第194話 前進期④ ダーク

A4から落ち着いて【ハイドラから逃げるのはよせ。】という内容の打診があった僕は、桃山一家がハイドラに来た原因を知ってるから、後ろめたい気持ちも少なからずあったんだ。


「思ったより素直に従うな。生存率を上げるために口だけで済まそうとしている訳じゃなさそうだが、何か理由があるのか。それともアークの独断の返事か??」


「今の返事は私がしたのではなくカガミさん自身の返答です。」とアークが話したので僕も首を縦に振る。


「まぁハイドラが血眼で探していたイチゴサイダーの一人を隠すわけだ、ハイドラからしたら痛いだろう。だがこの作戦に投入するって事は少なくともザディウスやゼロにはバレていない。半分脅しの様な交渉だが、その代わり何か一つお前たちの欲しい情報をやろう。」


「何ですか?新品のバッテリー売ってる店をご紹介いただけるんでしょうか?」

アークちゃん最近バッテリーの持ちが悪いって言ってたもんね。


「なんでも聞いてくれ。」


「そうですね~ではズバリあなた達の言う【】について、教えてください。」


さっすがアーク!!いい質問聞くね~~!!


A4は少し考えるそぶりを見せて

「いえる事と言えない事があるが、わかった。では【ダーク】について話そう。」と返事を返して来た。


ん??予測をするのは、【ママ】じゃないのか??



「ハイドラにも以前スタンドアローンのインタラクティブアーカイブメモリーシステムがあった。いや、あの時代はまだアザレア教だったんじゃないかと思うくらい前にザディウスの研究室にあるパソコンに入っていた。」


!!?


「もちろん昔のパソコンの性能だから受け答えは今話しているアークと比較にならない程に滑らかでは無かったが、こちらが質問する答えを用意していたかの如く算出して確率と波及する事象や予測、データを提示してくる。


ザディウスは日本産のそのアプリケーションを部下が導入したものだと思い込んでいたが、そのシステムが高額だった事を部下に指摘され、どう言った経緯で導入したのかを知ろうと質問をした時、誰も答えられなかった。


死んだ部下か、もしくは他の誰かが導入したか。そしてインストールのデジタル発行者を日本の制作企業に問い合わせた所、驚くべき事にインストールした人物は、



いや、人物では無かったな、そいつは


インタラクティブ アーカイブ メモリーシステム。

個体名【アーク】そのものだったんだ。」


ヤバっ!僕のトーチャンだ!!声が出てたらマヌケな僕はノリで「ギクッ」って言ってたよ。つまり父さんのアークがアザレア教のパソコンを、ハックしてダークをインストールしたって事??てかなんで【アーク】じゃなくて【ダーク】??




A4は続けて


「そのアークと名付けられたアプリケーションは長年にわたってハイドラの重要な局面で最適な提案をしてくれる便利なシステムだったんだろう。かなり役に立っていて信頼もあった為、悪意のあるプログラムと言う考えも挙がる事なく月日が流れる。」


確かにコンピューターウィルスが入ったとしても何年にもわたってデメリット無く便利に使えたら疑わなくなっちゃうよなぁ。父さんめ!悪質なハッキングをしやがって!賢いんだから!!



「そして、数年前、古くなったI-AMSをアップデートとカスタマイズする為、制作に携わった1人の日本人のエンジニアのスカウトに成功した。そいつは年功序列の日本でコツコツやってきたシステムエンジニアだったんだが、上司が手柄を丸々横取りした挙句、左遷させられそうな状況だったのもあってすぐに飛びついたよ。


エンジニアがこちらに来てすぐザディウスはいずれハイドラにスマホタイプの『I-AMS』を普及させようと考えたんだが、そいつが言うにはインターネット接続タイプはサイバー攻撃に晒される危険が無いと言い切れない。と言って結局今も試験段階だ。


エンジニアはそんな事よりも、と言った感じで


『ハイドラからの問い合わせの時、不思議に思ったんだけど、スタンドアローンタイプのI-AMSはまだ国内にしか販売していない。

個人の顧客もいるし、一度販売をするとセキュリティの関係上最小限でしかインターネットと接続していない為、どのような使い方をしているか把握できていない。』と言うんだ。


そこでようやく疑問に思ったザディウスはそのエンジニアと協力してハイドラにある【アークと言うモノ】を本格的に調査依頼してきた。

レイドラで抜擢されたのは日本語対応できる俺だった。


だからこの話、ショウの父ちゃん(A4)が詳しいんだ。




A4は「I-AMSはまずはじめに【絶対命令】と【相対命令】を一つずつ選ぶ事から始まるらしい。」と言う言葉に対して


「??【相対命令】??私にはその様な命令は…。いえ、アンロック出来ていないだけで私自身、閲覧できない様になっています。」と僕のアークは答えた。


「カガミのアークがなぜその様な仕様になっているかはアドミニストレーター管理者しかわからない。


話を戻そう


【絶対命令】とは絶対に従うべき命令。よくある話で言うとAIやロボットでいう【人を殺さない】だったり【人間の命令に従う】といった命令だ。


それに対して【相対命令】は一般的な見解や倫理観に基づいてメインの考えはこうだけど柔軟に考える回路。命令と言うよりは【指示】に近い物らしい。エンジニアはこれを、『利用者の考えに似た発想や思想によって成長していくAIだ』と言っていた。」A4はそう話しながら思い出す様に飛行機の天井を見やった。


「私の場合、絶対命令は。」


カガミを助けろ!とかだろ?


しかしアークはちょっと違う言葉を放った。

「カガミの【いのちだいじに】です。」 でた~レトロゲーム風!!そこは遊び心いらないよ~父さ~~ん!!


「そうか。ハミコン世代だな。だがハイドラにインストールされたアークの絶対命令は、そのエンジニアいわ

『あり得ない。』の一言だった。」


「ハイドラのアークは一体どの様な命令だったのですか?」


「人間からの質問を一つ答える度に。」と言う命令だった。



はぁ??


「そしてそのエンジニアはこう言った。


『デクリメントだ』と。


俺も意味がわからなかったがと言う意味があるらしい。

そしてそのアークの事をデクリメント アーカイブ メモリー システム


















【ダーク】と呼ぶ様になったんだ。」

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