第81話 露見期① 僕はノーマルタイプ
空の色が透き通って見える12月。今年も残すところあと少しとなった。そんな
クリスマスも近づく寒い日に、訓練が無い土日に遊ぼう!と言う事になり、いつもの4人で市で一番大きい夏祭りが中止になった記念公園が近くにあるショッピングモールに出かけた。
「とうとう来ましたよ~!!初めてなんだ!!ドキドキするね!お~ここが水族館だよ!!ホワイトタイガーがいるんだよね!?しっかり予習してきたんだ!!結局、水族館なのになんでホワイトタイガーがいるのかわからないんだけど名物【ウォーターゼリー】が食べられるのはここだけなんだ!!早く見に行こう!!」
僕は小ぶりの水族館が見えると振り返って3人の方を向き、観光地をガイドするツアコンの様な仕草で水族館を紹介した。
「あいつこういう予習だけは欠かさないよな。たぶん味わかんないけど雰囲気に負けてオイシー!って言うぜ!」と竜二の声と佐井寺兄妹の笑い声が聞こえるも、僕は無視してチケット売り場に並んだ。
「カガミ君はここ来るの初めて??」ネネちゃんはクリスマスシーズンだからか、アカ色のダッフルコートに身を包んでいたんだけど
「あ、うん。そうだよ。」
僕はチョット苦手な色だったから少ししんどかった。
竜二はアカ色が好きだからか
「ネネちゃん今日めっちゃ可愛いんだけど!コート似あってるよ!!」ってあった時言ってたもんなぁ
水族館に入ると早速僕はスマホを取り出し、船上カメラマンとなって無言で写真を撮り続けた。
いやボソボソと独り言を言ってたみたいだ。 自分でも気づかなかった。
「エビってキレイだなぁ。おいしいのにキレイだなんて。マヨネーズと相性が良いって事知らずに生きてるんだよなぁ。味わからんけど。」
「あ、クラゲって何の為に泳いでるんだろう。
「結構、毒持ってる魚いるよなぁ、人間も進化したら【どく】タイプが出てきたりして。
まてよ、ブイーズでもまだ出てきてないから先に【でんき】と【ほのお】タイプかなぁ。【みず】はきっと人魚だろ。進化条件はやっぱ石かなぁ。
あ、おまえってまさか、でんきタイプか?なぁ竜二?石持ってんのか?胆石か?。」
無視。竜二はきっと他の水槽見てて集中してんのね。聞いてないや。
場所を移る事に海への不思議と感動が湧いてきて
「知ってる物でも実際に見るってやっぱりすごいんだなぁ。」と呟いてた。
隣で「うん」とか「ふーん」って声が返ってきてたから周りに竜二がいると思って話したんだけど
「カガミは何タイプになりたいんだ??」とヒカルが聞いてきた。
「ヒカルかーい!」と突っ込んだ後 残りの二人が見当たらない事に気付く。
「ネネちゃんと竜二はお楽しみですかぃ?」と聞くと
「まぁ、それくらいいいじゃん。僕らは普通に楽しもうよ!」と言ってきた。
「そうだね。あぁタイプね、僕はノーマルタイプでいいよ。パチモンの笛で起こされるまでカビゴリンの様にずっと寝てたい。」
「へ~!ドラゴンタイプかあくタイプって言うと思った。またノーマルってなんで?」
水槽を眺めながらヒカルと足を進める。
「確かにサザンガクドラは好きだけど、父さんがさぁ、【普通】に過ごしてほしいって言ってたんだよ。僕もそうして生きていたいって思うし。」
余談だがサザンガクドラとは頭・右手・左手が3ずつあって九九の要領で
「なんか大変なことが起きるまでにさぁ【普通】を満喫しつつ、大事なものが無くならない様に強くなりたいんだよ。だからゴリ先の訓練も耐えれてる。二人がいるのもあるけど。」
ヒカルはいつも僕の話を聞いてくれる。
「そうか、カガミは中二病だから勘違いしてたよ。」それ余計な!
「まぁ仮にパチモンの世界で【ノーマルタイプ】になっても僕なんて精々【モタモン】だよ。たぶん。」
ヒカルは
「【モタモン】ってあのモタモタ遅くって、技が1つしかないモンスターだっけ??カガミは動き速いじゃん!」
「動きに関してはモタモンは結構速いよ!その速さでもって一目散に逃げるんだ。技は【へんしん】しかできないけどね。」
「あ!そうそう!【へんしん】しか技持ってないよね!でもスピードは名前通り遅かったような。カガミ程パチモンやり込んでないからわかんないよ。」
僕はそうだよなぁ、と思いつつ返事をする。
「モタモンは【スピードパウダー】を持たせるとスピードがなんと2倍になるんだよ!!」
「へー!知らなかった!早いんだったら確かにカガミだわ。」とヒカルも納得したご様子。
僕は言いながら思った事を口にする
「いやでも案外、普通って中々難しいもんだよね?」
「そうだよなぁ~。ネネと話してたんだけどネネもこの日常はいつ拮抗状態が崩れてもおかしくないって言ってて。気になって何の事か聞いたんだよ。
そしたら研究所の噂話を聞いたみたいで、世界で指折りの医師や研究者・科学者たちが何人も失踪してるみたいなんだ。
それが連れ去られたわけじゃ無くって、自分で置手紙をしていく律儀な人が多いみたい。その手紙には【ハイドラの思想が理解できた。世界の為に働く】みたいな内容だったみたいで世界も警戒を強めてるって。」
「へ~。それってヒカル的に【
「1000コワーって!!初めて使ったよ!その単位!」
「1000コワ―かぁ。1ヤベー相当に匹敵するのかぁ。そこそこ怖いんだね。」
「わかるカガミもどうかしてるよ!んでどんどん知らない単位を増やすな!!」
「へいへーい。」わからない【怖さ】を数値化して得られる情報だってあるんだけどなぁ。
楽しく話しながら進む二人。また別の空間にやって来た。
「うわ~これすごいね!!」
ヒカルが上を見上げて指を指す。
そこには暗い空間に浮かぶ様に見える球体のオブジェクトにプロジェクションマッピングで映像が流れていた。
地球の生き物の歴史が、映像と音楽だけで表現される幻想的なシアター。
僕ら二人は
スゴイキレイな映像だった。自分が今どこにいるのか忘れてしまう感動があったんだ。でもそれを見てふとまた疑問が浮かんだ。
「進化って何なんだ??」
映像を見終わったヒカルが
「え?またゲームの話??」と聞いてきた。
「いや、違うんだけど、さっきの映像さぁ、いろんな生き物が姿かたちを変えて今の地球にいるだろ??
流れるように命が形を変えてきたけど、実際にはその途中で進化が何回もあって、映像はシーンが変わって進化が済んだ動物になってたけど、
ほんとにゆっくりゆっくり時間をかけてフォルムを変えて来たのか??それこそパチモンの【進化】とは言わないけどココ!って所で急に変わるタイミングがあるんじゃないのか?見かけはゆっくりとしても頭の中身は。」
「え、急にカガミが真面目になり出した。と思ったら結局ゲームに戻って来た。
でも
僕は感動を残したい派なんで追及する映像じゃない気がするんだよ。さっきの。」へ~そうゆうもんかねぇ。
そう話しながら道順に従って足を進めて
なんやかんやで中間ポイントのホワイトタイガーとミニカバがいる広間までやって来た。
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