第122話 伝心期⑦ エニグマ

「エニグマ?なんか暗号に詳しいのか??」


「エニグマは悪魔の呼び名だよ。マジックバケーションってゲームに出てくる恐ろしい意志を持った化け物さ。むしろ暗号ってなんなんだ?母さんのやり出した暗号資産か?」


そう最近は母さんが僕に負けまいと、ビットコインを始めたんだが。もちろん未成年の僕は全くやっていない。どこでどんな勘違いをしたのか・・・。



「エニグマって言ったら第二次世界大戦でナチスドイツが使ってた当時解読不能と言われた暗号の名前だろ?確か意味は【謎】だな。」


「そーなの!元ネタ知らなかった。謎かぁ~パチモンでいうとアンノウンみたいな感じね。」僕はキャラと言葉がごっちゃになって何故かパチモンで例えたんだが、


寿ことぶきもパチモンでよく例えるけど、今の中学生はソレ流行ってんのか?」


「いんやアオリちゃんがパチモン詳しいのはそれこそ【謎】だよ。」僕はそう言いながら首を横に振ったんだ。


「謎って、お前ら仲いいんだろ??」ツクモはスナップを利かせてボールを投げた。


「仲いいの??なんでだ??小さい時に倒れそうになった所を救ってもらったくらいで、しかもアオリちゃんのお父さんにだよ。それから何年も会ってないから正直忘れてたよ。」


僕はグローブでパスッといい音をさせ受け止める。


動いていたら少し汗ばむ春の真ん中、これから暑くなるんだろうなぁ~と嫌がりつつも去年の夏が楽しかったから心のどこかではつい期待してしまっていた。


ツクモは

「かわうそ。」とボソッと言ったけどあんまり聞こえなかったから【カワイソ】か【カワウソ】かわからなかった。たぶんカワウソだろう。そう言われるとカワウソの事を急に思い出した!!


「そういや記念公園の横の水族館でカワウソがいて!コツメカワウソだって!めっちゃ可愛いからあそこは絶対デートコースに向いてると思うんだ!」


「カガミさぁ!人を好きになった事あるか??」


「え?なんだよ突然!!そりゃ僕だってもう中学生だし芸人では無いけどそれくらい。。。

・・・無いかも。」ヤバい!竜二にも言われた気がする!!!


「俺も最近聞かれたんだけど、好きになった事って確かに無いなぁと思ってたんだよなぁ。」


「だろ!普通中二ぐらいなら、まだそう言うのって無いのかも知れないよ!!」


「でも、」ウソだろやめてくれ!ツクモもなのか!?



「それを聞いてきた奴の事がちょっと気になってる。これが好きなのかもって。まぁ声だけしか聞いた事ないけど、落ち着いた声で安らぐんだよ。」


「なんだよ!ラジオのDJとかか?誰が好きなんだ!喰らえ僕の剛速球!!!」突然フラストレーションを球に込めてツクモにぶち当てる僕!


「『リエ』だ。」軽々受け止められる。と同時にとんでもない相手の名前が出てきた!


「え~~~!それダメじゃん!!叶わぬ恋的な!叶えちゃダメ的な恋的な!」

「日本語おかしくないか?」


「ツクモの方がおかしいよ!!だってハイドラかも知れないんだよね?!」


「そうなんだけど、何故か俺に優しい気がする。」


「ツクモはにやられるタイプだな!

僕なら完膚無き程までボッコボコに倒して、あまつさえ持ってるお金を奪うつもりだよ!」


「カガミって気持ちいいくらいの純粋な悪なんだな!」


「あ、パチモンの話です。」竜二なら笑ってツッコむのに!歯がゆいぜ!




「で結局ツクモのプランはどんなんだ??」


「あぁ、カガミ、今日アークは持ってきたよな?その中か??」


「この前持って来いって言ってたからそりゃあるよ!」



「早速だがアーク起こしてもらえる??」

「うん。アーク起動!おはよう~。」


「おはようございます。津雲さんもいらっしゃるんですね。この前の模擬戦はお疲れ様でした。」

「お~おはよう!!アーク丁寧だなぁ~。爪の垢ほしーぜ!」


「私に実態はございませんよ?」とアーク。

2人で笑ってからツクモはアークも交えて作戦を話し出した。



「去年は父さんと隠れて見ていたんだけど、不審者の旅先案内人以外は誰も来なかったからそのまま家に帰って行った。自宅まで付いて行ったけど踏み込んでいいかわからずマークだけはしていたんだ。」


「それで?」


「警察に最近調べてもらったら去年の5/1同日にその人は100万の大金を手にしていて一度きりの使い捨てで雇われたバイトだと言う事が解った。」


「やっぱりか、目的地はどこだった??」

「港だ。」引き取ったハイドラのメンバーと一緒に海路で逃げる予定か。


ツクモは続ける

「今回は警察が何人かで尾行してくれるみたいで俺らは自宅待機を命じられているんだが、俺とカガミで港で待ち伏せ出来たら奴らの顔ぐらいは見てみたいんだ。あわよくば母さんが無事か知りたい。」


僕の危険センサーがサイレンを鳴らして行くのを辞めたがってる。でもツクモの頼みだ

「わかった。アーク何かいい方法は無いか??」


「合法ですか?それとも」

「あくまで合法、目的に応じて非合法を許可する。」僕も高を括ったぞ。


「悪い。カガミ。」僕は首を振って笑った。


アークは「では囮になる方に発信機を付けましょう。警察が付けている場合はそれを利用して追跡できます。」

「精度は??港のどの場所に来たか正確にわかるのか??」ツクモも必死だ。


「ええ。私のトレーサビリティは発信機さえあればカガミさんが捨てた18禁の本の焼却場の焼却炉まで特定できます。」


「あ、あら??あの~アークさん。例えが悪くない??」どこかでご機嫌損ねちゃったかしら??


「完璧だな。よし!当日はよろしく!!」ツクモはベンチに座って拳を出して来た。

僕も「ヨロシク!」っていって拳をごつんと当てて約束を交わしたんだ。


「ちなみに、母さんが拉致された年、港で死体が発見された。そいつは病死だったらしくって事件にはならなかったんだけど、外傷は小さな切り傷のみで死因は失血では無かった。


実際は酷い感染症を患っていた状態で苦しんで死んだみたいなんだ。でも、数日前に見た知り合いは至って元気だったと証言してる。」


「一体何なんだ??」

「毒を盛られた可能性が高いですね。」とアーク。

「事件について少し検索しておきます。ツクモ イノリ様の失踪時期は3~4年前でしたね。」


「そうだ。ごめんな、大事なアークを自分の為に使ってもらって。」

「なんでだよ!ここは協力だろ?」

「ありがとう。カガミには・・・嫌われたくねーな。」


「嫌わないって!僕は他力本願寺の住職だぜ!みんな神の前では平等だ!」僕は両手を横に伸ばして平等を体で表したんだけどアークが

「寺だったら『神』ではなく、『仏』なんですが、カガミさん間違いを訂正いたしますか??」

「ほっとけ!!」



「・・・。」冷たいツクモの視線は少し運動で熱を持った僕の体にはちょうど良かった。

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