第94話 会遇期⑨ 模擬戦6
ヒカルが
「ネネー虫除け貸してー。」と近寄る。
さっきまでタブレットで映画を観てキャーキャー言いながら興奮していたネネちゃんは、歯磨きを済まして
春日さんに用意して貰ったプチテント内でハンモックに横たわって寝ようとしていた。
ネネちゃん一応この模擬戦のレフリーなんだけどなぁ。
「うわっ!お兄ちゃん達か、何?寝るんですけど、シャワーもがまんだって。ゴリ先鬼だよ。」
「いや、竜二が虫刺され凄くって。いいよね?虫除けくらい。」
「すぐ探すわ!虫刺されのクリームもあります!」
ネネちゃんは最速で行動するとグッズを兄貴に手渡してすぐ蚊帳の中に戻って行った。
たぶん技は【とんぼがえり】だったと思う。
「アンタの妹、差別ヤバイだろ!いつか人権問題に発展するぜ!」
「大抵はお金で済むよ。」
ダメだこの兄妹。
僕は鼻の効くイチゴサイダー【ツクモ】に対して、むしろ匂いさせまくったらいいんじゃね?という結論に至った。
「おっとそうだそうだ、他力本願寺の出身者はこうだよね!アーク~!残りのイチゴサイダーの特技!教えて!!」
「残りのイチゴサイダーの特技。。。すいませんわかりません。」しおらしく話すアーク
「そちらのデータは旧遺伝子研究所のスタンドアローンタイプが一括して把握しており、私にはアクセス権限がありませんでした。
そしてあくまで当時の少ない情報の為、【予測】に過ぎません。」
「そうか。ツクモが嗅覚の強化感覚を持ってる可能性が高いんだけどなぁ。そもそも敵は僕らみたいな連携は得意なのかな?」僕は敵の行動パターンをもう一度思い返してみて、ふと疑問に感じた。
「そうだな、ツクモはスタンドプレーが得意な感じだし残りの女子たちは情報が少ないけどツクモとの連携はまだ見てない。
もしかしたら連携はせず女子たちで陣地防衛、ツクモで切り込みってパターンで勝ちを取りに来る可能性があるぞ。」竜二の予想は単純だったが一番安定はしている。
硬い行動パターンからきっと運要素を加味する『勝負パーティー』では無いんだろう。パンティじゃないよ。
ちなみに僕らはガッチガチの運ありき『勝負パーティー』で、稼ぎの悪いスライムレースなんかにゃ目もくれず、100ドルスロットにMAX BETして破産するスタイルだ!
言ってて負けそうな気がしてきたぞ。
そんなこんなで深夜0時を迎えみんなチラホラあくびが出てきた。眠たくなってきたんだ。輪番で睡眠をとろうか?と言っていた時、こんな時に限って敵襲が来た。いや、この時を見計らってきたのか。
「カガミ、竜二!敵が来た!二人!!左右から!50mくらい先!」といってヒカルは暗い中、指を指す。
竜二が
「向こうは察知に気付いてるのか?」と聞き
ヒカルは
「まだ隠れてコソコソしてるから気付いてない!」
僕的には
「めっちゃ遠いじゃん!見えないんだけど。」と言ってヒカルにリンクしたら闇にうごめくサーモグラフィーの人影が遠くの方に2つ!
「うわ!来た来た!!ヒカルすげ~!」
「どれどれ俺も!」竜二もサーモグラフィー参加!3人で仲良くリンクタイーム!!
「見えますね~~!ってカガミのせいで恐怖心減って
「あ、ほんとだ。行くか!竜二!たぶんあっちがツクモだ!」「OK!!」
そう言うと木刀を持って竜二と一緒にツクモ方向に走り出す!
「頼んだよ~~。」僕は隠れて様子を伺った。まだ敵は僕を見つけていない。ヒカルクラスのサーチの能力を持った敵じゃないって事だな。
こちらに走って来た敵は僕らの陣地近くまで来てワザワザ見つかりやすい街灯の下でピタリと足を止めた。警戒してると言うよりは『フラッグ無いのに来ちゃった。』って感じ?
敵の予定では自分が先に見つかって僕らと交戦してる間にツクモにフラッグを入れてもらおうとしたんだな。けど万が一フラッグを持ってるかもしれない。ここらへんでブロックしますか!
「あ~そこらへんで止まってくれると助かるんですがぁ。」暗闇から出てきた僕が言うと
「!!1人かぁ。残念。」と言って作戦の失敗をほのめかしていた。
そして
「2対1なら勝てるかなぁ!街頭下5メートル!!」と言ってグローブをマントの隙間から覗かせた。
【拳の女エーコ】ちゃんね!
僕も木剣を両方の手に構える、さぁかかってこい!!僕が構えてると
顔にめがけて何か飛んできて、くしゃみをするビジョンが見えた!!
なんだ!無い頭で考えて「コショウ?!」と言ってしまう。
エーコは「なんで!わかんのよ!!!」って言いながら僕に攻撃を仕掛けてきた!!
僕は必死でその場から退却。防衛ラインから進軍を許してしまう。
直後、僕のいた場所に袋付きの弓矢が上空から弧を描いて飛んできて、更にそれを直線的な軌道の飛び道具で撃たれコショウ入りの袋が爆散した!!
なんだよ!自分で放って自分で打ち抜いたのか??そんなの出来るのか!?FPSやっとけばよかった!!
僕はハンズフリーでこっそり仲間に通信を試みた!
「りゅーじ―ひかる~~たぶん2人に攻められてる!フラッグは後方の敵が持ってるの考えづらいからたぶんツクモだ!!」
エーコは僕に攻撃が届かず、コショウのエリアを避けるように後退してて二人とも何回かくしゃみをしてた。
「エーコちゃん!!顔見せてケロ!!」
「え!?なんでよ!あんたがドスコイっていう動きが早い奴?あんたより早い奴いたら嫌なんですけど!!」
ツクモめ~しゃべりやがって!
「僕はドスコイじゃありません!アイキャンノットスピークジャパネーゼ、大事なことはシャベレネーゼ。」
「じゃあカガミ君って子いるかな!?」
「!!!!何で名前バレてんだ!!誰にも言ってないぞ!!!フェアじゃ無い!!ゴリ先〜異議あり!!」
「アハハハハ!!!ゴリ先って
ゴリ先恨み買ってるじゃん!良いぞ!君イイ!!
気の修練はクリアしてないかも知れないな!!じゃあ今の僕たちに勝てるかな!!
「少しの自信と仲間への信頼は敵チームに負けてる気がしないぜ!」
僕は何の情報も持たない内容をスマホのスピーカーに載せて竜二たちに伝えた!
だが、その言葉一つで竜二って奴はギアチェンジ出来るんだ。
「ああ。さっさと守り切ろう!」気合の入った返事が返って来た。
「ヒカル!!遠距離攻撃が2回ほど来た!もう一人奥にいるか?!」
「いない!戻ったか相当遠くからの攻撃だ!!」
おっけ!2対1はハッタリだな。
「エーコちゃん!ここで僕とタイマンで勝負する?確実にやるよ。」
僕はあの時のセビエドを思い出した。姿勢を低く相手の喉を掻っ切る様に目だけで痛みを与える様に睨む。
腕をだらんと下ろして木剣の
エーコちゃんは唾を飲み込みジリっと一歩下がった。確実にビビってる。だが、そこで引かれたら逆に興醒めしてたかも知れない。やっぱり僕らはゴリ先の弟子だよ。
「良いよ。ここではまだ、私はやられない。」
「!?」まさかこの子も、先行視覚か?!
相手に強化感覚や武器があるのを忘れてた!!
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