第107話 惜春期⑦ イレギュラー

最後にかなり遅れてツクモが道場に来て、

「寝てました!ごめん!」って言いながらゴリ先にスリッパで叩かれてた。ザマァみろ!


そこから模擬戦の振り返りが始まった。

ゴリ先は

「先日はみんなお疲れ様。結果だけで言うと南チームが勝利した。拍手。」


パチパチ×5


「え~気付いてる奴も多いと思うって言うか、1人を除いてみんなわかってると思うけど。」と言いながら僕を見る。いやいや僕も分かってるよ!!みんなイチゴサイダーだろ!


「イチゴサイダーの7人が全員で揃うのは安全上ジルは避けたいようだったが、俺は早めに会っておく方が得策だと考えている。」


模擬戦中に全員理解してたみたいだから、みんな特に驚きは無かった。


「で、俺が話すのも何だから客観的視点で自己紹介を兼ねて佐井寺妹から感想をどうぞ。」


「えっ!丸投げ?!」ネネちゃんは驚いた顔を一瞬したが状況把握をすぐさま行い、


「私が南側のレフリーを任されました。佐井寺 音々です。」


カキゴーリの2人が「ネネちゃんだって!カワイイ子だね♪」ってコソッと話してネネちゃんは照れていた。


「さっき先生から聞いた模擬戦の終末は北側で何だか呆気なく終わったみたいだけど、

南側では、ホントに後ちょっとでツクモ君がフラッグを入れる所だった。


悔しくてお兄ちゃんを叱ろうかと思ったけど、その前にゴリ先から連絡が入って終了になったのよね?


私はずっと見ては無かったけど、敵に賢い人がいるってわかった時点から立てた作戦が南チームを勝利に導いたんじゃ無いかなって思います。」


むしろ動画を見ててでずっと騒いでたような。ヒカルに聞いたのか。


「具体的には、南チームの考えたが一枚上手だったんじゃ無いかしら。」


ネネちゃんは頭を傾げ右手の人差し指を顎下に当てて想像しながら話した。


「お兄ちゃんから聞いた話だと、ツクモ君は【におい】に対しての強化感覚を有してる。あってる??」


「おー!そうそう!つい【においがする】って言っちゃったな!周りにそんな事考えてわかる奴いねーから!」


僕はこう見えて味はわからないけど匂いには敏感な方だ。匂いといえばウルトラソースの焼きそばが食べたくなってきたなー。

スーハミのヤキソバメンはケトラーを倒してクリアしたから高値で売るのもアリかも。



「そこをフレグランス系の虫除けスプレーで撹乱させて、かつ、声真似をさせたスマホで人数を惑わせた。」


おやおやおや!ネネちゃん!虫除けスプレーの件はルール違反に関わるセンシティブな内容だから言わなくて良いかもしれないよー!!

焦る3人!


ゴリ先は「んん?」って言いながら渋い顔をしていた。

そしてあけたてのペットボトルを早めの勢いで飲み干そうとしている。


それ絶対僕らを叩く専用に仕上げてるよね!?


僕らの脳裏に以前喰らったケツバットが蘇る。竜二は痛くないけどあとあと腫れて痒みを感じるみたいでおしりをさすってた。



「北チームのフラッグを敵陣の近くに飛ばすって方法もすっごくいいだと思う。誰が到達しても勝てるってのは賢いよ。きっと南の3人が陣営付近にいない事を確認してボウガンでとばしたんだよね??」


「はい。そうです。」アオリちゃんが下を向いて小さな声でモジモジしながら答えた。


「矢の精度も最高!街頭下、コショウが撒かれた場所の近くにフラッグが落ちてたわ。練習もかねて攻めてきたんだよね。すごい。」

コショウの片づけ大丈夫なのか??雨風で消えると信じよう。


アオリちゃんは小さく「やったぁ!」と無表情で言ってた。多分喜んでるんだろう。



見てないのに凄いなぁネネちゃんは。

「今回の模擬戦で硬化マントの使い所や弱点なんかが浮き彫りになったと思うの。私もこれから北チームの武器を本気で手伝おうと思います。私からは以上ですが、

あ、自己紹介まだだったわ。


佐井寺ネネ。超視覚を持ってて音は聞こえにくいです。怒ることが出来ません。皆さんよろしくお願い致します。」


ゴリ先は

「オッケーこんな感じで。もっと手短でも一言でもいいぞ。まぁ騙して悪かったがこの佐井寺を含むお前ら7人全員が【イチゴサイダー】だ。


相手の素性がわからない状況での戦闘はいい訓練になったろ?勝った方も負けた方も反省はあるはずだ。


ちなみに佐井寺妹は話してくれたが、感情の欠如や人より優れた感覚がある奴、よくわからない奴がいるのは知ってるだろうけど、無理して言わず仲良くなってからでいいんじゃないか?」

周りを見渡すゴリ先。視線の先はうつむくエーコちゃんがいた。


目が合った奴からじゃべらされるなぁ。アオリちゃん見ておこ。カワイ。




「じゃ次、天道から南チームみんな反省をどうぞ。」


「うぇ?僕からですか?」「おいー!カガミめ!」と竜二。 


そして「天道?」ツクモが僕の名字に気づいた。



「コソコソするからだ。」ゴリ先め!

「えーっと。」しょうがないか話そう。


「天道 カガミです。南チーム両手武器。武器はしゃもじ。【怖さ】がありません。

(先行視覚は、、、やめとこう。アオリちゃんに気味悪がられると嫌だし)


知ってる人もいると思いますが旧遺伝子研究所のトップ天道京介の息子です。今は…いません。」


案の定ツクモの目が厳しくなる。が、それも一瞬。

僕をどう評価したのか。情報がある分仲間である意味は大きいと思ってくれたかな。もしくは親が死んだ事に同情してくれたか。


「今回の反省は、結果だけ見ると勝てましたが、内容では負けてました。」

隣の2人も反論せず、同じように思ってたはずだ。


ゴリ先が話そうとした時、先にツクモが口を出した。


「結果が全てだろ。」いつものツクモにしたら少しぶっきらぼうに言い放った物言いにエーコちゃんが、


「ココはそうゆう所あるよね!」と言いアオリちゃんがあたふたしてた。


北チームが言い争いをする中、ゴリ先は一旦内容を聞いてから総合判断する予定なのか

「ホレ!兄。」とヒカルに反省の続きを言葉と顎で促す。

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