第111話 惜春期⑪ すばらしきアイロンビーズの世界
「えっ?えっ?!これってマジ??母さん!」
なんて事してくれたんだ!父さん!
母さんは
「うゎぁ!ステキ!」って目を輝かせて言ってたけど。
「いやいや!!アオリちゃんにも選ぶ権利があるしメッチャ迷惑かも知れないからさぁ!」
と若干怒り気味で母さんを叱りながら気になって隣のアオリちゃんを見ると、プチトマトを口に入れながらポロポロと涙が零れていた。
あ、君。いただきますして無いからつまみ食いだよ。
母さんもだけど。
それよりも!
ヤバい!きっとアオリちゃんショック死する!
何度も言うが腐っても、僕は一流の妄想族だ。
そして今日まで全くモテない歴史を歩んできた!そのぐらいの判断は容易だ!
きっとここでアオリちゃんが嫌な顔をするだろう予想は出来たけど、あんなにポロポロ涙が出るとは!そんなにツラいのか!?
ショック死するのは逆に僕じゃ無いのか?
「ダイジョーブ!ダイジョーブ!アオリちゃんは好きな人と結婚する権利があるよ!あるある!絶対ある!だから本人の前で嫌オーラ全開はやめよう!!君はもちろんだけど、きっと相手も傷つくんじゃないかな!?」
無言で泣くとかヤバすぎるだろ!
差し当たってする事は!
「母さんのアーク!ストップ!あと、バカッ!
僕のアーク起動!僕に心の余裕をくれる動画流して!」
「バカはどっちでしょうね。」
「仰せのままに。」と
2人は同時に返事をして、僕のアークは
「カガミさんの視聴傾向より。
お笑いコンビ、ジョルジョルのブラホック早はずしの動画を再生します。
こーゆーゲームも良いですね!時間内に何人のブラホックを外せるでしょーねー!楽しみですね!!」
「おぃ!追い討ちをかけろなんて言って無い!!」と桜吹雪の中大声を出してしまった。アークさん、ひどいよ。
母さんに大笑いされて僕は
「終わった。」と言いながらレジャーシートに居眠りする猫のように横向きに倒れ込んだんだ。
倒れる瞬間思った事は
母さんのアーク、僕に口答えしやがったな。だった
そして
恐らくこのまま僕は眠るように息を・・・。
空にはキレイな青空が広がっていて心地よい風が僕の身体を撫でるように吹いていた、ある春の日のお話でした。
完
じゃなかった!そうこうしてたらモゾモゾアオリちゃんが寄ってきて何か引っ張られた気がした。
視界のハジにリンクラインが揺れるも全く状況が読めずそのまま固まる僕。
アオリちゃんは僕の持ってるリンクラインのもう片方を持った途端、ものすごく嬉しそうな顔をしてこっちを覗き込んできた。
リンクされたから無表情からカワイイ笑顔に変わったんだ!
なんだか少し胸が暖かくなる感覚があった。
そして
「お母様!ご飯召し上がってください!私もいただきます!!」って言って上機嫌で昼食が始まった。
いや、君達もう既に食べてたからね。
無かった事にしてくれたのか?
暫く3人で笑いながらお昼を食べたんだけど母さんの師匠(自称)の手料理はハンパなくおいしかった!
母さんはスマホであらゆる角度から写真を撮っては食べを繰り返していた。
アオリちゃんの機嫌も良いし、どうも僕を見限った感じがしなかったから、ブラホック外しの動画の件は忘れたんだろう。
いやきっと記憶から消えたんじゃ無いかなぁ?
だから僕は普通に質問。
「アオリちゃんこんな料理毎日食べれるの?最高じゃん!あ、リンクしてもらってありがとう!いつも竜二としてるんだけど、もしかしておいしさ半減して無い??」と聞くと
モグモグ食べて幸せな顔を見られて恥ずかしくなってたアオリちゃんは
「はい!大丈夫です、だん、間違えた。カガミ君!」
何と間違えたんだ!?
「んんーえっとね、味覚が薄れるのとおいしいっていう感情は同じ次元じゃ表せないから、味は薄いけどカガミ君の感動が勝ってて、私の方には【すっごくおいしい】薄味って言う感じのリンクで分配されてる気がするの!」
「おお〜そうなんだ!」
僕も薄味にしてる罪悪感はあるんだけど、
【おいしい】の半分は【マズイ】にならずに済んで良かったと一安心。
そもそもおいしかったのはリンクをしてくれる人がいるからなんだけど、今日はアオリちゃんに感謝だね。
そんなアオリちゃんは
「私もジョルジョル好きだよ!一人は私達の市の出身なんだよ!」
僕は、目の前のアオリちゃんにお茶を吹きそうになったがかろうじて耐えてレジャーシートの外に
「へ、ヘェ〜。」ジョルジョルネタは忘れろ!
「ところでアオリちゃん趣味なんなの??」
母さんはこうゆう話が大好きみたいだった。当然チャチャを入れてきたんだ。
「カガミ、なんかお見合いみたいね。」
ニヤニヤしながら僕を見る母さんに少し腹を立てていると
「アイロンビーズ作り。かな?ゲームもちょっとはするよ。」と微笑みながら話してきた。
僕は正直、嬉しかった。ゲームと言うワードが出ただけで合格点だ!
嬉しくなってゲームの話を全開でしようと思ったけど引かれたら嫌だなぁと思って今回は
「アイロンビーズかぁ。家庭的だね。」と返事をした。
アイロンをかけて、ビーズで手芸。うーん。家庭的だけど地味。
その時はそう思ってたんだ。しかしその認識はすぐさま粉々にぶち砕かれる事となる。
「ほらこんなの。」アオリちゃんは自分で作ったアイロンビーズを僕に見せてきたんだ。
そこにあったのは僕の認識とは違う【アイロンビーズ】と呼ばれるモノだったいや、言い換えよう。
僕にとってそれはミケランジェロの絵と言っても過言ではない
【芸術作品】だった!
僕は何気なくそれを見て次の瞬間、度肝を抜かれた!
「やばい。何これ?初めて見るんですけど。ちょっと感動してるんですけど。」
そこには幻のパチモン【ミウ】のドット絵がビーズで彩られてドット絵の再現力は、もはやゲーム内画像を丸々取り出してきて実物として触れる様にしてくれた神の如き創作物だったのだ。
「こっ、これを?アオリちゃんが?!」
「そうだよ!カガミ君、赤と緑が苦手ってお母様から聞いたから幻のパチモンと初代ゲーボーイをアイロンビーズで作りました。」え?昨日聞いて今日までに作ったのか!?
「スゴいよ!!アイロンビーズって初めて見たけど!!!スゴいよ!!こんな世界があったなんて!!
これだったらどんなドット絵だって作れるじゃん!!神だよ!君!ちょっとまって?え?神なの?!
何でもできるじゃん!!全ての技マシンを使えるミウみたいだよ!!」
色も何となく似てるしね!
ついつい興奮して一方的に話してしまったが、
「えへへ。ありがとう♪」
とかわいい笑顔を返されたんだ。
母さんは
「いい趣味だね!うちのカガミなんて明けても暮れてもゲームだよ!この前なんて16bitの世界に行ってきます!って言って部屋に入って行ったから、あぁうちの子はもうビットコイン始めたのねって思って感心してドアを開けたら、スーハミしてるだけだったの。わけわかんない子よ。」
「アハハハハ!!」笑われてらぁ。
いやそれは母さんの勘違いだろ!それにあんたの子だ!
暫く会話を楽しみながらお弁当を食べてお腹が膨らんできた頃。
「さぁ!そろそろ。ご馳走様して。」おっ?なんだ母さん。手品でもするのか?
「ご馳走様でした。」「お粗末様です。」
母さんは突然正座をしだすと、改まって僕らに話しかけてきた。
「二人ともこーんなに大きくなって!私は嬉しいの。じゃあ、これからあなた達が
どうやって生き延びたかのお話をするわ。」
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