第28話 混沌

「諦めろ、お前では私に勝てない」


「くっ…」


ローズは緊急止血キットを使用し止血した、と同時にオートリペアにて装甲の再生も完了。


「…(何が起こった?確かに俺は奴に近づいた、その瞬間体がまるでかまいたちのように裂かれたぞ…)」


「今なら見逃してやる、これ以上戦うのなら…殺す」


「っ!」ゾクッ


ローズは生まれて初めて恐怖を体感した。


「それでも…あいつと約束したんだ、救うってな」


「そうか、ならば」


エアーは手を前に出した。


「死ね」


「っ!」


ローズは短距離転移で距離を詰め

ブレードを振るう。


ボトッ…


「…」


腕が落ちた。


誰のだ?勿論。





ローズの腕であった。


「がァっっっ!!」


鮮血が噴水の如く吹き出す。


「やめておけと言ったはずだ」


「が………け……」


「何も言うな、今楽にしてやる」


「け………い…………………す」


「さらばだ…」


エアーはローズに指を指した、次の

瞬間。


壁が崩れ何者かがエアーを殴り飛ばした。


「ほう、見たことのない機体だな」


「……」


「誰だ?」


『全く、二本も落としやがって』


聞き覚えのある声が聞こえる。


「じぃ……ちゃ………」


『よっこらせ』


黒い機体はローズの両断された両腕を切断面に着け、注射器を打ち込んだ。


『さて、よくも陽炎に手を出してくれたな、青二才』


九郎だ、あの黒い機体に乗っているのは九郎だ。


「ほう、これは手応えあり…だな」


エアーも戦闘態勢に入る。


『ほう、生身か?』


「そう、見えるか?」


するとエアーの体が歪み始め、機体があらわになった。


『特殊ステルスか』


「正解だ」


ブレードを引き抜き九郎に突進するが


『おっとっと』


右手で止めてしまった。


「…」


『なるほど、能力は…風か』


「正解だ」


「風…」


『文字通り風を操る能力だ、陽炎の腕を飛ばしたのも能力によるものだ』


「よく見破ったな」


『受け止めた際に風を感じてな、室内なのに』


「本当に何者なんだ?」


『人生の大先輩だよ』


「そうか…」


エアーは背中にマウントされていた

対物ライフルを取り出す。


『その距離でライフルか?』


「ああ、狙いづらいがそれは関係ない」


『ほう…』


九郎は右腕を巨腕に変える。


「どういう仕組みだ?なぜ右腕が…」


『自分で考えろ!』


巨腕で殴りかかる。


「ふ…甘いな」


対物ライフルを発射。


『だいぶ照準がズレてるな、外したぞ?』


「お前はミスをした、今巨腕を止めずに殴れば私は負けていただろうな」


『なに?』


次の瞬間、九郎の頭部が弾け飛んだ。


「なっ!?」


「今殴られていたら、弾の軌道はズレていた、私の能力を持ってしてもな」


エアーはあえて対物ライフルを外していた、その外した弾はエアーの能力で軌道が変わり、部屋を一周し、九郎の頭部を飛ばしたのだ。


「くっ…じいちゃん…」


「なかなか、強力な敵だった…」


エアーは九郎の機体に手を当てて。


「勇敢な兵士よ、さらばだ」


『勝手に殺すな!』


「ゴフッ!?」


エアーの腹部に鉄拳が入った。


「な、なぜ…生きている…」


『全く、せっかくの機体を傷物にしやがって、修理費用はそっち持ちだぜ』


「なぜ生きているんだ!」


『そりゃあ、とっくの昔に死んでるからな』


「わかるように説明しろ!」


『一応本当なんだがな…』


「じいちゃん!」


『さて、そろそろ終わりにするか』


「ちっ」


エアーは舌打ちをし、対物ライフルを構える。


『もうその手は通用せんぞ』


九郎はブレードで対物ライフルを破壊した。


「さらばだ!」


対物ライフルが破壊されたタイミングでエアーはスモークを使用し逃げていった。


「逃げた…のか?」


『みたいだな、それにあいつは…』


九郎は無くなった顎に手を置いて考える。


「あいつが…シズの」


『…おそらくだが奴は偽物かもな』


「それは…どういう」


『最高幹部ならもっと強いはずだ、それに最高幹部がこんなムーンの離れた基地に居るか?』


「確かに…」


『ま、その話は置いといて、腕は動くか?』


「は?…動くはずがないだろ?」


『試してみろ』


「…あれ…動く…」


『うまくいったみたいだな』


「な、何を…」


『お前の腕に打ち込んだ注射器、あれには細胞分裂を異常なまでに加速させる効果がある、ま、腕がくっつくかは運次第だったがな』


「スゲェな」


『因みにこれ、違法品です』


「なんて物使ってんだ!」


『仕方ないだろ、それに黙っておけば

バレないし』


「…そうか…そうだな」


『さて、頭頭…あった』


「…なんでここに居るんだ?」


『ん?』


九郎は吹き飛んだ頭部を再び装着し、答える。


『助けに来ただけだが?』


「それはありがたいんだが、じいちゃん死んでるよな?」


『そうだな』


「なんでアーツに乗れてるんだ?」


『それはな!この機体が特別製だからだ』


「特別製?」


『研究室に行ったことあっただろ?』


「あぁ」


『あのときに沢山アーツがある部屋に

この機体の他4種類の特別製アーツがある』


「その特別製アーツとじいちゃんが乗れるのはどういうことだ」


『まず、俺の能力は魂を操る事ができるつまり自分の魂を特別製アーツの中に

入れる事で自由自在に操れるってことだ』


「お、おう…なんでもアリだな」


『ま、特別製アーツじゃないと意味がないけどな』


「そうか…」


『さて、帰るか』


「そうだな」


九郎とローズは共にActorへ帰還した。

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