第88話 会遇期③ 下見
「おはょう~」あくびをしながら竜二の家のチャイムを鳴らすと
「カガミ徹ゲーか?眠そうだな。」と言いながら竜二が出てきた。
あ、竜二のお母さんも出て来たぞ。
「あ、カガミ君おはよう!!」
僕は営業用の顔に切り替えて
「おはようございます!!今日もキレイですね!竜一兄ちゃんの高校合格おめでとうございます!」と言っておいた。
「あらありがとう!休みの度に竜二が入り浸ってゴメンね~。週末の演習だっけ?自衛隊みたいね!無理せず頑張ってね!
あ、天道さんに【さくら】のコメントしといたって言っておいてね~私がこんな事しなくても結構SNSでは人気なのよ!」
「は~い。」
母さんなんか悪いことしてるな。
「アーク起動 検索 【母さんの悪事】。あとで教えて。」
「仰せのママに。」あ、イントネーション変えて来たな!ママだけにか!?僕のアークは今日も優秀だね。
「母ちゃん行ってきま~す!」
竜二と佐井寺家に向かい、佐井寺兄妹と会って、メイドの春日さんの運転する車で揺られる事数分
隣町の「ココが都市緑化植物園かぁ~。」 模擬戦の場所に着いた。
春日さんは2時間後にまたここに寄ってくれるみたいなのでひとまず散策しよう!って事になって。
そう!今日はお客さんに混じって模擬戦の場所の下見に来たんだ。
入口のパンフレットを貰って広さを確認する。24ヘクタールの広さで長径400~500メートルだって、へ~と思いながら入場料を払い中に入るときれいに整備された森が広がっていた。
僕は「なんだかここ見覚えがあるなぁ。」家から近いし小さい頃に来たのかなぁ?
「俺も来たことあるぞ!ここでドングリ集めてた。松ボックリだったっけ?」
「私達もあるよね!お兄ちゃんが凍った池の上に乗って割れたからびしょ濡れになっちゃってすぐ帰ったわ。」
「バカだろ。」「バカだったよ!」「バカですな。」
「活用形のテストにバカは出ないよ。」
わっかんねーぞ!冷静に返しやがってヒカルめ!
「あ、当日の予定ね。」そう言ってネネちゃんは手提げから透明のファイルを取り出し、竜二にプリントを手渡した。そして僕とヒカルには透明のファイルのままポンッと渡された。
おぃ兄貴!妹に平等の概念を教えておけよな!
リスや羊のかわいいイラストが描かれていたプリントにはこう書かれていた
春の模擬戦!~今こそ周りと差をつけるチャンス!~
場所 『都市緑化植物園』
日時 17時~ 翌朝 5時まで
注意事項
①北チーム 南チームに分かれて戦います。
②チームフラッグを敵チームのスタート地点に挿したら模擬戦終了。(場所は傘立てです。)
③後遺症の残るようなケガは絶対禁止。危険を感じた場合、降参も時には必要です。
④敵の首筋に手刀もしくは武器を付きつけたら無条件でリタイアです。
⑤戦闘内容の禁忌事項は道場で話した通りです。
⑥夕飯は水とケロリーメイトを1つずつ支給します。
⑦持ち込める物はスマホ、武器、防具 以上。使い方は自由です。
⑧降参およびリタイア時、スタート地点で待機して下さい。再度戦闘への参加は認めません。
相手のフラッグは奪えません、持ってリタイアした場合、その場で突き刺す事。フラッグの受け渡しは何度でも可能です。
先生からの一言
【負けたら恥ずかしくて痛ーいお仕置きが待ってます。】
見終えた三人が口にしたのは
「「「絶対ケツバットじゃん!」」」
「え?俺たち負けるの前提の模擬戦だろこれ!!絶対強いんだよ!警察OBとか!?」と竜二
「ていうかイラストと内容のギャップありすぎなんですけど!なんなのこれ!サブタイトルダサいし塾の春期講習のチラシ丸パクリしたみたいじゃん!!!」
「行きたくないんですけど!ベットで寝たいんですけど!」
三者三様に発した言葉は
「え~~っと。・・・もうツッコミ終わった?」ネネちゃんを困らせていた。
「「はい。」」 「すいません動揺してしまいました。」と代表して僕が謝った。
「とりあえず私も嫌なんだけど南チームの引率をすることになりました。ヨロシク。
私は寝るよ。春日さんに虫が来ない一人用シェルター用意してもらうんだ~。
ただプリント以外の内容は一切知らされてないんだよね。」
「そうなんだ、ネネも知らされてないんじゃこの少ない情報の中で作戦を立てる他無いよね。だからこその現地調査なんだけど。」とヒカル
「ネネ様我々にどうかお知恵を、はは~。」僕はゲザリかけたんだけど、ネネちゃんは
「そういうのいいんで。」と軽くいなされた。
「ネネはある程度予想付いた気がするんだけど、それもゴリ先に確認しようとしたら質問と口添え禁止でって言われて、え~って言ったら、お兄ちゃんに嘘バレるだろって返されたんだよぉ。」しょぼんとなるネネちゃん。
きっと竜二はゴリ先に怒ってるだろうなと思い横を向くと、ネネちゃんのコロコロ変わる表情を見て楽しんでた。
「じゃあ予想も聞けないの??」と聞くと
「ダメみたい。ごめんね。」と言われ諦める事に。
トコトコ南に向かって歩いて行くと
「結構高低差があって草木も多いから隠れながら敵陣地まで行けるんじゃない?」とヒカルに聞かれた。
「僕なら行けるかも。北チームの人数によるかなぁ。」
「攻めと守りで最低2人はいるだろ?むしろ大人でそれ以上いたら絶対勝てないよな?」
「そうだねその場合1対1は避けたいけどこの広さでまずお互い見つかるのかなぁ?」
「僕はたぶん見つけれるよ。一般客が入ってこないなら尚更サーチしやすい。たまに歯でカチカチしてくれたら二人を判別しやすい。出来る??
」
「できる!そうか索敵能力の鬼がいたよ!」
「ヒカルの特技忘れてたわ!」と僕と竜二
僕は
「じゃあ開始と同時に僕ら二人が走って敵の人数とその他得られる情報を調べてくるからヒカルは南チームの傘立てを見張ってて!それで離れてる間はスマホハンズフリー状態で無線みたいに連絡を取り合おう!いっぱいが攻めてきたり、その他なんかあったらすぐ戻るよ」
「おう!いいなそれ!俺たちは一緒に動くか?それともバラけて範囲を広げる?」
「僕らが一緒に動くメリットは敵が一人の時に2人だと牽制できるね。それでもかかってくる敵なら一旦引いて相性を考えて作戦を練り直すべきだ。
デメリットは向こう側に敵と遭遇しない道を多く作ってしまう。」
「そうか、そうだな、でバラけて動くメリットは、遭遇はしやすいけど囲まれたらヒカルの所へは行けない。」と竜二
「もともと敵の把握のために行くだけなんだから、シンプルに考えると攻撃の意志は無くて守る為の行動だよね。分散で攻撃されるルートを阻害するのも良いんだけど、2人が無事で打ち取られない方が優先度が高いんじゃない?」とヒカルがまとめて
竜二は
「よしっ!まずは俺とカガミで一人でも顔を見て、特徴を捉えて持ち帰ろう。人数把握は出来たらしたいけど、そこは可能な限りで良いよな!」と言ってまとまった。
顔を覚えるかぁ・・・。あ。
「フード付きのパーカーとマスクで僕たちの情報を隠そう。向こう側はしないよなぁ?堂々と来るだろ。大人だし。」
「OK!良い案だ!」
足を動かし、口を動かし、いろんな意見と色んな作戦が飛び交う中、ネネちゃんは優しく聞いてくれてて微笑んでいた。
僕らのスタート地点であろう場所に着くと回れ右してコースを変え北の入口までまたべちゃくちゃ話し合いながら戻ったんだ。
イメトレは出来たぞ!なんだか模擬戦が楽しみになって来た!!
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