを進む。城内も活気があり、大通りには、
「大通りは、活気あるのにね」
耀秀の
「人が潜んでいるよ。しかも、
「えっ。人が潜んでいるの?」
「うん。数人だけどね」
「そうなんだ」
耀秀は、目を凝らして薄暗い脇道を見るが、人の姿は見えなかった。だけど、龍清君が言うなら間違い無いのだろう。
人が潜み、入って来た人間や近づいた人間を、負傷、あるいは殺してお金を奪う。そういう人がいるのだろうか? 僕は、裏通りは、通らないように誓った。それに、城壁、周辺にも近づかない。命は、大事にしないとね。
「坊っちゃん。少々、お待ち下さい。おい。違うぞ。それは、その蔵ではない。もう一個奥の蔵だ。その品物は、店内だ。急いでくれよ」
等と、指示を出していたが、一段落すると、
「申し訳ありません。お待たせしました」
すると、耀秀が、代表して、
「耀膳さん。お世話になりました。おかげで無事に邑洛に到着出来ました。ありがとうございました」
耀秀が頭を下げると、龍清も合わせて頭を下げる。
「いえいえいえ。逆でしょう、それは。お坊ちゃまと、龍清様がいたからこそ、無事に到着出来たのですよ。ああ、そうでした。そう言えば、護衛の方々のお礼に、今日の夜は、
えっ! 宴か。どうしよう? 僕は、龍清君をちらっと見るが、何故か、目をキラキラと光らせていた。
確かに16歳になって、お祝いの席などで、少し
それに。あまり、若いうちから飲むと良くないと、思うけどな〜。
ビュッ、ビュウ、ブーン!
「よっ! 龍清の坊っちゃん。見事!」
とても大きな広間の真ん中では、すでに目が座った龍清君が、少し赤い顔をして飾られていた木剣を振っている。それを見て
やれやれ。
耀秀は、目の前に置かれた
まだ一杯目、三分の一程が、残っていた。だが時間もまだ
時間の経過と共に、座は酔った者達と、
そこでは、護衛の人や、隊商の商人が、今まで経験した、旅の話をしていた。話は、ここから
耀秀も興味深く聞いていた。西京の旅は、船で如親王国の王都北府をたち、
条国は、最近、代替わりし盛んに領土拡大をしているという。血気盛んな王らしい。名は、
一方、泉水への旅は、ここ邑洛から中原道を通っての、街道を通る陸上の旅だった。しかし、かなり大変なように聞こえた。途中の街等を支配する、様々な
支配勢力にお金を払い、守ってもらいながら、敵対勢力に襲われない事を願い進む。とてもじゃないが、商人としても割りに合わないそうだ。
だから、如親王国による統治を期待しているようだが。
「まあ、無理でしょうね」
とその商人さんは言う。さらに、護衛の人も、
「ああ、やる気、無いしね」
どうも、つい先日も、この邑洛の近くの丘に勝手に砦を作った野盗を討伐しようとして、負けたそうだ。
「駄目ですね。たった200名の野盗に、500名の兵士が惨敗」
「それは、凄いですね。優秀な軍師でもいたのでしょうか?」
耀秀は、目を輝かせて聞いたが、
「いや、野盗の
「強いんですね」
「ああ、名は確か……。が、がい、なんとかだったかな?」
「はあ」
がい、なんとかでは、何も分からなかったが、面白い話を聞けた。龍清君とどちらが強いかな? 少し酔ってきた、耀秀はそう思った。
翌日、耀秀は、目を
耀秀は、寝具を片付け部屋を出ると、龍清を探した。龍清は、大広間でそのまま寝ていた。護衛の人達の多くも、同じく寝ていた。
耀秀は考えた。確か達人って寝ているように見えて、警戒していて攻撃を回避するんだよな。龍清君も、もしかして。
耀秀は、昨日龍清が振っていた。木剣を拾い上げると、龍清へと近づく。そして、軽くだが振り下ろした。すると、
「痛てっ!」
龍清君に、木剣がまともに当たる。そして、龍清君は、慌てて飛び起きて周囲を見回す。
「あっ、耀秀君。おはよう」
「うん。おはよう」
「ごめん。もう起きる時間だった?」
「う、うん。そうかな?」
「ん?」
「……」
「……」
龍清君と、僕は無言で見つめ合った。気まずい……。
「ハハハ。そうだったんだ」
「ごめんね。龍清君」
「いや、俺の方こそ期待に答えられなくて、ごめん」
その後、耀膳さんの屋敷で食事を食べつつ、耀秀は、さっきの出来事を、龍清に説明していた。
特に、龍清君も気にしていないようだったが、
「そうか。酔って寝ちゃうと。完全に無防備になるのか……」
ちょっと、悔しそうだった。そして、それ以後、龍清君は、感覚を
そして、食事後、耀膳、そして、護衛の人々と別れを告げ、いよいよ、邑洛にある軍官学校へと向かったのだった。
「ようこそ。邑洛へ。わしが、校長の
学校に到着すると、数名の本日到着したであろう、自分と同じような新入生数名が案内され、校長室へ。すると、校長先生が出て来て挨拶されたのだ。
臥良先生。年の頃は、五十代後半から、六十歳くらいだろうか。手には、
そして、この臥良先生は、かなりの有名人であった。数年前までは、如親王国で軍の参謀筆頭である、
それ以降、如親王国は、じわじわとその支配地域を縮小させているのだ。
なぜ、辞めさせたのだろうか?
噂では、功績を妬んだ同僚に、
だけど、耀秀にとっては、幸運な事だった。優秀な、実戦経験のある、軍師から直接、教えを受ける事が出来るのだ。
「よし、やるぞ!」
「ホホホ。元気ですな。耀秀君だったかな?」
耀秀は、つい、校長室で大声をあげ、慌てて謝る事となった。
「すみません」
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