第103話 惜春期③ 2人の為の復讐

「2人の復讐か。」僕は朝からなんだか重たい話をしてるな~と思いながらボソッと呟く。


父さんの為に復讐してくれるのか?そりゃ他人だし残ったツクモとツクモパパは縁も所縁ゆかりもない僕の父さんの為に命を危険に晒す母親が心配だろう。


きっかけの父さんの事、良く思わないよな~だからあのビジョンだったのか。


僕が天道京介の息子って事いっておこうかな。怒るだろ~な。トラブル回避モードON!!


よし!今は黙っておこう。


「だからツクモは強いんだな。目的がはっきりしてる。お母さんはその・・・まだ生きてるのかなぁ?」


あんまり言いたくないけど、ツクモが頑張る理由が母親の様に復讐じゃなくて、奪還だった場合、また話が、あと難易度が変わってくるなぁと思ってちょっと配慮が足りないかも知れないけどストレートに聞いてみると。


「あぁ、生きてる。らしい。」ツクモは眉間にしわを寄せそう答えた。


「ハイドラとコンタクトを取ったのか!!危ないんじゃ!?」


「確かにカガミの言う通りだよ、俺は奴らに対するアンテナが低すぎた。」

あ、僕もめっちゃ低いですそれ。



「訓練が始まった去年9月にアメリカのオンラインハイスクールに入学してすぐぐらいの時かなぁ、

慣れないビデオ朝礼で会った事もない担任が一人ずつ出席を取っていた時だった。


顔出しが礼儀かと思って俺はみんなと一緒に朝礼を受けてたんだけど、そのうち数人は顔出ししていない奴もいて、その何人もいる生徒の中で【フルーツ】と【ジュース】がアイコンとして映ってる奴がいたんだ。


そいつの事ははじめ全く気にならなかったんだけど、ジル・アティウスが8月の終わりに父さんに話した内容から、【イチゴサイダー】の由来がわかったらしいと言われて父さん同様、気になり続けていた時期だった。


あ、ジルさん内緒のハズなのに悪いんだぁ。母さんにチクっておこう。



訓練が始まった時、うちのチームの女子二人とは会ったばかりで、何だかいつもくっ付いてイチャついてるし、あんまり好きになれなかったんだけど、寿ことぶき古江ふるえもイチゴサイダーの由来は知っていたみたいだったんだ。


そこで寿に教えてもらって。最大値が5個しかない欠陥品と自分で理解した時はチョット落ち込んだぜ。」



「ああ、わかるよ。」適当じゃなくアークのアーカイブビデオで感情や感覚のない僕に対する父さんの気持ちも知ったから言葉で無駄に装飾せず、ツクモに返した。


由来はアオリちゃんもエーコちゃんも知ってるんだな。



「それでハイスクールの話に戻るんだが、【フルーツ】と【ジュース】のアイコンはよく見ると

strawberry(イチゴ)とcider(サイダー)が書かれていた。それを知った俺は急激にその生徒が気になり始めた。」


「僕なら釣りかと思って警戒するけど。」


「カガミと会って本名を語らなかった時は情報セキュリティマネジメントが成ってるなって言ったっけか?


実際感心してたんだよ。話は変わるけど、力が弱い奴と力が強い奴どっちが死亡に発展する事故・事件を起こしやすいか知ってるか?

聞き方を変えよう、死にやすいのはどっちだ?」


「そりゃ死にやすいのは弱い方でしょ!自然界の掟じゃん!」と言ったんだが


「残念!人間界では強い奴ほどケンカや事件をよく起こしやすいらしいぜ。 弱い奴ほどトラブルを起こさない能力がけてる、すなわち事故・事件に会いにくい。」


「あ~だからチキンマンの僕は長生きできるんだ。ラッキー!と思ったけど僕さぁ、事故・事件めっちゃ多いわ。OMG」僕は頭を抱えてオーマイガットポーズを取った。すると


「あ、日本人もOMGつかうのな?」と言ってアメリカのヤングなキッズたちがSNSでOMGを普通に使ってる事を教えてくれて、ちょっと先取り感を味わったんだ。



「話し戻すと、俺はハイドラの関係者の可能性があると分かりつつも、個人チャットを使ってコンタクトを試みてしまった。

母さんの手掛かりが掴めるかも知れないと焦っていたのかもしれない。

暫くしてから返事が返ってきたんだ。まぁ全部英語だったんだけど。」


「なんて返ってきたんだ!?」僕は話の先が気になって食い気味に聞いてしまった。



「私の名前は 【リエ】です。ココノエ。あなたは日本人ですか?ってな感じで。

授業中の声は女だったからボイチェンして無ければ女なんだろう。」


「相手は何人なにじんだったの?」


「本人はアメリカ人だって言ってた。俺はそのアイコンの写真いいなって返したんだ。無関係で一般人ならそれでスルーされると思うだろ?」


まぁツクモの限って「おまえはハイドラか!」ってなメールはしないだろうと思ったけど。


なるほど~SNSではアイコンを褒めて仲良くなるきっかけを作るのね。勉強になります。

ツクモの軽くナンパする手口みたいなきっかけの上手さに僕は思わず、


「いきなりそんな中身のないメールして普通なら女子は困るんだろうけど、律儀に返事が来たんだね。まぁ『但し、イケメンに限る』って事か。ケッ。」と言ってしまった。



「カガミさぁ何に嫉妬してるかわかんないんだけど、そもそもお前モテてんじゃん!」と言われてしまった。


「え??どこがだよ!」と返すと


「寿がメチャクチャなついてただろ??あいつ結構、美少女だと思うぞ!はじめは古江と付き合ってるかと思ってたけど。」


「その話、詳しく。」前のめりになって鼻息が馬の様だったみたいだ、ツクモからはそれ以上この話題は教えてもらえなかった。





「クラスメイトなんだったらメールのやり取りも普通かなと思ってリエも含めて何人かには通信はしてた。リエから来るメールにある日、重要な事が書かれていたんだ。」


『私にはココノエに似た知り合いがいます。ファミリーネームが カスガですが、あなた達はお知り合いだと確信しています。あなたとが抱き合っているシーンを見たので。』


「って内容だった。」


「ハイドラ決定だな!ツクモの母さんが日本の家族を守るためにわざわざ旧姓を使ったんだ!


ツクモの母さんは小さい頃のツクモを抱いてる写真かなんかを持っていて、それが見つかったんじゃないか??」


僕は腐っても妄想族だ、その想像には筋も通るし、かなり自信があったんだが。ツクモは、そうなのかなぁ?って顔をしながら。


「自分から飛び込んだ母さんが、そんなヘマするのかなぁと思って。最悪リエは本人に直接俺の顔を見せて確認してる可能性もあるって考えちまったんだ。


確認の為に拷問されてるかもしれない。生きていてくれるのは嬉しいが、離れてても尚、迷惑をかけてしまってる自分が情けなくて。」


心底落ち込むツクモは初めて見た。

「ツクモは、家族思いなんだね。」ボソッと言った僕はこう思った。


思いやりの強い、いい奴なんだな。

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