第86話 会遇期① 伝説の剣

テスト期間がやっと終わり無事2年生への切符を掴んだ中1最後の春休み。まぁ義務教育だから普通なんだけど。


ヒカルの木刀は昨日ネネちゃん達研究所グループが【アップグレード】してくれて、若干重くはなったけどビスケットの技術を盛り込んだらしく機械が付いていた。

たぶん【あやしいパッチ】を当てられたんだと思う。


ツマミが付いたヘンテコな電子機器が持ち手の近くにちょこんと小さくついてて束のようだった。



機械のせいで【龍と獅子】の龍が隠れてしまって見えている部分が【獅子】だけになっているのが少しかわいそうだったから、後で竜二と反対側の【天と地】の【天】を彫刻刀で削って消してに仕上げてあげよう!

【地&獅子】グランドライオン!丁度いいじゃん。口癖の『ケロ』もぴったりだ!



武器をいつものようにゴリ先に振るう二人が警棒や木刀でバスバスっといい音をミットから鳴らしている間、僕はひたすらしゃもじを振り続けた。



竜二からは「カガミ笑ってるけどそれ楽しいか?」と聞かれ

ヒカルからは「しゃもじで叩くたびに笑うんだもん。気持ち悪いよ。」と言われた。


?・・・然楽しく無いんですけど。」しゃもじだからとかけたよ。


そんな〔しゃもじ〕も今や10本はゆうに超えてバキバキと僕に折られ続け、結局プラスチックになりましたとさ。

持ちやすいし滑らないから木が良かったなぁ、脱プラ!ストップ海洋汚染!!なんちゃって。


「自分がおかしすぎてわらっちゃうのさ。」とため息が出た。




そんなこんなで使い方の基礎ができてきた春の夕方。


訓練と同時刻にネネちゃん急便から追加のお届け物が来たんだ!本人と一緒に。



「りゅーじくーん!あ、お兄ちゃんと・・紳士。」

おい!変態って入れるスペースあったよね!もう言えよ!気になるから言っちまえよ!


「どうしたの?珍しいね道場来るなんて!」と僕。ヒカルは

「これど~やって使うんだよ、説明書とかないの?」と言って伝説の剣をネネちゃんに突き返しそうだった。


ゴリ先も質問をした

「できたか?佐井寺ネネ1人か。」


「はい!こんばんわ!副センター長は他の人の武器に必死で、私一人で来ました。コレどうぞ!」


と段ボールに入れられたモノを渡してきた。


ネネちゃんが自転車に積んできたモノは結構重そうだったが、逆に言うとネネちゃんが3人分のそれを持てるくらい軽いモノとも言えた。


それは以前言ってた【ビスケットのマント版】だった。


ネネちゃんが以前話していたビスケットってのは何だか磁気で硬化する液体金属ってイメージなんだけどネネちゃんのアカデミックな説明は極力割愛して要点だけ教えてもらったんだ。



「このマントね!心臓近くのボタンを押すとあら不思議!硬化します。この硬化は再度ボタンを押すか、破られたりして内容物が質量を変えてしまわない限り暫く硬いです。

大体、硬化していれば至近距離の銃弾が防げるくらい。傷ついて少しでもかけたら10分くらいで液体に戻るわ。


材料はカーボン繊維の隙間に等間隔に液体金属を入れて髪の毛サイズの磁力を持った糸ですべてを繋いでるの。硬化金属自体の重さはまぁまぁ重いかもだけど、それはどうしても減らせなくって。ゴメンね。」


どうぞと各々渡されたマントを手に取った竜二は、ネネちゃんに会えただけでめっちゃ喜んでた。


マントを羽織ってみる。カーキ色の地味なマントは金属を着ているというよりは分厚くないのに分厚いマントを羽織ってるみたいな感じだった。でもまぁこれなら動けるわ。




ゴリ先が

「佐井寺が木刀の説明を受けてる間、竜二と天道で実践だ。顔 急所は無し、手足、ボディのみ!硬化マントのボタン押してみろ!」


ふたりして「「おしてみよう!ポチッとな。」」と言う。ここは鉄板でしょ。


「おぉ~~動きにくいな~。ボタンの位置替えれない?」

「はいは~い!竜二君はボタン位置変更ね~。」とネネちゃん


「結構硬化の解除に時間かかるんだ。」


「えっ?5秒だよ?カガミ君。結構速くない?」

「そうかなぁ。」


「準備いいかー。んじゃ、はじめ!!」ゴリ先が開始の合図を出す。



「OK!こいよ竜二!!」

「へいへい!いくぜ!!」

僕らは初めて防具を持っての対戦となった。



竜二のライトニングは最小出力でスタンガンより若干弱い電流が流れる。

結構痛いスタンガンで一度喰らったら文字通り、

では無いにせよ筋肉が攣縮れんしゅくするらしく、行動不能の時間が出来て警棒を突き付けられ負けるパターンを数回経験した。あん時の竜二の嬉しそうな顔はもう見たくないね!悔しかったなぁ。



今回は服は金属だからまとが増えるなぁと思っていたが、ネネちゃんが

「あ!カガミくーん、そのマント耐電処理してるから~!」と言われた。さすがだね!

かゆい所に手が届く!


竜二の腹に向かってしゃもじを投げるがマントに当たってカツンと音が鳴り畳に落ちた。硬化してたか、その間に走り寄って腕を叩こうとするもガードされる。


落ちてるしゃもじを拾う目的でスライディングするが

警棒で腹を叩かれるビジョン


急いでマントのボタンを押して硬化させスライディング半回転で背中にゴツン!防御できた。いいねこれ!




「悪りぃなカガミ!ライトニング使うわ!」

竜二が右足で右尻を蹴りライトニングを起動してきた!!慣れたもんだな!

まぁ避けても良いんだけど性能評価しなきゃね。


接近して腹を蹴るもマントだけを蹴ってる感触。

そこへ竜二のライトニングが通電!!

と思ったけど

やっぱり通電しないや、竜二の困った顔が浮かぶ。よし!一本貰った!!!!

マヌケな竜二の顔を横目に足払いして横に倒して首筋に、しゃもじを当てる。


ゴリ先の「そこまで!」の声。


ざまーだぜ竜二!ネネちゃんの前でのしてやった!!と思いネネちゃんを見るとマントの性能に満足したのか、次にはもうヒカルに木刀の使い方をレクチャーしていた。




そこからの訓練は愚直に木刀の扱い方を覚えて使いこなして来たせいもあり、ヒカルがどんどん強くなってきた。なんせリーチが違う。木刀としゃもじ。一目いちもく瞭然りょうぜん。あ、一木いちもくか!


竜二も場合によっては僕に勝ち、たまにヒカルに負ける。悔しいけど楽しかったんだ。確実に強くなれてる、一緒にいる奴がいるだけで成長の指標になった。


そんな僕らをゴリ先は僕達を微笑ましい目で見てくれてたような気がする。

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