第108話 惜春期⑧ 晒される4人の・・・

「はいっ!」ヒカルは授業で当てられた時のようにスムーズに返事をして話し出した。


「カガミと同様、ツクモ君1人に南チーム全員負けた時点で内容は褒められる物じゃ無いと思いますし、たまたま最後の方まで3人残りましたが、早いうちに誰か1人でも欠けていたらと思うと、まだまだ安全策はあったのかも、と思います。」


ゴリ先は「全員??」って言ってた。やべー模擬戦の模擬戦。通称モギモギがバレちゃう!!


「反省はこんな感じで、僕は佐井寺 ヒカル。ネネの双子の兄です。色が見えないです。」

話終わって竜二にバトンを渡そうとした時、ツクモがまた絡む。


「索敵の能力はヒカルか?声はしたが暗闇のカガミの方に一直線に走っていった。なんの強化感覚だ?」


「あ、えーっと僕の強化か」その言葉を遮る形で


「ココ!無理に聞いちゃダメだって!」エーコちゃんが怒って制した。


「エーコ。俺は佐井寺に聞かれて答えたぞ。」

ツクモも引く気はなかった。

何か反論しようとしたエーコちゃんに

ツクモは手を向け外野は黙ってろと言わんばかりの態度を取った。それをみたゴリ先はとうとう口を出し。


「ツクモ。お前が天道を気に入ってるのは見てわかるがチームの奴らとの強調も必要だぞ。」


あ、そーなの??


「じゃあゴリ先は警察でもみんなと仲良しこよしでやってたのか?チームも俺が決めたわけじゃ無い。決めてイイならカガミとやりたいんだが。」


「協調性と仲良しは違う。履き違えるな。それに編成はお前が決める事じゃ無い。嫌なら辞めろ。」ゴリ先は僕らにはあまり見せない声色でツクモを注意した。


「はいはい。盗める物があるうちは部下でいてやるよ。」

このまま緊張感が持続するかと思ったけど、そうはならず、


「じゃあ一生部下だな。ハハハ。」ゴリ先はいつもの笑顔に戻りツクモを許したように見えた。



おいおい。やめとけよ!ツクモ。本来こんなキャラなのか!?


ヒカルは一連の話を気にするわけでもなく

「僕の強化感覚は超聴力だ。右耳右目はつかえないけど。」自分の左耳を人差し指でトントンする。


「たいした能力じゃ無いよ。気にしないで。」と言った。ヒカル謙遜しやがってお前はそういう所大人だよな。メリットをアピールしといてやるか。

「心音まで聞けるからウソ発見器としてどうぞ。」と合いの手も入れる僕。有能だね。



アオリちゃんはエーコちゃんに

「スゴイね!」って言ってた。



僕らチームの最後に竜二が

「原 竜二です。

反省ですが、俺はいつもカガミとヒカルに頼って何とかなってる。今回も浮き彫りになった。最後にツクモ君の攻めを防げなくって。今考えてもいい作戦が思い浮かばない。

一人で行けると思ったけど見積もりが甘かった。


分析は苦手、作戦は立てれない、一人で敵も捌けない。俺は・・・弱い。」


悔しそうな竜二に。僕は


「そりゃ違うと思うけど…。最終決断も竜二だったから勝てたんだよ。今まで努力してきたツクモに急に勝とうとして急いでもしょーが無い。」と言い隣でウンウンと頷くヒカルと一緒に竜二をなだめた。


ゴリ先も

「そうだぞ、竜二。今はそれで問題ない。これから先、何かしらに付けて必ずはある。

どこで訪れるか、どんな物なのかは学校では教えてくれない。後になって気づく事も多い。だからこれを壁と認識して乗り越えたり、潰す努力をするんだ。」


ゴリ先の言葉は優しかった。きっと竜二にも届いただろう。またいつもの前向きな顔に変わり

「はいっ!」と返事をして南チームの反省は終わった。



次に北チームが話し出す。


「俺は津雲 九重ココノエ。反省点は寿ことぶきを頭数に入れてた事。以上。」


またもやエーコちゃんが声を出しそうになるがアオリちゃんが服の裾を掴んですまなさそうに制して、蚊の鳴くような声で

「ごめんなさい。」と言っていた。


まぁまぁ仲悪いねこのチーム。僕はネネちゃんも含めて本当に友達に恵まれた事に気付いた。


模擬戦中、エーコちゃんがゴリ先に対してフラストレーションを抱えていたが、一歩間違えれば僕らだってそうなったかもしれないなぁ。


ツクモを睨みながらエーコちゃんが

「私は、立ち回りがアオリとセットで慣れてたから1人になるとやっぱり場馴れしてない事に気づけたわ。個人能力の差が大きいからもっと頑張ろうと思う。」

と振り返った。


そこで

「パワーは十分過ぎるほどあるよ。」

ヒカルがボソッと口を出したが、エーコちゃんは青筋を立てる勢いでキレ笑いしながら

「ヒカルそれ嫌味??」と言い返していて外野の

ツクモと僕、竜二は指差してバカめと言いながら笑い合ったんだ。


その後エーコちゃんは


「嗅覚が無いのと、えっと言いづらいんだけど、私、みんなの言う強化感覚無いと思う。」

と言い放った。


「??そうなの??」まぁある方がおかしいんだけど。


でもネネちゃんは

「まだ解明されてないだけの可能性もあるの。」と言ってフォローしていた。



最後にアオリちゃんが


「寿 蒼里です。私もエーコがいないと何をしたらいいかわからなくって。」

何をするかわからないって感じだったけど


「遠距離の攻撃以外は何もできないのが反省です。」


「いや、その反省よりもなんで天道に敵対しなかったんだ。」とゴリ先が問いかけると


「自分でもチョットわかりません。あと30秒だったなら足止めにドングリとか投げればよかったかもです。」と謎の返事にゴリ先と北チームのみんなはため息が出ていた。


スーハミのミスターナッツズね!ドングリを投げるアクションゲーム!調子に乗って投げてたら弾切れになるんだけど、そもそも春にドングリって落ちてないような。


そういえばあのゲームって開発者ったった2人だったんだよなぁ。スゴイ!


ゴリ先は「そういう事も併せて北チームは情報共有不足だったな。」とまとめたうえで


「でも、今回は色々とルール違反や勝手に対戦してる奴らもいたみたいだから別途お仕置きを行います。」と言って立ち上がりペットボトルを右手に持って


「女子はあっち見ててな、男子全員。ケツ出して四つん這い。」

ツクモが

「おれもか~い!」と言っている。いいからはよ出せ!俺たちゃこれに関しては先輩だぜ!



そして道場に4発分のいい音が響いた。


O~~M~~G~~~!!!

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