第93話 会遇期⑧ 模擬戦5

「お前、ドスコイか?」


「えっ?・・・。」何で?アホみたいな僕の一言は月夜の中、澄んだ空気を揺らし、目の前の知り合いの耳に届いた。


「ツクモなのか!!!!」ゲーム内で使うドスコイって名前を知っているのは竜二とヒカルを除けばこいつしかいない!!


フードを外すツクモ!紛れもなく朝一緒にランニングをしていたツクモだった!!


高校生じゃなかったのか!!


「リュージーーー!!!緊急事態!帰還する!!!!迎えプリーズ!!!」


「場所どこだ!?」竜二早く!!


「広場!!ヤバい!なんかたぶんヤバい!!!」


ツクモが焦る僕に接近するビジョン!


木剣を構えて攻撃を見据える!最大限に動くには硬化マントはいらないな!!けど当たったら痛いだろーなー。


ツクモの棒が振り下ろされる!

「まさか敵がドスコイだったなんてなっ!!!!」

そう言いながら右肩を潰そうとする!


僕は剣で払ってベリーロールしながら2回程、木の棒に鉛直方向の攻撃を打ち込む。


地面に落とされた棒の先を見て

「!!!早っ!何だその動き!?ドスコイだろ?!

そーかお前がイチゴサイダーだったんだ!!

ハハハハハ!

なんか持ってるな!?楽しくなってきた!!!恨みっこ無しだぜ!!」


こっちの焦りも知らないで楽しそうに話すなぁ。



僕は「人違いです〜たぶん兄ですわ!」とか嘯きうそぶきながらツクモなのか?って言ってしまった自分のアホさに呆れていた。




「ドスコイ!お前とは馬が合いそうだと思ったんだっ!」そう言いながらも攻撃が続く!


「今は訓練中だが、この先、同じイチゴサイダー同士仲良くなろうぜっ!!っと!」


止まない攻撃に僕は集中していなしながら

「ツクモ!!言葉と行動がチグハグだよ!!くっそーー!!」と言ってカウンターに腹にキックをくらわした後バックステップで距離を取ることに成功した。


その時後ろから

「おい!熱くなるなって!!!帰るぞ!」

竜二が走って来てくれた!竜二に言われるとわぁー。悔しい!!



「ツクモ!僕は臆病者なんでいったん引くぞ!お前も帰って寝ろ!風邪ひくなよーー。」

そう言うと竜二にMAX出力のライトニングをバチつかせてもらい、戦闘を終了させた。


ツクモが離れる時に言った言葉は

「え?あの電撃、喰らったら死ぬんじゃね?」だった。正解!!





陣地には敵襲は無く、帰ってきてから2人に叱られましたとさ。


石畳に正座をさせられたままお説教タイムだ。


「カガミさぁ、誰が遊んでこいなんて言った??」

ヒカルさん怖いんですけど。怖い??あ、竜二に首根っこ掴まれてリンクさせられてる。


「そんなオコプンの君たちにローホー!」


「なになに?!」竜二はさっきの僕の行動が気になってすぐに聞きたがってた。


「敵の男の身元が割れました!!イェーイ!!」

「おー!パチパチパチパチ。はよ!」焦るな竜二!物事には順番ってものがありまっせ。


「遡る事去年の9月。」

「結構前だね。」ヒカルそー言う合いの手。良いよ!


話に巻き込まてれていく感じ。


言葉の合いの手が進化してツッコミになったと仮定している僕は、キチンとツッコむ子を贔屓ひいきして、会話途中の疑問や質問に全てお答えする気概で話そうと思っております。


「ゴリ先から外周を、走らされる訓練が課せられたけど、同じコースを朝早く起きてフリーランをたまに始めることにしたんだ。」


「2日に一回走らされるのに、わざわざ朝も走ってたんだろ?ガチの変態だよ。」

と竜二。長距離嫌いじゃ無いんだよね。


「それがね!今振り返ると、全く同じ時期に同じ事を考えてた変態がもう一人存在したんだよ!それが敵チームのツクモ。ツクモ九重ここのえ。」


「だからココ君か!まてまて!ツクモって言ったら、ネネちゃんの言ってた副所長の名前と一緒だけどまさか!」竜二が思い出す。


「自分の息子がT-SAD患者だから臨時職員になってでも研究所に勤めた。そう言う事だねアーク。」ヒカルの推察は正解だった。


「はい。夫婦で懇願されたそうです。私には親や子はいませんが、きっと家族なら、しがみついてでも自分の息子の為に尽くしたいと思うんでしょうね。」


「あーうちの親にゃーない感情カモ。」悲しそうな竜二。


「それが今や、研究班トップだもんね!凄い!でもあいつ高校生って言ってたから、異年齢でもイチゴサイダーが存在するって事かな?」


「ツクモさんは同年代ですよ。」とアーク。


「通信で高校生だったような。」

「それ、もしかして飛び級じゃない?海外の飛び級制度がある学校にオンラインで在籍してるかも。」

とヒカル。


「あり得ますね。」アークもご納得だった。


「ツクモは単純に棒の武器だと思うか?」と竜二。

「ドユコト?」

「あのホウキの様に長い木の棒。ヒカルの木刀みたいにビスケットで形が変わる可能性は?」



「「ありそー!!」」

「だよな。しかもネネちゃんとツクモパパがお互いに作った武器でどちらが勝つかの賭け事をしてる匂いすらして来たぞ!」


匂いにおい?そうだ!

なんか僕の事を外観以外で判断してた節があった。【におい】って何回も言ってたぞ!!」


思い返すと初めに出会った時も嫌な夢を見た朝で、変な汗をいっぱいかいてたから、『何周も走ってた』と勘違いされたんだ!なるほどなぁ。



匂いでヒカルの隠れてる場所が割れたらやっかいだなぁと考えていた僕はその時ハッと閃いた!


「フフフフフ。ネネ様に借りればいいじゃ無いか。レギュレーション違反かって?知らねーよ!!」


竜二は「あー、ヒカル!見てみろよ!カガミが悪そうな顔してる。あの顔の時は大抵バグ技か裏技で勝つときの顔だなありゃ。」

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