第69話 修練期⑨ 知れ渡る二つ名は英雄の証

チョットだけ、いや、数分だけど早く起きれたから、たまに走ってるコースを朝から走る事にしたんだけど。


マンションの下に降りてさっきの夢を思い出した。何だか気分を変えたくなって僕の家からも近いし、道場のある公園の外周を軽く走ろうと思っていつもよりチョット足を延ばしてランニングに向かったんだ。


「1周1.5kmって言ってたなぁ。5周で7~8㎞かぁ。まあ朝だし散歩がてら1周だね。」


僕は誰もいない朝の公園外周をのんびり昨日走った通りに一周しよう。最初はゆっくりでいいやと考え歩き出した。


「7~8㎞、結構しんどいよなぁ。月水金の週3回かぁ。」誰もいないのをいい事に思わず口にした。

すると陸上の強化選手みたいな出で立ちの男子がたぶん同じコースを走ってて、ブレーキをかけるように足を止めて声をかけて来てくれたんだ。スポーツマンシップっていいよね。でも


「おはよう!めっちゃ汗かいてるみたいだけど何周目?俺5周目だけど結構速いのに一回も追い越さなかったからお前も早いんだな!」


え?何こいつ。中学生?高校生?それよかいきなりため口か?

こいつは常識を持ってないのか?それとも太鼓を持ったことが無いのか?

僕は、叩くのは下手でも持つ方は腐っても達人レベルだ。こういう礼節をわきまえないやつは経験上関わらない方がいい。


「あ、いや、まだ走っても無いんだけど・・・。」そっけない態度で返事すると

「ゴメン。間違えた!じゃあな!」

そう言って案外爽やかに返事してまた走り出した。竜二みたいないい体格の髪の毛が金髪のその人はその後、僕がムシャクシャして無意識に5周する間、一度も見る事が無かった。



でもなんで汗かいてるって勘違いしたんだ?僕はランニングの為に着替えたTシャツをクンクンしたがそんなに汗をかいた状態じゃ無かった。まさか・・・早めの加齢臭!?帰ったら石鹸でしっかり洗ってから母さんに聞いてみよう


 結局5周も走ってしまった僕は、間違って声をかけられただけの金髪に無駄にライバル心を燃やしていることに走り終わってから気付き


「くそー!」と言いつつも(張り合いが出て逆にいいんじゃないかな?)と持ち前のプラス思考に変換して翌日から少し早めに起きてこれをできる限り習慣にしようと決めたんだ。



家に帰ったら、母さんが、

「おはよーカガミが出てった時にドアの音で起きたよーふぁーあ。」と口に手を当ててあくびをしてきて

「起こしてゴメンね~。」


「いいよ~早起きしてシーツ洗う時間できたから洗濯機回せたし。昨日フェイシャルエステしたから肌の張りもいいの! あ、カガミ昨日メッチャうなされてた?何度か声が聞こえたけど。シーツも汗びっしょりで洗いごたえあったし。・・・汗よね?あれ」


その時、 あ(確かにあいつに言われた通り僕結構、汗びっしょりだったなぁ)って思ってから。こう言ったんだ


「正真正銘の汗!僕汁100%だよ!もう最近何だか変な勘違いされやすい体質なんだ!母さんまでやめてよ!」と言った。


母さんは「なに勘違いされたのよ~。」とウリウリ!と言いながら肘をほっぺたに当てて来て


「なんでもねーケロ!」とごまかしたが、

同日 担任の先生が保護者ブラックリストの母さんにそれはもう丁寧に、事の真相と謝罪を事細かく伝えるべく電話してきたらしい。


そしてもれなく【変態紳士・天道】の二つ名が母さんに伝わってしまったのはまた別の話。でもなかった。




シャワーを浴びて身支度を整え、アークをネットの海に解放して←ここ重要。  

「行ってきまーす!」家を出た。


竜二と筋肉痛の話から広がるプロテインの話をしつつ登校。

「鉄の拳」と言う格ゲーのキャラの様になりたいかを話し合ったが結局、【筋肉は付けたいけど髪型がダサいからやめとく】と言う意見の一致で話が終わった。


教室に入るとすぐ、

僕がヒカルを叩くビジョンが見えた。

うん問題なし。むしろ起こってくれその未来。


学校に着いて、席に着席するとヒカルが寄って来た。なんでニヤついてんだよ!


「フフッ、あのさ、フフッ、カガミ、父さんがさ、アハハハ。」

「ヒカルさんそのニヤけて持ち上がってるほっぺた削ぎ落されたくなかったら、笑いが落ち着いてから話してよ。温厚な僕は2秒だけなら待ってあげるから。」


「いや、ゴメンゴメン!父さんがさ、アハハハハハ!」笑いすぎて話にならないヒカルを僕はビジョンより数倍強めにどついて、


「ゴメンナサイでケロ!」と言わせて埒が明かないからネネちゃんに


「あのクソ兄貴さぁ!何が言いたいか知ってる?」って若干キレ気味で聞いたら

ネネちゃんも振り返ってニヤけてた。

「ゴメン。うちの家族がほんとにゴメン。」って笑いながら言ってきて


「お父さんが、カガミ君の事心配してた。お母さんは全力で笑ってた。一年分笑ったって言ってた。」と笑われた。


「え、二つ名の事??あの佐井寺財閥一家に知れ渡ってしまったのか!?僕の濡れ衣の汚名が!?」


!ヒカルのバカ、そしてマナーがなって無いぞ!

まぁ濡れ衣と知れば大した問題では無いしいいか。


と言うかもっとカッコいい二つ名を希望したいよ!!

隻眼せきがんとか! あ、それは佐井寺兄妹か。


話の続きがあるみたいだ、ネネちゃんが

「あーー。・・・えっとね、濡れ衣の部分はお兄ちゃんがの。私も別にいいかなぁと思ってそのまま部屋に戻ったから。両親はそのぉ、財布の中身が【】。。。それでね、」


「いやいやネネちゃん!!話し続けないで!!!お願い誰か時間を止めて!!!いくら払えばいいんだい!?両親の誤解を解くためにいくら払えばいいんだい!?」


僕は近くで笑ってるヒカルと一緒に笑ってる竜二を丸めたノートで連続で叩きながらネネちゃんに懇願した。



「アハハハハ!!!もううちではカガミ君はある意味英雄だよ!それでね、お父さんがね、カガミ君がいじめられてたら使使からまず、相談しなさい。だって。」


やべーよ佐井寺パパ!うちの親より僕の事心配してんじゃん!!

こんな事聞いちゃったらぜって―母さん腹を抱えて笑ってるぜ!!


まぁ結局知ることになるんだけど。


そして家に帰って先生からの電話を終わらした後で笑いが止められない母さんに言われた言葉は


「ヘッヘッ!変態紳士だって!!!(大笑)」


と予想通りの反応だったことは言うまでもない。


あんたがその親なんだがな!!

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