09話.[いまさらながら]

「聡子がずるい件について」


 唐突にそう言われて本人としては固まることしかできなかった。

 直接ずるいと言われてもどうしようもない話だ。

 だってそれなら正義を譲るよ、なんてことはできないから。


「山崎君と付き合えたのはそれはもう実力だからいいとして、渋谷さんみたいな明るくて元気で優しい子とも友達でいられていることがありえない」

「あ、そっちなのね……」

「うん、ずるい、しかも親友レベルだしっ」


 まあ確かに十年以上続いている関係を持っている人が多くいるとは思えない。

 ただ、私のこれはかなり運が影響しているからなあ、と。

 もう一生分の運を使ってしまったようなものだ。

 そのため、もしかしたら反動でこれから酷いことが起こる可能性もある。


「亜美はずっと昔から一緒にいる子とかいないの?」

「いないよ……五年も続いたことはないよ」

「小学校卒業とかで離れちゃうと厳しいわよね」

「うん、だから聡子はずるいよねって話だよ」


 小中高と同じでずっと一緒に過ごすことができてきていた。

 クラスこそ離れたことは多数だけどふたりが飽きずに来てくれた。

 やっぱり相当な運を消費してしまったことになるからこれからが怖いな。

 なんてことはないことで関係が消滅してしまうこともあるわけだし、少し考えるだけで不安になってくるのがなんとも……。


「それなら無問題だよ亜美!」

「渋谷さん……?」

「いまから親友になればいいんだよ、もう二年生になるけどまだまだ時間はあるんだから」


 もう高校に入学してからの初めての春休み目前になっている。

 でも、確かに愛子の言う通りだ。

 二年だけでも一緒に過ごし、支えあえたら十分親友レベルに到達できる。

 仮に卒業してしまって離れ離れになってしまったとしてもそれはなくならないのだから。


「結局、ごちゃごちゃ考えたところで上手くいくことはないから親友が欲しいならとにかく一緒に過ごすしかないんだよ。私なんていつも聡子や正義のところに行っていたからね、小学生時代なんて毎日聡子の家に行ったぐらいだからそれぐらいじゃないとね」


 ……来てもらってばかりで申し訳ないといまさらながらに思った。

 自分から行くことをしなかったのによく続けられたなあと。

 だけど自分から行きだすと嫌われて終わる可能性もあったからよかった……のかねえ。


「迷惑じゃない……?」

「迷惑じゃないよ、どんどん来てくれればいいよ」

「じゃあ……うん、いっぱい行かせてもらうね、それこそ土日とかも含めて全部」

「ほ、ほどほどにね……」


 なんか怖いからなにも言わないでおいた。

 私も当たり前という認識にならないように気をつけようと決めたのだった。

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