第47話 烈風と氷柱
「バケモノがっ!!」
2つの斬撃と紅い閃光がぶつかり合う、その光景は戦の真っ只中だというのに美しかった。
「コレは……とうだっ!」
狙撃を試みるが避けられる。
「うおっ!?」
回避と同時にドレッジを斬りつける。
「ちっ!」
ドレッジも回避を選択。
受けとめる事も、受け流すことも不安なためである。
「不幸中の幸いか……」
「ああ、奴は……」
2人は気づいていた、シズの弱点に。
「「奴は能力を使えない!」」
そう、シズは2人と戦いの最中一度も能力を使用していなかった。
いや、出来なかった。
「耐えきるぞ」
「おう」
どれほど経過したであろうか。
「はぁ……はぁ……」
双方の動きが鈍り始めた。
「待たせたな」
上空から見覚えのある機体が降りてきた。
「遅いぞ、エアー」
現れたのはローズの腕を切り飛ばした
ムーンの最高幹部エアーであった。
「その身体は本体か?」
「当たり前だろ、この惨状を見れば『ホムンクルス』では太刀打ち出来るわけがないしな」
あの時ローズや九郎と渡り合ったエアーは九郎の予測通り、本人ではなかった。
「そりゃそうだろうな」
「さて……」
話し終わる前にシズのブレードがエアーの身体を割いた……
「こりゃあ……手加減は出来そうにないな」
と思われたが、間一髪で避けていた。
「びっくりしたぜ、さっき斬られたかと思ったが……」
「逆風を利用した回避だ」
「なるほどな」
「しかし……あれはどういう訳だ?
明らかに人間らしくない動きをしているが」
「予想だがあれは、暴走しているみたいだ」
「暴走だと?」
「ああ、詳細はわからんがな」
「まぁ良い、とりあえず奴を殺す」
ブレードを抜き戦闘態勢に入る。
よりも早くシズが攻撃を繰り出した。
「おっと…」
「エアー! 奴は能力を使えない! 氷は生み出せない!」
「そうだといいがな」
シズの攻撃をエアーは避け続ける。
「動きが読みづらい!」
シズの動きは人間のように知性ある動きではなく、まるで獣の様で機械的な動きにエアーは翻弄される。
「少しエアーでもマズいか?」
「加勢する!」
「いや、その必要は……ない!」
すると能力の風でシズの機体のボディに傷を入れた。
「ほう……硬いな」
シズの機体『フレア』の装甲は九郎によって改良されていた。
「なら、こちらも最大出力で応戦するのみ!」
辺りの風が強く
「エアー、殺るんだな?」
「ああ、もう既に作戦がめちゃくちゃになっている」
「どういうことだ?」
「ムーンの基地が電磁パルス攻撃を食らって戦闘不能だそうだ」
「「なんだと!?」」
「想定外だが、おそらく奴らActorの仕業だ」
電磁パルス攻撃作戦は成功していた。
「どういう目的だ」
「おそらくだが、戦争を止めるためだろう」
「ふむ……なるほど」
「だが、奴を止めない限り終わりは無さそうだな」
シズの動きは更に人間らしさを失い始めていた。
「奴に解釈を入れてやる」
エアーはシズに烈風を放つ。
するとシズの腕から血が吹き出した。
「ダメージはあるようだな」
シズのブレードがエアーの腕に当たりかけたが、エアーは風を吹かし寸前で止める。
「女を殴るのはしたくないが、仕方ない!」
シズの顔面にエアーの右ストレートが炸裂する。
シズの身体がのけぞるが、風を逆風で押し戻し殴り続ける。
「凄え、一方的じゃねぇか」
「だが、あいつも耐え抜いてるぞ」
そしてついにシズは両膝を付いた。
「これで終いだ」
エアーが銃をシズの頭に狙いを定める。
「ソレは……コッチの台詞……よ」
突如地面から槍のような氷が突き出た。
「!?」
たまらずエアーは後退する。
「まさか意識を取り戻すとはな」
「ギリギリだけどね」
「なら……ここからが本番ってわけか」
「ええ……死ぬ気で行くわよ!」
エアーとシズがぶつかり合う寸前で何かが落下してきた。
「何だ?」
「何が落ちてきた?」
ダガーとドレッジが土煙の中を覗くと。
「カハッ!?」
ドレッジが飛ばされた。
「ドレッジ!」
「何だ!?」
「こいつらが最高幹部か……それとお前は本体だな?」
「まさか……その声は……」
エアーは聞き覚えがあるようだ。
「ブルーローズ!」
「救援を聞いて駆けつけた、わざわざ遠くから来たんだ……交通費はそっち持ちだぞ?」
「自分から来ておいてか?」
「戦争を仕掛けておいて何を言う」
「いいだろう……決着をつけてやる」
九郎はブレードを構え戦闘態勢に入る。
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