第60話 夏休期⑩ 夏休みの最後に
今日は僕の家に初めて女子の友達が来ます。緊張してます。
と言っても竜二の兄ちゃんからもらったやましい本も、母さんに見つかって今や焼却炉に行ったか、トイレットペーパーに再生されてここには存在せず非常にクリーンな環境なんだけれども。
「何だかソワソワするなぁ。臭いって言われたくないから自動でシュポっと消臭も持ってきたんだけど。」部屋を見まわす僕。
イヤイヤまてよ、他人の女じゃん!緊張する必要ねーよ!
急に不良ぶる僕はいずれ竜二の彼女になるであろうネネちゃんの来訪に緊張する意味を見失っても良いんじゃないか?と開き直ってしまった。
恋愛に対して僕は恋のステューピッド(愚か者)なんだろう。キューピッドだっけ?
今日も今日とて竜二の恋路が気になる僕は、ネネちゃんと竜二が付き合った時にヒカルの様にハンカチの隅っこを噛んでる想像が膨らんで悲しくなってきた。
母さんはムギ薬局でハゲ店長の相談があるからって言って急遽駆り出されるし、一人で自宅謹慎中の身の僕は時計の針を見ながら部屋をうろうろしてたんだけど、そうこうしてるうちにインターフォンが鳴って画面に3人が映った。
「お邪魔しまーす!」×3 の後、どうぞと言って僕の部屋に導いてる時に
あれ?なんだか3人とも元気ないな。と思いながらお茶を運んでると
「ハァイドォラめーーーー!!!!」と怒る僕のビジョンが見えた。
一体何があったんだ?僕がハイドラに対してあんなに怒るなんて。まさか大切な誰かを・・・。
まず座布団にバフっと座ってネネちゃんが「レトロゲーマー宅に侵入!!」と話し、あたりを手で作った双眼鏡で見まわしていた。
「これが父さんからの
竜二が「これのおかげでこの前は助かったんだからもはやカガミの父ちゃんからの知識の武器だな。」とネネちゃんとヒカルに話していた。
確かになぁ。武器かぁ。洞窟に置いてあった【パパ○の剣】みたいなもんかねぇ?
竜二の相鎚をしながらスマホをいじってたヒカルがその画面を向けて僕に見せてくれた時、事態は急変する!
くそーーー!このビジョンだったか!僕は避けようのない感情をビジョン通り口にしてしまった。
「ハァイドォラめーーーー!!!!」
怒った顔の僕にネネちゃんが笑顔で頭を撫でてくれて、リンクで怒りを落ち付かせることが出来たのはホントに助かったのだが、、、
ネネちゃんの残念な感情が僕の感情と同等だったみたいで怒りは消えども悲しさは消えなかった。
【記念公園でのお祭り、および花火の打ち上げは先日市内で起こったテロ行為の為、
安全上 本年度の開催を中止いたします。】
「うそだろ!!」夏休み最後の楽しみ、そして初めてのお祭りだったのに!!
「今朝、ネネとお祭りの作戦建てようとした時にホームページで中止が発表されて。」
ノリ的には話して来たヒカルの胸倉を掴みそうだったが、まぁ本人は絶対関係ないよね。
竜二は「残念だけどこればっかりはなぁ。ま、来年に期待しようぜ。」
と言って座布団を半分に折ってうつぶせに寝転がり、準備してた4人で出来るゲーム【チュンチュンロケット】を
ネネちゃんは「しょうがない!しょうがない!ゲームやろー!」と切り替えて竜二にルールの説明を聞いていた。お祭り経験者は良いよね!(怒)
「カガミ、来年は父さんに圧力をかけて何としても開催してもらうよ!」ヒカルは親身になってくれた。ありがとう!金と権力にまみれた佐井寺家次期当主!
「この年で権力を使おうとしてるヒカルに若干引いてるけど、なんとしてでも頼みたいね。500円玉貯金いくらか出すよ。」全部は無理だけど。
「大丈夫。お金はお祭りの為に取っておこう!必要なのはネネの涙だけだ。頼んだぞ!ネネ!」
佐井寺パパはネネちゃんに甘そうだもんね。
「はいはーい!適当にレモンの皮とかで涙くらいすぐ出せるっしょ!」って言いながら竜二とゲームを笑いながらしてるネネちゃんを見て佐井寺パパが少しかわいそうになったけど、目的はみんな一つ!来年こそは!だね。
僕は昨日気づいた五月さんの考察を先にしようと思いみんなに
「五月さんは結局、NEET西日本の元警察だったのかな?」と聞くと、
「なにそれ?N○Tじゃないの??なんで電話会社?」とヒカル。君はマジメだねぇ。
「ニートだよヒカル。無職って事。ほっといていいやつ。」竜二は僕に慣れすぎた!
ゲームに集中しつつもそこはキチンとツッコミしてよ!!
「元警察はあってるんじゃない?退職してジルさんの警護で雇われたとか?」ネネちゃんはチュンチュンロケットをしながら答えた。
「あり得るな!まだ雇われてないけど。事前にアティウスに来てて説明を受けてたんじゃないかな?僕らの事も薄っすら聞いてたんだよ。イチゴサイダーの事知ってたし。」
「竜二を守る気満々だったけど、佐井寺兄妹の事も知ってたね。僕の事は逆に敵かと思ってたんだよ。聞いてなかったっぽい。」
僕は五月さんに押さえつけられるビジョンを見た時、確かに意識を落とされる未来が見えた。
セビエドの仲間とでも思われたのかもしれないなと思った。
「まぁ五月さんに関しては雇い主のジルさんにでも聞きゃいいか。」
「そうだね。」ヒカルがそう言ってくれた。
その後、ジルさんに聞く必要もなくなるのだが、この時は誰も予想してなかった。
話が落ち着いた所で僕は
「ゲームの前にちょっとヤバい映像をこの前ヒカルと見たんだよ、ネネちゃんと竜二も見て感想を頼みます。アーク起動〜この前のファイル10流してー。」と言うと
画像が流れる。
と思ってたけど、そう言えばセキュリティで新参者を認証してなかった事に気づきアークは知らんぷりだった。
スマホに見える人物を僕一人にしてアークの機嫌を取り、ネネちゃんと竜二をヒカルの時みたいに認証すると、初めて声を出して立ち上がって、律儀に
「ネネさん、竜二さん。よろしくお願いします。」と言った。
2人は「あ、どうも」「よろしくー!」と返事していた。
あれ?そう言えば母さんはあの時、見知らぬみんなにイチゴサイダーの動画ファイルを見せてたけど、こんな解除してたっけ?
信頼の問題か年齢の問題で僕の方がセキュリティが厳しいのかも。
なんて考えてるうちに
「ファイル10」今度こそ、父さんとゼロが対峙する動画が始まる。
僕はあんまり父さんの苦しい姿を見たくはなかったけど、これが最後だ、と思って感情抜きにして冷静に動画を見守った。
暫く再生が続き、終わる頃には2人は
「どうなってるんだ!?」
「カガミくん並に意味わかんないんだけど!!」
って言ってきた。久しぶりだねこのやり取り!さすがネネちゃん失礼通り越して気持ち良いくらいだよ!最近色々あったから懐かしささえ感じてしまった。
僕は冷凍庫にあったスイカのアイスを4つ取りに行っていたが廊下まで意見を出し合う3人の声が響いていた。
部屋に残った賢い3人が話した内容は
「垂水さん何で助からなかったの?!」
「垂水さんは発症して無いのになぜ死んだんだ!?」
「殺されたのか?ほろびのうたってウィルスにかかって京介さんはどうやってカガミを救ったんだ??」
と言うざっくばらんな疑問だった。
「この先の情報はアークさんは知らないの?」と言うネネちゃんの質問にアークは
「今ここにいる私はスタンドアローンタイプと情報遮断され、別の個体として存在していますので、それ以降はそちらが記憶しているはずです。」
と返事をしていた。
「ゼロ…か。大丈夫か?カガミ?」
「えっ、あっ、うん。」
僕はたしかに初見は刺激が強い画像だったな、と思い中身のない返事を竜二にしたのだが、竜二はそう言う事じゃ無い、って感じの顔をしている。
竜二はずっと僕と過ごしてきた。僕の特徴を一番理解してる奴だ、そんなやつがこう言ったんだ。
「あいつ、カガミの動きと、そっくりだろ?」
僕はドキッとした。
ヒカルは「まさか
ネネちゃんも「ウソ!?胎児期だけに発現するんじゃなかったの?」
と言った。そうか、やっぱり。
「竜二から見ても、ゼロは先が見えるんだね?」
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