第64話 修練期④ 意義の無い「異議あり!」

財布を手にして生徒指導室を出たのはその数分後だった。


先生達はてのひらを返したかのごとく僕に優しくなり、平謝りで話してきた。


「あ、友達待たせてるんで、失礼します!」と言ってそそくさと逃げ、2人と合流する。



もったいないし、先生たちもそこまでバカじゃ無いだろと思ってたから、開封しなかったけど

結局使っちゃうんだったら早々に釣りホタルを出しておけば良かった。

結果的に難を乗り越えた事に変わりはないし、次にやるべき事のヒントを得たのでプラスとしよう。


それよりも今は早く帰って【剣の伝説2】をしたかった。【剣の伝説3】もやって無かったから積みゲー増えた感じだし。


生徒指導室を出たらすぐ竜二とヒカルが


「五月さん入ってったよな!?」と言って

「急いでたけど!大丈夫だった?」とほぼ同時に話しかけてくる。


「実は、軽く奴と一戦交えたんだ。」額の汗を拭う感じで疲れた感を出してそういうとヒカルは


「え?!よく無事だったねカガミ!」

と言ってねぎらってくれた。


「まぁ、デッキ(出来)の違いで僕の方が有利だったんだろうな、ひとまず反撃してターンエンドしてきたよ。今回のとして語り継がれると思うくらいの名勝負だった。」



一方、竜二はわざとらしいアクションと話の内容を見て嘘だと看破し、


「ハイハイ。そのデュエル俺もカガミと対戦したくて中古探して買ったんだけどシリーズで唯一、対戦出来なくて逆にやり込んだから覚えてるよ。

で、だ。

結局どうなったんだ?誤解は解けたのか?」

と聞いてきた。やるね竜二!



「先生達は最終的に謝ってきたよ。最初は一方的に責められた裁判だったけど。釣りホタルを見せたら謝ってきたんだ。


君たちは

ヘレンケラーを教えていたサリバン先生知ってるか?目も耳も声も使えないヘレンケラーを立派に教えて育てたんだよ。僕はその先生を尊敬してるんだ。


だから先生って人達は元々嫌いじゃない。

んで、こう言ってやったんだ。先生達だって間違える事はありますよね。でもそれを認めて諦めず優しく生徒に指導していってください。必ず間違った過去に勝利出来ます!ってね。」


「要するに、これを逆てn」


僕の嘘っぽい顔だけで判断したのか、食い気味に竜二が

「うそつけ!言ってねーだろ!いや、違うな、あいつ【逆転サリバン】って言いたいだけだ!」

と指をさして来た。


言わせろよ!!僕のターンなのに!くそーコレだけは言わせてくれ!

「異議あり!!だ!」


「あ、嘘なの?この数分、有な時間では無かったんだね」ヒカルはマジメだねぇ。


「ってかなんで財布に釣りホタル入れてんだ?」



「財布に入れてるのはガチで父さんの形見なんだけど。あとお祭りに持って行って使おうと思ったんだよ。混んでて大変だって竜二言ったろ?ハグれても目立つ様に4個ほどみんなの分追加購入してたんだ。なのに中止だなんて。」


「そうか〜そりゃ悪かったなぁ。でも佐井寺兄妹きょうだいは色見えないぞ?」と竜二。


「そこは竜二がネネと色が見える様に手を繋いでてあげてくれよ。」

とヒカルが言うと竜二は顔を赤くして

「え?あ。うん。」と言っていた。



「あれ?これってもしかして、あの頑固なヒカルさんの許可がおりたんじゃ?竜二!もう付き合っちゃいなよ!!」とはやし立てる小物感たっぷりな僕。



一方、竜二は

「いやいや、俺たちこの先、危険かも知れないし弱いし、とりあえず1年間はお付き合いは無しって話になったんだよ。」



「「そーなの!?」」

2人同時に竜二に聞いて、まだ顔の赤い竜二は

「まぁ、そんな感じ。」と照れながら答えてたけどなんか楽しそうだった。




「じゃあ今なら僕が付き合ってもいいって事!?ヒカルさん、あなたの娘さんを僕にください!」


「ネネは僕の妹だよ。それに残念ながらカガミは別に好かれちゃいない。」


「アハハハハ!!!」竜二はウケてたけど僕はちょっとストレート過ぎる内容に落ち込んだんだぜ。






話をしながら下駄箱に着いて、もう少しでヒカルと別れる寸前。校舎から先生が走ってきた。


「あ、五月さん。」僕がそういうと

竜二は

「五月先生だろっ!」って言ってきて、そうだった!と思ってたら近くまで来た先生が


。2度目の紹介になるが、今日から先生を務める事になった五月 勝利だ。


みんな先日は大変だったな、ひとまず学校は俺が居るから安心だと思ってくれ。それで親御さんにも伝えてるんだが…。」と話途中で


「イヤイヤ!先生!俺かーちゃんから何にも聞いてないんだけど!」と竜二がツッコンだ。


あーそれな!僕もなんですけど。

「えっ?みんなの親御さんに直接電話したんだが、あ、あと天道さんに電話かけたら、そう言うサブスクリプションですか?月額いくらですか?って聞かれて、ちょっと意味がわからなかったんだ、教えてもらえるかな?」


「先生!それは意味がわからないのが正解です!」


みかんめ!覚えてろよ!!先生困ってるし地味に恥ずかしいじゃんか!



ヒカルは冷静だった。と言うより僕らの中で唯一、まともな親を持っただけなのかも知れない。


「放課後 みんなで武道訓練をするんですよね?」


「そうだ。近くの道場を年間契約した。動きやすい服装で来てくれるか?


あと、佐井寺ネネ君はバリバリの頭脳派だときいているから訓練はせず、遺伝子研究所のジュニアフェローとして、ハイドラが置いていった液体金属とライトニングって言う原君が奪った電撃装置を研究してもらう形になった。これからよろしくな!」


「まてよ。・・・?! 五月勝利さん・・・略して【ゴリ先】で良いですか!?」

僕は初めに聞いた時から略したかったあだ名を使う利用許可を確認したのだが、


「おいっ!」「バカガミ!!」2人から後頭部を叩かれてそうになり、サッと避けた。


「恩人にその言い方は失礼だよ!元警察なんだし、しばかれても知らないよ!?」

「そーだぞ!怖いもん無しにも限度があるだろ!」


先生はびっくりした顔で僕を見た。ゴリラ要素は全くなく、そこそこイケメンだったから初めて言われたんだろう。


それでもカッコいい笑顔になって


「ああ!親しまれそうだな!!いいよ竜二!佐井寺!先生だから呼び捨てにするぞ。そのかわり俺の事はそれでよろしく頼む!」って言ってくれたんだ。 【ゴリ先】マジうけるんだけど!(笑)


そしてニヤニヤしてる僕に屈託のない笑顔で握手を求めながらこう言った。


















「よろしくな!変態紳士 天道!」

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