第195話 前進期⑤ 第1世代

アークとダーク。それぞれ違う命令を与えられ一方は僕、もう一方はハイドラに潜んで動き出した人工知能の【I-AMS】。


父さんはI-AMSを使ってハイドラを誘導したと言っていたが、それがこれか。



アークは

「ダークはまだ起動しているのですか?それともクラッシュ済みなんでしょうか?」


「まだ起動し続けている。下手な質問をするとザディウスに処分されるから今は決まった人物しか触る事が許されないらしい。」


アークは安心したのか次の質問にかかった

「なるほど、もしかしてそのダークを管理しているのが【ママ】なんでしょうか?」


そうか、父さんとアオリちゃんの未来予測を詰め込んだダークが、ハイドラの未来を知りたい奴等に情報を与えているって事か!?

ハッキングと思わせない様に?それとも有用だと信じ込ませるために??さすがアーク!そこまで考えられ無かったよ!!


しかしA4は一瞬、会話が止まり。

「ん?違うと思うが。」と言う返事だった。違うんだ。



僕はもう一つ聞きたい事をここぞとばかりにスマホに打ちこんで質問する。


「ヤエちゃんはカガミさんとリンクできたそうです。でもショウさんとは出来なかったと。理由はご存じでしょうか?」


その質問に対してA4は


「リンクって何だ?」だった。


まさかハイドラは【リンク】を知らないのか!?


その後アークとA4がリンクについて意見交換をした結果A4からはものすごく感謝され。ハイドラへ報告するかを悩んでいる様子だった。


「実はヤエは【驚き】もしないし、【怒り】もしないんだ。」と話すA4に対して、


「感情種!?それは何の強化感覚を有しているのですか?」とアーク。


【驚き】はヒカル、【怒り】はネネちゃんと一緒だ!


A4はダークに聞いた情報なのか父さんと一緒の表現で、そして誰かに聞いたかのような言い方で

と言うらしい。」と返して来た。


やばいっ!?本当に2種!?手数ではオリジナルの僕らが負けちゃってる!!



アークは感謝されたのをいい事にグイグイ質問を続ける。

「そもそもどうやってハイエンドドライバーを生み出しているのですか?」


その答えは恐らく極秘事項であろう。が、僕らに心を許したのかA4は素直に話してくれた。




「時期的には俺たちがまだ東京で平和に暮らしていた頃だろう、12~3年前カナダのアティウス本部でイチゴサイダーの心筋細胞が世界のどこかから保存液に入れて運ばれてきた。


それを

iPS細胞でシート状にして増殖される技術が出来上がる。それをアティウスに潜入していたハイドラの医師が教皇ザディウスに横流ししてこちら側の研究が始まった。


その心筋細胞は大人の体には一切順応せずパッチテストでは子供、とりわけ低年齢の小児にのみ拒否反応なく移植出来る事がわかったらしい。


そして言い伝えにあるイチゴサイダー達のホルモン産生を期待して細胞の元々あった場所、つまり心臓へ移植した際、元気にしていた子供たちは全て。この段階での生存者はいないそうだ。」


「随分むごたらしい実験をしますね。」とアーク。


A4は続けて

「次に、ダークの発案で【ほろびのうた】に晒して自力で生存した人間の観察が始まった。とはいってもダークは既に倫理観をある程度持った状態のAIだった為、という条件での提案だったらしいのだが、

ザディウスはそれを無視し、非人道的な方法で強行する。結果、何百と言う屍の上に生存者がポツポツと現れる。」


僕らはその胸糞悪い出来事を想像し無言で聞き続けた。


「しかし死の淵を歩んで生存をもぎ取ったサバイバーが何かしらの恩恵を受けるのかと言われればそうでは無く、多少音が聞こえやすくなったり、目が良くなったりと今、発現している強化感覚に比べて正直しょぼい物だった。いて言うならば皆、IQが上昇した事ぐらいだ。


しかし教皇ザディウスは数少ないサバイバーにイチゴサイダーのコピー心筋を移植する事を実験的に行った。

ほろびのうたに曝されるとT-SADの症状が抑えられることが判明したんだ。

それが今のショウたちの世代。かなり感覚系統が強化された子供達。


これが第2世代ハイエンドドライバーだ。」


「第2?いえその前にちょっと待ってください!ショウさんは【ほろびのうた】を自力で克服したんですか?」


「あぁ。あいつは13歳の時点で家族を守りたいが為にサバイバーになる事を希望しママの予測で生き残れる事がわかった時喜んでいた。


【ほろびのうた】の部屋に入って3日間耐え生還して更に移植手術を希望したとんでもない奴だ。それゆえ強化感覚を手にすることが出来た。」


〔ショウ・・・奪われた日常を取り戻したかったんだな。あいつはあいつで苦労し、必死にもがいて生きてきたんだ。〕


「では第3世代とはヤエさんを指すのでしょうか?」


「その通り、第3世代は母体にhANPと呼ばれる薬剤を注入し続け、イチゴサイダーのコピー心筋を移植した際、心臓が裂けていくT-SADをすぐに発症しない改良型の子供を指す。


その子供は短くて約5年の時間をかけて心筋が崩壊して死ぬはずだったんだが、ちょうどいいタイミングでハイドラにライスデンと言う小児心臓外科医を仲間に入れる事が出来た為、そいつの指導で手術によって死亡は回避できるようになった。」


「ライスデンさん?ではあの医師が!?ハイエンドドライバーをいつでも殺せる電磁弁を心房と心室中隔に植えているのですか!?」アークは怒鳴り気味にA4に問い詰める。


「声が大きいぞ!お前は一体どこまで知っているんだ!?」


「申し訳ありませんでした。以前A7と日本にやって来たセビエド少年のご遺体を調べた際に心房・心室中隔に薄い電磁弁が付いていた言う報告を受けておりました。」


「そうか、それはライスデンではない。医術を得たザディウスだ。あいつはこのハイドラに3人しかいない





のハイエンドドライバーだ。」

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