第113話 惜春期⑬ 正義の犠牲

泣き虫な僕を晒したんだ、さぞかしアオリちゃんは幻滅してるだろうと思ってたけど、そんな彼女は自分のお母さんの様に僕の母さんに抱き着いて僕よりもズビズビ泣いていた。めっちゃかわいいね。


少し落ち着いて母さんは

「アークありがとうね。」と言いながらアオリちゃんの髪の毛を猫のように撫でるのはやめて


「元気出しましょう!アオリちゃんが泣いてたら京介君が浮かばれないわ!」と元気づける言葉を言うと


「カガミ悪いんだけど冷たいお茶買って来て!」と言われた。めっちゃ仲いいじゃんあの二人。


僕は「わかった~。」と言い心を落ち着かせる為に自販機迄少し気分転換に歩こうと考え一時離席したが


自販機迄の途中でアークが

「カガミさん。今日の」「あ、今日のおすすめのゲームはいいよ!ちょっと今頭の整理でいっぱいで、ありがとね。」


「いえ」

「ん?どしたの?」

「今日の話で世界人口が大幅に減らなかったのは京介さんのおかげなんですが、犠牲は、果たして犠牲の人数は2人だけだったんでしょうか?」


「父さんと垂水さんだよね?」


「いえ、私が以前調べていた東京の桃山さん一家失踪事件ですが、」


「!!!!!父さんが誘導した時に出た犠牲なのか!!」


桃山さんの情報を餌に日本にハイドラをおびき寄せた!?

父さんがするのか?いや、可能性はある。以前父さんは母さんと僕がいないなら世界は終わってもいいって言ってた。


「正直言いづらいのですが、半分はそうかもしれません。桃山さんのお子さんを孕んでいた奥様ですが、先週ようやく警察のお力添えもあり、かかりつけ医の話を聞く事が出来まして、どうも妊娠のストレスでかはわかりませんが腎動脈が狭窄して尿が出ずらい変わった病気をわずらっていたようです。」


「ふむふむ難しいね、簡単に言うと?」


「イチゴサイダーのお母さんたちが過剰に産生された利尿ホルモンh-ANPハンプによって妊娠中にたくさん出ていたオシッコの話は覚えていますか??」


「うんそれはなんとなく。」


「それと逆で出にくくなって、かかりつけ医に定期的にh-ANPハンプを注射されてオシッコを出していたようです。」


「つまり意図せず薬剤で人工的にイチゴサイダー出産の条件を生んだ可能性があった?そういう事??」


「はい。その為に連れ去られたのだと私は考察しております。」

「目的は子供だったか。」


となると父さんは僕らを守るために民間人を犠牲にしたって事か。僕はサイダーとお茶を買いながら

正義ってのが何だか少しわからなくなっていた。

僕らにとっての正義が犠牲者から見て悪になるのか?納得はできないけど理解はしなきゃいけない事の様に感じた。


「もう半分は?」


「京介さんは研究所のスタンドアローンタイプのスパコン【アーク】を用いてアザレア教本体のコンピューターをハッキングしていました。」

まじか。僕らの為なら何でもやるって思ってたけどそこまでとは。


「敵のブレーンにどの地域で【ほろびのうた】を発生させれば効率がいいか実験的に観察できるかをお勧めしていた訳です。」


「そこで桃山ベビー拉致とジルさん暗殺が同時に出来て一番都合のいい日本に誘導できたわけね。」

「そうだと思われます。それとさっきの話ですが、私達を気遣っていただいてありがとうございます。」アークは何だか照れた言い回しで僕にそう言ってきた。


「何だよ今更。」僕もちょっと恥ずかしくなるじゃんか。



お花見の場所に戻るとアオリちゃんは泣き止んでてお菓子をパクパク食べているお二人がいた。

ずっと食べてるよ君たち。


アオリちゃんは

「カガミ君もどーぞ。」って言ってチョコブラウニーをあ~んされて、突然だったから口を開けちゃったんだけどまぁ何の味もしないよね。プラスチックのフォークじゃ無かったらリンク出来ておいしく感じたかも?


「これは、んん~なんと言ったらいいのか。」完全に僕が味覚が無い事忘れちゃってるね。でも何度もリンクするのも悪いからお礼だけ言っておこう。


僕はもさもさする口で「ありがとー」と言うと、ハッと気づいたのかリンクをしなきゃって思ってくれたみたいで両手で僕の左手を掴んでくれて、その瞬間「オイシーー!!」ってなったんだ。

ちょっと手を繋いだことにドキッとなる感情があってたぶんお互いにあったんじゃないかな?


アオリちゃんにも伝わったみたいで照れながらニコニコしてる所を母さんのスマホで撮影されました。


たぶん二人とも照れもあるけど満面の笑みで笑ってるいい一枚だと思うよ。被写体が良いからね!

調子乗りました。いいのは背景の桜とアオリちゃんだけです。


「今日のお花見で伝えたい事は話せたわ!何か質問あるかしら??」


「あ、結局、手術は誰がどうやってしたの?しかもこんなに小さな傷で。竜二とか胸にどでーんと切り傷があって渋いんだけど。僕はこんなにちっちゃいし脇の下で隠れて見えにくいし。」


いまだ手を繋がれていてちょっとドキドキするんだけど、反対の手の親指と一指し指で1センチ程の傷を再現して母さんに聞くと答えるよりも先にアオリちゃんが


「私も同じかも!ちっちゃくて見えないからエーコに羨ましがられるよ!」と言っていた。


ん??おやおや??見えない??

僕は自分の傷がある場所とアオリちゃんの体をかさね合わせて大体傷がどの辺にあるか想像してしまった。


それはエクセレント級の何かで隠れてて恐らく持ち上げないと見えない場所にあったんだ。ネネ様とキャリン堂店長の妹ならここで嫉妬だね。


それよりも僕の想像がむくむくと大きくなりそうだったからか、アオリちゃんからはサッと握っていた手を離されましたとさ。待ってくれよ!僕は友達のせいでエッチな奴になっちまったんだ!

決して僕のせいじゃない!!文句を言うならヒカルにどうぞ。


あぁダメダメ。あいつこそダメだわ「払うからいいでしょ?」とか言ってもみ消しそう。


母さんは

「現場ではジルさんと部下の垂水さん、それにもう1人が手術を手伝って、実際はカナダのアティウスの名医が遠隔でロボット手術をしたそうよ。ライスデンって人。」



「ロボット手術!!??」

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