第十話 ストリップとヌードダンス


 ラン捜査官が、二人の演目と曲に合わせて設定をして、マコトとユキが舞台裏で曲に合わせてダンスを身に着けている間に、衣装なども決定される。

「ダンスはOKねぇ♡ さすがぁ、運動神経とかぁ、かなりのモノよねぇ♡ それじゃあぁ、楽屋に来・て・ね♡」

「「はい…」」

 軽く息を切らしながら、二人は楽屋で衣装合わせもする。

「マコトはコレでぇ、ユキはこれぇ♪」

「え…」

 テーブルの上に並べられたステージ衣装に、マコトは呆気にとられ。ユキは更にドキドキな表情。

「これ、衣装なんですか?」

「ええ そうよん♡」

 二人の衣装は、ヌルヌルした艶も卑猥な感じの、革製ボンテージだった。

 上半身は、乳房の下にベルトっぽいパーツはあるものの、それ以外は全てが革紐と金属のリングのみ。

 ブラのカップはなく、つまり二人とも巨乳が丸出し。

 更に、紐で繋がれた下半身パーツには、秘すべき場所を秘すべき面積も無いという、まさに革の紐のみのボトムだ。

 ショーツの縁だけを残して真ん中を切り取ったような下半身パーツを確かめるに、前も後ろも全く隠せる要素は皆無である。

 ちなみに、二着のボンテージは色違いで、マコトが白色でユキが黒色だった。

 ステージの上でパフォーマンスとして脱衣するのではなく、最初から全てを晒してパフォーマンスをする。

 という事らしい。

「あの 脱衣するのでは…?」

 着衣姿を想像して恥ずかしがるマコトの問いに、ラン捜査官は、シレっと応える。

「それはぁ、ストリップショーでしょう? この劇場はぁ、ヌードダンスよん♡ お客さんたちはぁ、魅惑的な女性ダンサーがぁ、ヌードで煌びやかにパフォーマンスをするショーをぉ、観に来るのよん♡」

「ですわね…」

 恥ずかしがりながらも、ユキは既に、初めて見た大胆すぎる衣装に魅了され始めている。

 テーブルには、二人のブーツやグローブ、更に首輪などのアクセサリーも色違いで用意されていて、ユキの首輪には細い金色のチェーンも繋がれていた。

 二人は金髪美女に急かされて、シャワーで汗を流し、全裸の上に恥ずかしいボンテージを着衣する。

「これで、いいんですよね…?」

 全てのパーツを着衣すると、二人は乳房もお尻も全てを剥き出しにされた、恥知らずすぎる半裸姿となっていた。

 中性的な美しい王子様のようなセクシーボーイッシュなネコ耳美少女捜査官が、無垢なお姫様のように愛らしいゆるふわウサ耳媚少女捜査官が、巨乳も巨尻も閉じられた秘所も剥き出しな、恥辱のスタイル。

 お尻を隠さない左右の紐の間から、黒いネコ尻尾と白いウサ尻尾が、恥ずかしい感情を隠さずに、ピクピクと震えていた。

 美顔と媚顔と露出ボンテージが超高度なミスマッチを演出していて、男性であれば誰でも目が釘付けにされてしまうだろう。

 女性であるラン捜査官も、予想以上の官能姿に、喜びと興奮を隠せない。

「あらぁあ~♡ この衣装がぁ、こんなにピッタリだなんてぇ~♪ あなたたちぃ、もうコッチを本職にぃ、しちゃったらぁ♡」

「いえ それは」

「まだ恥ずかしいですわ」

 微妙に答えが違うマコトとユキだ。

 それにしても、気になるパーツがある。

「このグローブもブーツも、金属のリングが着いてますね」

「なんと言いますか…衣装のデザインとは、少しデザインラインが 違う感じですわ」

 手首と足首に巻かれた金属の枷と、同じく金属のリング。

 首輪や露出ボンテージと相まって、まるで奴隷娼婦のようでもあった。

 しかし、その割にはサイズが大きいというか。

 デザインも無骨な感じで、ただの装飾品にしてはと、特にユキは、大きな違和感を感じたりもした。

「あらぁ~。二人ともぉ、なかなか鋭いのねぇ~♪」

 マコトたちの推測に、ラン捜査官は小声で話す。

「手首と足首のパーツはぁ、小型のハンドガンに変形できるのよん♡ 手足二つの枷を一組としてぇ、合計ぇ、一人二丁の小型ハンドビームガンね♡」

 言いながら、金髪美女の手でテキパキと組み替え変形をされると、薄くて軽量なハンドガンが完成する。

「威力はぁ、あんまり高くないけどぉ、当てれば犯罪者を戦闘不能状態くらいにはぁ、出来るわねぇ♡」

「ちょっと試していいですか?」

 銃火器には明るいマコトが、新たに二つの枷を取り外して、組み替える。

 集中している時のマコトは、普段以上に自分の身体の魅力に無自覚となり、恥ずかしい剥き出しボンテージ姿のまま、完成させたハンドガンを綺麗に構えて見せた。

「なるほど。試し打ちとか 出来ますか?」

「これでどぅ?」

 ラン捜査官が、廃棄予定の雑誌を数冊と重ねて厚くして、壁際に立たせる。

 厚さ十センチ程の雑誌の後ろ側に、更に防弾金属板で出来ている薄いトレイを挟んで、試し撃ち。

 マコトは集中してハンドガンで狙いをつけて、一射する。

 –ッィイインッ!

 小さくて甲高い射撃音がして、小さな灼熱のエネルギー弾が打ち出された。

「音も反動も 小さいですね」

「元々はぁ、暗殺用に開発された銃器ぃ? らしいから♡」

 撃たれた雑誌を捲ると、雑誌はみな貫通されていて、最後尾のページに挟まれていた防弾仕様なトレイの真ん中が、熱変形で凹んでいた。

「わぁ、真ん中に命中させてるじゃない♡ マコぉ、その銃ぅ、知ってたのぉ?」

「いえ、いま初めて触ってます」

「マコト–マコの射撃能力は、地球連邦でもトップですわ」

 パートナーの能力を、ユキは誇らし気に話す。

「そういえばぁ、聞いたことがあるわぁ♡ ユキはぁ、ビークルの操縦能力でぇ、凄いんでしょう?」

「はい。ユキに勝てる操縦テクニックを持つ捜査官は、地球連邦には いないですね」

「うふふ…」

 と、当たり前に話す幼馴染みに、ユキは頬が上気した。

「なるほどねぇ♡ パートナーとしてぇ、仲良いんだぁ♡ あ、それならぁ♡」

 ラン捜査官は、何かを閃いたらしい。

「二人のダンスチーム名ぃ、そのままぁ、ホワイト・フロールにしましょ♡」

「「え!」」

 流石に、ユニット名そのままなのは、正体がバレること間違いないのでは。

 と慌てる二人に、ラン捜査官は、アイディアを提供する。

「ちょっといぃい?」

 言いながら、二人の髪の一部を、カラーヘアスプレーでピンク色に染めた。

「ん~♡ これで大丈夫♡」

 鏡を見せられると、マコトの前髪の左側や、ユキの前髪の右側などが、それぞれピンク色のアクセントになっている。

 生まれて初めて髪を染めた二人には、違和感と同時に、意外と可愛く見える不思議な姿でもあった。

「あなたたちがぁ、ホワイト・フロールにソックリだからぁ、髪を染めてより似せましたぁ♡ って感じでしょう?」

「でも」

「これで 大丈夫でしょうか」

 二人の不安にも、現場での経験が豊富なラン捜査官は、自信満々で応える。

「そもそもぉ、銀河に名高いホワイト・フロールがぁ、目の前でヌードダンサーをやっているなんてぇ、名乗れば名乗るほどぉ、逆に誰もぉ、信じないでしょう? あなたたちってぇ、悪党たちにはぁ、色々な仇名をつけられるくらいぃ、怖がられてるんでしょう?」

「うぅ…」

「それは 否定しかねますが…」

 ヘタに凝った設定を考えるより、ニセモノだと納得できる真実の方が、より相手が騙される。

 という事だ。

「ヌードダンサー、ホワイト・フロール ですか」

「なんだか、背徳的ですわ」

 ヤレヤレ顔も美しいマコトと、ドキドキフェイスも愛らしいユキ。

「それじゃあぁ、今度はその衣装でぇ、パフォーマンスの練習よん♡」

「「えっ!」」

「その衣装にもぉ、慣れないと♡ 本番で失敗してぇ、アルバートを逃すのなんてぇ、あなたたちだってぇ、ゴメンでしょう?」

「「それは…」」

 一度、目の前で逃げられているだけでも屈辱なのに、ようやく知り得た出現確定の現場でまた取り逃したとあっては、それこそ鬼の捜査官と恐れられたご先祖様たちに、申し訳が立たない。

「わかりました!」 

「レッスンいたしますわ!」

 二人は舞台裏で、剥き出しボンテージのまま、パフォーマンスのレッスンをする。

 紐ボンテージを纏った裸身をくねらせ、巨乳を揺らし、巨尻を見せ付ける。

 演目のテーマは「おりオとゆりエット」と名付けられ、美ゆり王子なゆりオのマコが、敵国の媚ゆり姫なゆりエットであるユキを攫い、共にユリ死する。

 という内容なのだとか。

 首輪のチェーンを手にしながら、マコが四つん這いなユキの裸尻を、指先で優しくてキツめな撫で上げ愛撫をする。

「あぁ…」

 マコトもドキっとした官能ボイスは、パフォーマンスか本物か。

 曲が進んで、最後のシーンで、ラン捜査官の新たなアイディアが伝えられる。

「え」

「そ そのような 事を…?」

「言ったでしょう? ヴァージンが価値を持つ世界もぉ、あるんだってぇ♡」

 羞恥すぎて動揺する二人に送られたラン捜査官のウインクは、個人的な趣味もかなり含まれているのではと、二人は思った。


                       ~第十話 終わり~

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