第70話 修練期⑩ 戦略的な鬼になれ!

更にその翌々日。前回に引き続き「変態紳士 天道」の二つ名がパンに無駄に広げて塗ったピーナツバターのごとく広く知れ渡っていて僕は学校の注目を欲しいままにしていた。


僕は昼休みが始まったと同時に校内放送で呼ばれて、担任の先生と生徒指導室で2人で話していたんだ。



僕の周りには悪意が無数に潜んでいた。その代表をわかりやすくナンバリングすると


①ヒカルがなぜか両親に事の真相をすべて話していなかった。

②クラスの女子が【釣りホタルなわけないじゃん】って言ってた。

③その女子がネネちゃんとの会話を聞いてて、他の人に伝える為にチョイスした一部抜粋の切り取り部分が最悪だった。

そして

④ヒカルがなぜか両親に事の真相をすべて話していなかった。


同じものがあるって??大事なことなので二度言いました。そんだけ根に持ってるって事だよ!!



今、目の前に対峙している先生に対してチョットむかつくのは僕が短気だったのか、あるいは父さんが売れない芸人で天丼てんどんネタを好んでいたが、それを担任にダメだしされたから嫌な気分になったのか・・・。

詳細は謎だ。


ちなみに天丼とは同じネタを2回繰り返す事によって笑いをとる僕も好きな非常にタイミングがシビアなテクニカル技なのだが。由来は、天丼には海老が2本入ってるから。いわゆる2度ネタの事である。



「天道君、私は事実を知ってるわ。」ややご立腹気味の先生に返す言葉も心当たりも無かった。

「はぁ。」

何で呼んだんだよ!今すぐ解放してください!


もうすぐ結婚する将来安泰な担任の先生を痛めつける方法は知ってますよ!


ヴァレリア解放戦線と同様に結婚式というパレードに襲撃をかけてやるぜ!!

事と場合によっちゃ僕でもオウガになる覚悟だって・・・無いけど。


ここは戦略的タクティカルにかわそう!それが出来たら僕はこの悪意の沼を抜け出せるきっかけになる。そんな気がした。


担任の先生が語り出す。

「私はね、あれはホントに釣りホタルだったんだよ!ってもう一度クラスのみんなの前で言いたいの。」いや、別に言わなくてもいいけど、むしろホントにって言われると逆に疑っちゃって傷口に塩なんですけど。


「でもね、天道君が教室であんな事を言ってると、みんな信じないし、別件で先生たちも天道君を指導しなきゃいけなくなるの。」


「別件??あんなこと???先生、話が見えないんですが、どういうことですか??」


「そう言ってとぼけるのは良くないよ、中学生なんだし素直に謝るべきだよ!」


「すいません先生、僕が何をしたか聞きたいんですけど。」


「佐井寺さん、妹さんの方ね、あの子を金銭で買収しようとしてたんでしょ?そうゆう事はね、誠心誠意お互いで向き合って進めるお話で、お金じゃないんだよ?

天道君は成長過程で今そういう時期なのかもしれないけど、同意が無いと犯罪になっちゃう事ぐらいわかるよね?」


僕は開いた口が塞がらなかった。そしてこいつは本物のバカだと悟ったんだ。全国の先生すいませんホントこいつだけなんです!サリバン先生の様に尊敬してるんですよ!でもこいつだけは~~!!


おっと熱くなるな!竜二がゴリ先に言われてたな!人のふり見て我がふり直さなきゃね。


担任はまだ喋ってる。

「誰とは言わないけどクラスの子が 【いくら払えばいいんだい!?】って言ってたって。二回もだよ!?ホントに二回も言ったの?


しつこく言ってたから間違いないって先生に報告があったのよ。ホントなら私もチョット怖いわ。

だから確認したかったの。」いやもう確認前から犯人扱いだったじゃん!!

天丼ネタをそこだけ器用に切り取って先生に伝えるなんて、悪意しかないなそのクラスの子。


担任の先生は僕の表情を読み取ったのか


「あ、ダメよ!報告してきた子を恨んじゃ!その子は悪くない!天道君は学年でも賢いんだから、誰が悪いかはわかってるわよね?」 と言ってきた。しょうがなく僕は


「あ~~~~。言いました。」と言った。


しまったなぁ、僕のミスか。いや違う違う!!担任のミスの方が圧倒的に多い!ここは戦略的にだ!


「とりあえずネネちゃんか弁護士呼んでもらって良いですか?」


ネネちゃんに弁明してもらおっと。こいつ僕の話なんてこれっぽっちも聞く気無いし。

そっちの方がはえーわ。もしくは佐井寺家の権力を使ってこの教師も辞めてもらおうかな。おっと!ヒカルに思考を乗っ取られる所だった。権力は奥の手だ!


担任は「やっぱりね。」と言ったんだが・・・なにが(やっぱりね)だ!!弁護士のくだりもツッコめないくせに!


「いいわ佐井寺さんに来てもらいます。でも暴力は何も生まないよ。一応、男の先生も来てもらうから!いい?ここで待っててね!逃げてもいい事ないから!!」


そう言うと勘違い担任は急いで職員室に向かって走り、放送でネネちゃんを職員室に呼び出した後

暇な男の先生を一人確保して、生徒指導室に向かわせたようで。


担任の先生より先にやってきたのは僕のビジョン通り【ゴリ先】だった。




「なんか、Hな事件が起きたかも?って話で暇な俺が呼ばれたんだけど、また天道かぁ。」


「ダイジョウブです!起きてませんから!」


「天道ってさぁ、この部屋好きなの??」


「んなわけないでしょ!前回同様、ポンコツがポンコツにポンコツな内容を話してこの有様ですよ!」


「ふ~ん。俺が来る前から入り浸ってたの??」


「ご、、五月さつき先生は味方だと思ってたのに!!!!」今はゴリ先はやめとこう、ゴマすりに徹するんだ!! 


「へ~まぁ話は聞いてやるよ。」良かった、冷静に聞いてくれそうだ!少し安心した時、勘違い担任とネネちゃんが一緒にドアの前まで来た。


ドアの少し向こうで「だから先生の勘違いですよ~」と遠くからネネちゃんが僕をフォローする言葉を言ってくれてありがとう!!と思ってたんだけど


「カガミ君はまじで変態ですけ・・・・ど・!!!」と言いながら

ドアを開けると僕がいる事に気付いてびっくりした顔で先生の方を見直して

「なんで本人いるんですか??」って小声で聞いてた。


担任は「言ってなかったっけ?」って言って気まずそうなネネちゃんと一緒に椅子に座ろうとしてるそのすぐ横で、ゴリ先は腰のあたりを手でワサワサと探って探し物してたから、死んだ目の僕はなんとなく気になって


「先生財布でも忘れたんですか?」って聞いたら、ハッとした顔のゴリ先から恐ろしい言葉が返ってきたんだ!





「あ、もう無いんだな。手錠探しちまった!癖って怖いな。ハハハ!」って言ってた。

おいおーい!癖よかあんたの行動の早さの方がこえーよ!ちょっと前なら本当にパクられるとこだった!



ややあって、ネネちゃんが僕を必要以上に美化してくれた話が終わり、みるみる顔が青ざめて言った担任の先生からは【納得】と【反省】、【謝罪】の3点セットをいただきました。


その間ゴリ先は非常に疑わしい目で僕の事をじっと見ていたとさ。

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