第197話 前進期⑦ 願いを込めて、ウソを込めて

翌朝、依然ショウたちの足取りはわからぬまま時間だけが過ぎていった。


僕とKPが朝食目的で食堂に向かうとトゥーマとファルマに出会う。

「「おはようKP!カガミ!」」


出会った時より少し逞しく見えるのは、前回の任務で成長したからか、何か吹っ切れたのか、まぁなんだっていいか、2人は以前よりいい顔で挨拶をして来た。


僕らが何歳か歳上だから軽く

「おっす!」みたいな感じで挨拶をする。いい奴らだ、これからも仲良くしたい2人だよね。



トゥーマから

「後で集合して報酬を受け取りに行こう!」

と言われた。ちょうどいいや銀行用のICチップも欲しいし。


その時、

廊下で正面方向からえらく疲れた感じのシスター姿の金髪女性が足早に近寄って来て突然声をかけられた。


「ごめんなさい、忙しくて声もかけられないまま今日まで来てしまったわ。あなたがカガミさん、あなたがKPさんね。」


そう言って僕とKPを順に見て目を見合わせる。

おやおや!疲れてはいるがこれはかなり美人だぞ!!しかも修道服姿でもキレイに見えるボディライン。プロポーションも良い感じです。


〔KP声かけろよ!美人だぜ!〕と代弁してアークが言うとKPは無視して、さっきまで立っていたはずのトゥーマとファルマに向かって

「何で膝をついてるんだ??」と聞いていた。


その女性は

「トゥーマ、ファルマ、やめてください。顔をお上げになって。先日の初任務大変だったでしょう。ザディウスがあの危険率で任務を続行した上に貴方たちを抜擢するなんて。」

と疲れ顔でも優しく囁くようにそれでいてザディウスに対して険しい顔で怒るような態度も見せながら喋る。


KPは

「で誰だコイツ。」とその人を指差した時、ファルマに

「KPこの人がママだ!今は黙ってろ!!」と言われていた。


アークが

「カガミさんを死の淵から救ってくれたママ!?」とイヤホン経由で言ってきたんだ。


ママ…ママ。あ〜僕の命を救ってくれたんだぁ〜へ〜・・・。


えっ!?え〜〜〜〜〜〜〜!?あのママ!?


僕はジャンピング土下座よろしく地面に伏せて犬のように手を付き恐る恐る上を見る。


アークが「あなたがアイドラのママでしょうか?」と聞くとお相手は、


「はい。そうです。

カガミさん、ケガの状況はライスデンから伺いました。あと私も怒っているわけではありませんの。笑えないだけで、なので失礼と思っているのであれば、先日の無礼は不問にしますわ。


あの様な頼み事は生まれてこの方初めてだったのですが、子供たちが住まうここアイドラではもちろん思春期の子らもいる事など当然わかっていたはずなのに、気が動転してしまいましたの。」

と恥ずかしそうに話した。


はぃ?何の事を言ってるんだ??


「アイドラのママ!以前は助けていただきありがとうございました!」アークが僕の声で感謝の意を伝えるも、


「あ、いや、だからその、謝っているのに下からスカートの中を覗こうとするのは良くないですわ!」と頬を引き攣らせながら言われる。


しまった!会話をアークに任せてつい鼻の下を伸ばしてしまった!

左のイヤホンが

「カガミさんあなたはゴミですね。」と囁く。


しかもタイミングの悪い事に目立っていたのかヤエちゃんが近くに寄って来た。


超聴覚でアークのこっそりヒソヒソ話を漏らさず聞いてしまう!!


ヤエちゃんは嫌な顔をしながら僕に指を指してきて

「カガミ。ゴミなの??」と言われた。10歳の女の子にだ。竜二なら吐血してるくらいの精神攻撃。


僕はスマホを取り出し


「そんな事ない!ヤエちゃん!何かの誤解なんだ!誰か僕の潔白を晴らしてくれ!」


とアークに喋ってもらうも、こう言う時に限って僕は大体運が無い。


ママは表情こそ怒っては見えないが、冷たい目で僕を見ながら

「気が済みましたか?私があげた使用済みの白いパンツは。」


とぶっ込んできた。


僕の表情が戦慄に染まる!!


O〜M〜G〜!!!!あれ!電話で貰えたあのパンティ!シスターのじゃ無くてママのだったのか!?!?ラッキー!!じゃ無くって!!


どうする!?何が正解だ!?そうだ!ビジョンを見よう!

そう思ってビジョンと相談するも現実は残酷だった。


そう、僕が断罪される以外の未来は来なかった。


そして僕は


願いを込めて。ウソを込めて。


〔そんなものは頂いておりませんが。〕とスマホに打ち込む。しかし不思議な事に英語に変換されスピーカーから発語された文章はまるっきり違う文章になっていた。


僕の声でアークが

「それはもう充分すぎるほど楽しみました。」

と。


その瞬間トゥーマとファルマに両方から押さえつけられ、頬のついた床スレスレから見えるヤエちゃんの目はまさにゴミを見る目だった。


1人で大笑いしているKPと悪意のある誤変換を平気でするアークにイラつきが止まらなかったのは言うまでもない。



クッソ〜覚えてろよ〜〜!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る