第25話 消えた社長令嬢 後編

Actor本部 ローズ


司令室


「ベルさん!」


「何だ?ローズそんなに慌てて」


「アーツの出撃許可が欲しい!」


「は?」


「緊急事態なんだ!」


「…駄目だ」


「なぜ!」


「理由を聞きたい」


「…坂本生薬が生物兵器を作っていた」


「何だと!?それは本当か!」


「失礼します」


暁が来てくれた!


「…暁、生物兵器は見つかったか?」


「はい、未完成ですが十分な殺傷能力を秘めていることがわかりました」


「…ローズ、アーツの出撃を許可する!早急に対処せよ!」


「了解!」


「暁すまないがローズのバッグアップに回ってくれ」


「了解しました」









格納庫


「おや?早いねローズ君」


「榊さんリベリオンは出せますか?」


「ええ、ちゃんと整備は完了してるわ」


「ありがとうございます!」


よし、これで…


「聞いたわ、社長を捕まえるんですってね?」


「ええ」


「なら、コンパクト・レールガンは置いて行きなさい、代わりに」


何だ?これ…ハンドガン?


「強化型麻酔銃よ、対人で使うならちょうどいいでしょ?」


「ありがとうございます!」









坂本生薬 俯瞰ふかん視点


「さて…」


「え、えっと…」


ローズはアーツのままビルに入ったためカウンターの女性が混乱していた。


「すみません、社長と話しがしたいのですが」


「は、はい…」





「そ、それではこちらへ…」


受付の女性はおどおどしながらローズを案内した。




社長室


「お、お連れしました…」


「おお!娘は見つかったのかい!?」


社長は急いでローズのもとへ駆け寄った。


「…残念ながら娘さんは…見るも無惨な姿で発見されました」


ここでローズはブラフをかけた。


「そ、そんな…」


社長は膝枕から崩れ落ち、しばらくすると嗚咽が聞こえてきた。


「…」


「…なぜ…娘なんだ…」


「…」


ローズは静かに麻酔銃を社長に向けた


「な、なんだね!?」


「娘さんの名前を言ってみな」


「何を!私が娘の名前を知らないとでも言うのか!」


「ならなぜ自分の娘の事を『娘』と言った」


「…は?」


「普通は自分の娘を『名前』で呼ぶだろう?」


「何が言いたい…」


「知りたいだけさ、あんたが自分の娘の名前を言えるかどうか」


「何を言って!」


「質問してるのは俺だ!答えろ!」


「っ……明美…明美だ」


「言えるじゃねぇか」


ローズはそういうと麻酔銃をしまい、ある物体を取り出した。


それは暁から証拠品として借りた

『ウィルス』だった。


「じゃあそのノリで『これ』がなんだか知ってるか?」


「な、何だね?それは…」


「さぁな?俺もわからん」


「ならなぜ私に…」


「ここのラベルに書いてある会社…

あんたの会社じゃないのか?」


「なっ!なぜ私の会社が!」


「これはとある会社から見つかってなラベルに何故かあんた会社が書かれていたんだよ」


ローズは試験管をクルクルと手でもて遊ぶ。


「困るよなぁ?勝手に使われてたよぉ?だが…」


ローズは再び麻酔銃を取り出した。


「あんたがこれの制作に関わってたら…わかってるよな?」


「そ、そんなものは作っていない!」


「ほぉ?」


「ローズ」


「暁か」


「そいつ、黒よ」


「ほほぉ…ということは証拠を見つけたってところか?」


「ええ、これが証拠品よ」


暁は数本の注射器を取り出した。


「これはそのウィルスが注入された形跡のある注射器よ、ちゃんとウィルスも微量だけど確認できたわ」


「だってよ、反論はあるか?」


「そ、そんなものは知らない!」


「じゃあこれは?」


暁は黒い長方形の物体を取り出した。


「暁、それは?」


「ボイスレコーダーよ、あなたの秘書さんのね」


『全く使えんな、あの娘は…本当に私の娘なのか?』


「っ!!」


『そうだな…いっそのこと実験にでも使ってやるか、そうすれば私の役にたつな』


「ここまでよ、他にも証拠品はまだ

あるわ」


「おいおい真っ黒じゃねえか」


「で、デタラメを言うでない!!私が娘を殺したって言うのか!」


「殺した?」


「何言ってんだ?」


「はぁ?」


「俺は『見るも無惨な姿』って言っただけだぞ?だれも死体で発見された

とは言ってないが?」


「…はぁ?」


「俺は『あんたに対する恐怖で身を

震わせていた明美さん』を発見しただけだ」


「はぁ?」


「つまり!俺は今まで嘘をついていたってことだな!」


「……………はぁ?」


暁はローズの肩を叩いた。


「よし…じゃあご対面」


すると社長室に明美さんと里夜さん、毅が入ってきた。


「あ、明美…無事だったのか…」


「っ!…」


明美さんは詰め寄る社長から毅の背中に逃げた。


「た、毅…」


「久しぶりだな…坂本」


「む、娘に何をした!」


「それはこっちのセリフだ、お前は

明美に何した?」


「な、何って…」


「しらばっくれるな!お前は自分の娘を実験の道具にしたんだろ!」


「な、何を言って!」


「なら明美の腕についた跡は何だ!

これは他人に強く握られでもしない限りつかない跡だ!」


「っ!」


「それに!感動の再開のはずがお前に怯えて逃げ出した明美が何よりの証拠だ!」


「っ!」


「子供は!親の道具じゃねぇんだぞ!」


「っ!」


『陽炎、俺に変わってくれないか?』


(変わる?どいうことだ?)


『俺とお前が入れ替わるってことだ』


(何でまた…)


『とりあえず変わってくれ』


(どうやるんだよ)


『ほいっとな』




『…ん?あれ?』


(よし、上手く行ったな少し借りるぞ)




「…さて、社長さんよぉ、こっち向けるか?」


「…」


もう既に社長の顔は絶望で歪んでいた


「ふむ…」


「…」


「なぁ…社長さんよ…」


「…」


ローズ(九郎)は社長の顔を持ち上げる。


「その右手に持ってる『モノ』は何だい?」


「…」


ローズ(九郎)は社長の右手からモノを取り上げる


「…注射器だねぇ、何を注射したんだい?」


「…」


「まぁ、十中八九『殺人ウィルス』だろうね」


「…」


「……」


「ロ、ローズ…社長は?」


「もう死んでしまってる」


「…死を選んだと?」


「ああ、それと速やかに社長を火葬しろ、でないとウィルスが蔓延する

可能性がある」


「わかったわ!」


「ならウィルスを不活性化させるわ」


シズが遅れてやってきた。


「…安らかに眠ってください」


シズは社長の身体を氷の能力を使用し凍結させ、ウィルスを不活性化させた


(さて、ありがとう陽炎)


『ああ、何がしたかったんだ?』


(確認さ)


『社長が死んでしまってるかどうかのか?』


(ま、そんなところだな…よっこいしょ)






(っ!…戻ったか)


「…お父さん…」


「…毅さん、ありがとう助かった」


「気にするな、さて…この会社はどうするかな…」


「…それもそうだが、明美さんはどうするんだ?母親のもとへ預けられるのか?」


「…明美の母親は病死した、十年前にな、おそらくそこから坂本はおかしくなったんだろう…愛する者の死は人を狂わせる」


「そうか…なら明美さんはどうするんだ」


「…俺が引き取る」


「なら酒も控えないとな」


「そうだな!…坂本!お前が明美にかけてやれなかった愛情は俺がかけてやるだから…安心して逝けよ…」


「…りーちゃん、ありがとう匿ってくれて」


「気にしないで…親友じゃない」


「うん…ありがとう…」


「あとは警察に任せるとして、俺たちは戻るとするよ」


「ああ、助かったローズ」


「後日Actorから依頼料が届く、楽しみにしておけ」


「そうするよ」


一連の事件は社長…犯人の自殺により幕を閉じた…

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