第87話 会遇期② 徹ゲーは良ゲーの友

「あ~お前ら、月末の土日空いてるか?」

その日はゴリ先のいつもとは違う不自然な雰囲気の質問から始まった。

この言葉によって僕らの春休みは思ってもみなかった方向へと進んでしまう。



「え?僕は空いてますよ。」ヒカルが普通に返事をして

竜二はいつもと違う雰囲気を感じ取ったのか

「ゴリ先、担任を持つんですか!?来年度の!や、もしかして!!デートですか!?」


僕は「着ていく服がわからない。相談に乗ってくれないか?的な?!アハハハハ!!!!

そんな事なら。」僕は目をキリッとさせてゴリ先を見つめる。


「その件、僕らに任せてください!普段は子供!妄想は大人!この為にたくさん知識をつけてきたんです!なっ!ヒカル!」妄想族として僕達はかなり優秀だ!


「え?そうなんですか?じゃあ年末にみんなで行ったショッピングモールで服買ってデートなら散歩コースとか映画館とか?プランを考えよう!!そうだ!僕らからも何かプレゼント買わせてください!いつもお世話になってるんで。父さんのクレカで!」

ヒカルも乗って来た!!いや考えヤバいぞ!?父ちゃんATM扱いかよ!たぶんブラックカードなんだろうなぁ。


「・・・お前ら話聞けよ。まず服はこれだ。」

バサッと前に出されたのは、


「いや、これはビスケットの硬化マントじゃないですか?」

なんだか嫌な予感がするぞ!


純粋過ぎて意味わかってない竜二は

「こんなんじゃモテませんよ!せっかく先生カッコいいんだからもっとスマートな感じで!もしかして保健の先生ですか? あの人【釣りホタル】で悲鳴上げる位なんでたぶんしょ ブフッ!!」

あ、腹パンヒット!!油断してたな!バカめ竜二!一言多いんだよ!あの件は忘れろ忘れろ!


「市外へ出る。野外演習。チームでだ。」


「!!」

「茂木?みんなでウホ体験の?」

「カガミわかってて言ってんだろ。」

ハ。」


一方、ヒカルは心配みたいで

「戦うんですか?僕たちが?警察の知り合いとかですか?大人とやっても勝てないですよ!」


「いやお前らなら大人とやっても良い所まで行けるぞ。天道は〔しゃもじ〕じゃかわいそうだから佐井寺の妹に武器を貰え。嫌ならそこら辺の木の棒でもいいぞ。」


「絶対貰います。ください。なんだったらもっと早くくれても良いんじゃ無いですか?」

「あ?」

「すいませんもらえるだけありがたいです。」ゴリ先僕にだけ難易度設定ハードなんですけど。

やだよそこら辺の木とか。ネネちゃんうっかり用意し忘れなきゃいいけど。



「野外演習の場所は、ここから北に向かった都市緑化植物園を午後半日休館日にしてもらって翌朝開園まで貸し切ることが出来た。そこで行う。

市外と言っても道路を渡ってすぐの隣町だから自転車で行ける。


お前たちには佐井寺ネネをつける。には俺がつく。」


「「敵?!??!!!」」竜二とハモった。


「話は最後まで聞け。一日目の夕方の5時から翌朝6時まで飲食持ち込み不可。支給する。ゴミは出すな。原則持ち帰りだ。


タイムリミットは13時間で、戦闘あり、降参あり。逃げ回ってもいい。

もちろん隠れてもいい。罠もあり。殺傷は無し。わかっちゃいるだろうが佐井寺のビスケット第3形態は人に対して使う事は絶対ダメだぞ。

まぁ戦闘で傷くらいついても構わないと相手側からは了承を得ている。竜二も極力使わない事だな。お前らはいいか?原則、道場と一緒で顔、急所は無しだ。」



「いやいや、突然すぎません?敵ってなんですか?!逃げ回れって言うけど、何から逃げるか何人いるかもわからないんじゃ寝れないですよ美容と健康の為に睡眠時間は欲しいんですケド!」言ってやったよ!しんどいのやだもん!


「先生その、」ヒカルは情報を欲しがったがそれを遮る様に

「おっと、質問はこれ以上は無しだ。ルール説明は佐井寺の妹にプリントを渡すからそれで詳細を見てくれ。」とゴリ先が手を出して発言を止めた。


「土曜は朝からデズモンアドベンチャーがあるのになぁ」と竜二。

「あ、竜二も見てる?最悪録画でいいじゃん。」


「あれ中学生で見るアニメじゃないよ。」ヒカルがそういってきたので

「あれは大人こそが子供時代を思い出してみるべきアニメだよ。」と返しておいた。





その日の訓練は素直に終わらせて、帰りにまた僕のマンションのエントランスの椅子で座って話をしてたんだけど、ヒカルが

「模擬戦どう思う?」と聞いてきた。

「いや、怖いよ、でも子供相手だし手加減くらいしてくれるよな?」と竜二


「仮に警察の人が来たとして、君らの持ってる武器ってセーフなの?わりと危なめじゃね??

ヒカルの武器なんて最終形態を人に対して使っていーのか?


んでまさかあちら側も本気で来ないよね?警棒とか体術で本気で来られたらヤバくね?」

僕はネネちゃんが何も持ってこなかったら〔しゃもじ〕だから逃げ一択だけど。


「確かに。危険物だな、俺は出力最低としてもヒカルは特に。ネネちゃんは誘導係だし内容を知ってたりして。」と竜二。

竜二と僕が絶対ヒカルとは戦いたくない理由。あれはもうただの中二木刀では無くなった、あの武器はガチでヤバい。


「俺たちがどんな奴らと戦うかくらいは知ってるだろ!」


「そうだなネネに聞こう、まだ時間もあるし下見に行くのもアリかも。カガミみたいに妄想が広がりすぎて現実と離れちゃったらよくない気がするし。」

「ハイゴメンね。」


「それよか一番大事な【目的】ってなんだ?」さすがリーダー竜二!

僕なんてお菓子は何円までか聞こうとしてたくらいなのに。あ、飲食持ち込み不可か。


たしかにゴリ先が目的も無くアクションなんて起こさないぞ。んん~気になる。

ネネちゃん待ちかな。結局三人でうんうん言いながら悩んだが答えは出ず。ヒカルにデズモンアドベンチャーのこれまでのストーリーを話してその日は解散したんだ。


 春休みをゲーム三昧で過ごして剣の伝説2は既にクリアした。ボス戦の音楽が好きだったなー。ちなみにボス戦BGMの題名は「危機」らしい。緊張感あるよね。


そして剣の伝説3に取り掛かってかなり経つ。なかなか全クリできず時間がかかっていた。何故なら


「主人公6人もいるんだもんなぁ、あと3人かぁ~。今日も頑張りますかっ!!」


全員分のストーリーをクリアしてこそ見える物があるのさ!たぶん。

それにやっぱりお残しはダメだよね。ゲームクリエーターさんに失礼だよ。

なぜここまでやるのかって?良ゲーだからに決まってんじゃん!


そうして僕は夜も徹夜に近い頑張りを見せ、途中で何回もアークに睡眠を促されながら剣の伝説3を無事全キャラクターでクリアしたのでした。めでたしめでたし。



いや、違うな。ゲームのシステムだからしょうがないんだけど一個だけ思った事がある。


「このゲーム3人のパーティで最後まで戦うけど6人で力を合わせた方が合理的じゃね?」

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