第85話 露見期⑤ 嘘のうっかり

訓練が部活のようになって慣れてきた季節の変わり目3月。


練習の合間の休憩中で三人ともうっかり財布を忘れた事にしてジュースをご馳走になっていた僕らにゴリ先はテクニカルなアドバイスをくれた。


「接戦ってわかるか?互いの力が同程度で勝負がなかなか決まらない状況。そういうのは実際あんまり経験したことが無い。すぐ勝つか、すぐ負けるか、ほとんどどちらかだ。


相性や作戦が一番の勝敗を左右するファクターかも知れないと俺は思ってる。


だから去年の夏のエーセブンは結構悩んだ。実際セビエドに当たっていたら初見しょけんかわせず死んでたかもな。

まだまだ相手の力ってのは見かけだけでは判断つかないもんだなぁって思ったわけだが。


ここでお前らに問題だ。いざ敵と会ってしまいました。相手との相性は何で見分ける?」


ヒカルが頭の回転を生かして初めに答える。


「体格、年齢、性格、武器、得られる情報を総合判断して、まず正攻法で戦うふりをして軽くジャブを入れ切り崩せるかを考えます。」


「それだけじゃ無いかも知れんがまぁ正解!じゃあ竜二!それで切り崩せなかったら?」


「撤退!!熱くなるな!ですね!」


「これも正解!賢いな。だが実際熱くならずにそれができるかが一番重要だと思っとけ。」



「天道!次はお前だ。」

「ギクッ。」わかってたからあえて口に出したよ。


「相手の情報が極端に少なかったら?」


「こちらの情報も少なくする。情報量は同条件で戦いたいですもんね~。あとは1:1で戦わない。現代武器を除けば、ゲームと違って広範囲攻撃なんて現実的には少ないと思うんで敵一人を味方複数で相手取る方が理にかなってますよね?」


「正解。そうだな天道の言う通りだ。一番大事なことを忘れるな。【仲間を頼る】。お前たちならできるんだけどなぁ。」


どこか考えるような物言いでゴリ先は言葉を発したんだけど、それに引っかかりを覚えたヒカルが


「なにか僕らに不安でもありますか?」


「ん?あぁ特にない。お前らに今更、意思確認するつもりは無いが、友達は見捨てるなよ。後悔が小さな波になり時間をかけて津波になる。」


その時僕らは思った。

8年位前の東京の一家襲撃事件でゴリ先の失った同僚の桃山さんはきっと友達だったんだと。



こんな時まっすぐな質問をできる竜二はきっと俺たちのリーダーだわ。

「桃山さんとは、どんな関係だったんですか?」真剣な目で見つめられたゴリ先は


「!!・・・そうか。知ってたんだな。どこで知ったんだジルか?」


「いえ、僕のI-AMS インタラクティブ アーカイブ システムです。」僕は自分のリュックに足を運ぶびリュックとスマホを持ってきて先生の前でスマホをぽちぽちする。


ゴリ先は何だスマホか?って顔をしてたので、僕は早々にアークを立ち上げる事に。


「対話と記録特化型のAIです。アーク起動。ここにいる人は全員僕の仲間だ。」


「こんにちはカガミさん。そちらの方のお名前をお聞きしても?」


ゴリ先は自分が聞かれたと思ってなかったみたいで戸惑っていたので僕が説明する。


五月さつき 勝利しょうり先生だよ。アークが過去のニュースで見つけてくれた警察官と同一人物だった。」

「そうですね。99.9%の確率でハズレは無いと思っていました。」 自信あるねぇさすがアーク!


アークはこう言った「初めまして五月さん。警察とのパイプはまだおありですか?」

「あ、ああ。初めまして。パイプねぇ。多少の融通はきくハズだが?」


「桃山さんの事件について詳しく解析できるかもしれません。かかりつけ医の方に聞きたい質問があるのですが、一度コンタクトを試みた際、守秘義務の為、教えてもらえませんでした。警察の権限にて再度調査を希望します。」


「そうか。」少し考えたゴリ先は

「わかった。アークさん!こちらからもよろしく頼む。以前つながりが出来た特殊捜査のオッサンに聞いてみるわ。」


「ありがとうございます。」


僕たちは口を開けてアークとゴリ先のやり取りを見ていたが、今の対応でやっぱりあの事件を気にしてるんだと納得してしまった。

 

ゴリ先は「へ〜ITの技術は凄いねぇ。まぁお前らに変な気を使われてもかなわねーから、言わせてもらうと8年以上前俺はクソ弱かった。」


「え?マジですか?でもゼロと戦って死ななかったんですよね?」と僕は口を滑らせて。


「そこまで知ってんのかよ!ソースはまたアークか?」とスマホを指さされた。


「あ、はい。すいません。」軽率な発言だったので竜二とヒカルに睨まれたけど、まぁそんなんで怒るような器の小さい人間じゃないのはみんな知っていたし信用してる。

先生の話の続きを期待して待った。


「ゼロって奴とは戦ったよ。おぞましい程に強く感じた。何をしても勝てる気がしなかった。丸腰だったのにだ。


支給された拳銃を抜いて思ったんだ、絶対に当てれない。動きが早いとかじゃなくて何だか当てれない気がするんだ。


そして奇妙に思ったから戦闘の最中さなか聞いてみたんだ。止まれ!本気で撃つぞ、クソッ!お前は誰だ!聞こえないのか!怖くないのか!って


俺が日本語は通じないかも知れないと思って発した声にマスク姿の奴はこう答えた、【コワい?】あぁ知らない感情だ。俺はレイドラのゼロだ。」





「!!!!!!」僕らは一緒になってビックリしたんだ。なんで!?


「以前自己紹介をした時、天道が同じ事を言ってたから一瞬戸惑ったんだ、動きが何となく似てる。ゼロの関係者かも?って

ここで殺すべきか?って。まぁなんだ、怖い思いさせたな、スマン。」

ゴリ先の感情がした瞬間、僕は思った事が口に出た


「え~~~あっぶね~!!!無罪だよ!あっぶね~~!!いや、コワくは無いんですが。」ゴリ先結構ヤバいよ!血の昇り方が竜二系だわ。


「謝ってるだろ。まぁ最初に橋で出会った時も何だか似た雰囲気出してた気がしたから、行動によっては潰してたかもしれない。

お前、一瞬で何パターンもの行動をしようとする癖があるだろ。目がそう言ってるんだ。恐らくイチゴサイダーの特徴なんだろうがトライ&エラーをしてるのが高速で動く目でわかる。まぁ、俺もお前に手を出さなかったんだし、結果オーライだな。」


僕があの時見たビジョンは間違っちゃいなかった。ゴリ先よく見てるんだな。

「結局、ゼロには生かされたんだよ。やられたことに関しては無様だが恨んじゃいねぇ。おかげでそこそこ強くなった。」



「ところで天道、そのままいつもの訓練のジャンプしてみろ!」

「え?はい!」そう言って条件反射の様に僕は両足に力を入れた時、ヒカルと竜二が僕に手を伸ばしてきて、やめろ~!って止めるビジョンを見たんだ。


そのまま何も疑わずに全力でいつものジャンプをしたら2人はビジョン通り

「「やめろ~~~。」」って言ってた。何がだよ!と思って考え出した時は若干周りがスローに見えた気がする。

「あっ、」かなりアホな声で気づいた時にはスタッと両足が地面についていて、


着地した時には持っていたリュックの中の財布から鳴り響く小銭の音がジャラリン♪と心地よく聞こえて、嘘を付いていた事がバレた3人は道場のど真ん中で生のおしりを出してゴリ先の飲み終わったペットボトルでフルスイングケツバットを喰らいましたとさ。そして


した嘘はこの先一切使えなくなってしまった。

「いって~~~!!!」×2人前 

「おい!バカガミ!」痛みがないって素敵ね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る