第196話 前進期⑥ 緊急警報
「第1世代とは?!」
アークも初めて聞く言葉に大興奮なんだけど、僕は途中から話が難しくなってきてちんぷんかんぷんだったので帰ってから気が向いたら、自室のベッドの上でゆっくり寝ながら簡単にした説明を聞こうかなぁ~なんて思っていた。
先日貰ったパンティを片手に優雅に聞こう。
A4は「第1世代は教皇ザディウスを入れてたった
「
「そう。全面的にアザレア教との戦いを望まなかったアティウス医療財団は長い歴史の中のある時点でこの条件を飲んだ。
『10年に一度アティウスの血筋をひく子孫をアザレア教に捧げよ。』だと。」
アークは驚いた言い方で
「と言う事はアティウスは新生児を生け贄としてハイドラに供給していたのですか?」
「そう。そして戦争回避の生贄として捧げられた新生児が母親と共に【ほろびのうた】の部屋で3日間を過ごす。歴史上ほとんどの母子は死に絶えたが赤子が残った部屋からは稀に超感覚を手にした第1世代のハイエンドドライバーが誕生し、教皇としてその時代のアザレア教を担った。」
新生児欲しさに要求するアザレア教も胸糞悪いけど、生贄を出すアティウスもどうかしてるよ。
A4は「そろそろ燃料の補給場所に着く。席に戻ってくれ。」と言ってきた。
アークはまだまだ聞きたそうだったのだが頭が情報でパンクしそうだったので僕はおとなしくKPの横に戻る。
アークは僕に
「ほろびのうたに晒されれば死ぬし、自力で克服しても頭脳が良くなるだけ。
ハイエンドドライバーにする為にイチゴサイダーの心筋が移植されなければしっかりとした超感覚は発現しない。遺伝子のプログラムはまだまだ謎が多いですね。」
と言ってきたがあんまり頭に入ってこなかった。
何回か飛行機での移動を繰り返し、かなりの時間を要したけど僕らはようやくハイドラの本拠地に戻ってこれた。
途中でイヤホンで聞いたアークの考察で理解と納得ができたのは
第1世代がハイドラに3人いて新生児の時点でほろびのうたに耐えれた何かしらの強化感覚保持者。
第2世代がショウの様に大きくなってほろびのうたと心筋移植に耐えた劣化版強化感覚保持者。
第3世代がヤエちゃんの様に母体の薬剤コントロールによって適合性を高めた強化感覚保持者。
と言う事と
ザイドラ
レイドラ
アイドラの3つのそれぞれのトップがイチゴサイダーに匹敵する何らかの能力を有しているんでは無いか?と言う事。
確かにこのハイドラと言う思想の違う歪な3つのセクションが対等になり得る為にはトップはそれなりの能力でなければ成立しない。
さらにヤバいアークの大胆予想を聞いてしまった。
ザイドラの【ザディウス】は医者レベルの作業が出来る賢さを持つ人物。強化感覚はまだ不明。
レイドラの【ゼロ】は僕と同じ【先行視覚】。
そして
アイドラの【ママ】はアオリちゃんと同じ【超先行視覚】では無いか?と言う事。
つまり任務で死亡者予測をしているのはAIのダークでは無く、
やっとバスから降りてA4が
「今回の任務はここで終了だ。今から報告に行くが明日には報酬が入金されるだろう、キャッシュICチップを爪に貼ってない奴は金が使えないからザイドラ受付で登録をする事。
あと、今回の任務は俺の判断で多くの事を話してしまったが他言無用だ、漏れれば罰が待っている。注意しておけ。ではゆっくり休むように。解散。」反対方向に体を向けようとしたその時。
ヤエちゃんが走ってA4に抱き着いた。
僕らはそれを見て誰も何も言わず、うんうんと首を縦に振って自分の事の様にお別れの時間を惜しんだんだ。
僕はその時みんなが泣いているビジョンが見えた。
直後、A4の言うつもりじゃなかった言葉が漏れ出た。ホントの感情だったんだろう。
「たった一回の遠征だったが、ショウとヤエはもちろん、みんな家族に思えた。
ありがとう、よく頑張ってくれた。俺は過去に、ママの予測を覆したことがある。
この先も運命に抗う活路は必ずある。みんな・・・死ぬんじゃないぞ。」そう話した時、僕の方にクチバシが向いていて自分に言われた様な気がしたんだ。
僕らはアイドラへ向かっていた。明日になればきっとこの遠征で感じ続けていた切迫感も日に日に和らいでいくだろう。そう思った矢先だった。町にサイレンが鳴り響く。
館内放送の様な音でスピーカーから情報が流れてくる。
「在籍のエージェント及びハイエンドドライバーは全員ザイドラ前に集合せよ。繰り返す。
在籍のエージェント及びハイエンドドライバーは全員、直ちにザイドラ前に集合せよ。」
何か言い様の無い緊張感があたりを覆った。すぐ後にショウが走り出し僕らに向かってこう言った。
「先にアイドラに帰って休め!俺たちは緊急任務だ!」
アイドラの方角から武器を持ったシザーとフィローラらしき黒マントが急いで走っていく姿が見えた。
声を掛ける間もなく離れて小さくなっていくその背中を見ていると急に不安な気持ちが込み上げてきた。
その原因は今しがた父と兄と別れたヤエちゃんだった。ヤエちゃんは僕の指をグッと握って
「カガミといたら、なんだかちょっと心配が減る。なんでだろ??落ち着くのかな。」と話して来た。そうかこの子、リンクの事を知らないんだな。
すぐさまスマホで
「エイト・・・あ、ヤエちゃんって呼んでいい?僕らじ、」
と入力してリアルタイムにアークに言葉にしてもらいながら途中で文章を止めた。
僕ら実はリンクが出来るんだ。そう言いたかったんだ。
でもリンクの詳細を伝えようとした時、ヤエちゃんから分配されたの恐怖のリンクが段々と染み込んできて、言えなくなった。そしてそれを堪えながら頭を撫でて、
「僕らじゃまだまだ実力が足りないから、大人しく待っておこう。2人はきっと大丈夫だよ。」って何の根拠もない言葉で目の前の少女を必死に安心させようと
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